2023年01月09日 23:32
第六章 (マトフェイ福音)
1 爾等愼みて、人に見られん爲に、施濟を其前に爲す勿れ、然らずば天に在す爾等の父より賞を獲ざらん。
2 故に施濟を爲す時は、僞善者が人より榮を得ん爲に、會堂及び街衢に於て爲すが如く、己の前に菰を吹く勿れ、我誠に爾等に語ぐ、彼等は已に其賞を受く。
3 爾施濟を爲す時、爾が左の手に爾が右の手の爲す所を知らしむる勿れ、
4 爾の施濟の隱ならん爲なり、然らばひそかなるを鑒みる爾の父は顯に爾に報いん。
5 爾禱る時、僞善者の如くする勿れ、彼等は人に見られん爲に、會堂及び通衢の隅に立ちて禱る事を好む、我誠に爾等に語ぐ、彼等は已に其賞を受く。
6 爾禱る時、爾の室に入り、戸を閉ぢて、隱なる處に在す爾の父に禱れ、然らば隱なるを鑒みる父は顯に爾に報いん。
7 又禱る時、異邦人の如く贅語を曰ふ勿れ、蓋彼等は言の多きを以て聽かれんと意ふ。
8 彼等に效ふ勿れ、蓋爾等の父は、爾等が願はざる先に、爾等の需むる所を知る。
9 故に爾等是くの如く禱れ。天に在す我等の父よ、願はくは爾の名は聖とせられ、
10 爾の國は來り、爾の旨は、天に行はるるが如く、地にも行はれん、
11 我が日用の糧を今日我等に與へ給へ、
12 我等に債ある者を我等免すが如く、我等の債を免し給へ、
13 我等を誘に導かず、猶我等を凶惡より救ひ給へ、蓋國と權能と光榮は爾に世世に歸す。アミン。
14 蓋若し爾等人に其過を免さば、爾等の天の父は爾等にも免さん、
15 若し人に其過を免さずば、爾等の父も爾等に過を免さざらん。
16 又爾等齋する時、僞善者の如く憂はしき容を爲す勿れ、蓋彼等は、其齋の人に顯れん爲に、顏色を損ふ、我誠に爾等に語ぐ、彼等は已に其賞を受く。
17 爾齋する時、首に膏ぬり、面を洗へ、
18 爾の齋の人に顯れずして、隱なる處に在す爾の父に顯れん爲なり、然らば隱なるを鑒みる爾の父は顯に爾に報いん。
19 爾等の爲に財を地に積む勿れ、此處には蠹と銹と損ひ、此處には盗穿ちて竊む。
20 乃爾等の爲に財を天に積め、彼處には蠹と銹と損なはず、彼處には盗穿ちて竊まず。
21 蓋爾等の財の在る所には、爾等の心も在らん。
22 身の燈は目なり、故に若し爾の目淨からば、爾の全身明ならん、
23 若し爾の目惡しからば、爾の全身暗からん。故に若し爾の中の光は暗たらば、則暗は如何にぞや。
24 人は二人の主に事ふる能はず、蓋或は此を惡み、彼を愛し、或は此を重んじ、彼を輕んぜん、爾等は神と財とに兼ね事ふる能はず。
25 故に我爾等に語ぐ、爾等の生命の爲に何を食ひ、何を飮み、爾等の身體の爲に何を衣んと慮る勿れ、生命は糧より大にして、身體は衣より大なるに非ずや。
26 試に天空の鳥を觀よ、彼等は稼かず、穡らず、倉に積まず、而して爾等の天の父は之を養ふ、爾等は彼等より甚貴きに非ずや。
27 且爾等の中誰か慮りて、其身の長一尺だに延ぶるを得ん。
28 衣の爲に何ぞ慮る、試に野の百合の如何にか長ずるを觀よ、勞かず、紡がず、
29 然れども我爾等に語ぐ、ソロモンも其榮華の極に於て、其衣猶此の花の一に及ばざりき、
30 今日在り、明日爐に投げらるる野の草にも、神は斯く衣すれば、況んや爾等をや、小信の者よ。
31 故に慮りて、我等何を食ひ、或は何を飮み、或は何を衣んと云ふ勿れ、
32 蓋此れ皆異邦人の求むる所なり、爾等の天の父は此等の者の皆爾等の必要なるを知る。
33 爾等先づ神の國と其義とを求めよ、然らば此等の者皆爾等に加はらん。
34 故に明日の事を慮る勿れ、蓋明日は自ら己の事を慮らん、一日の心勞は一日の爲に足れり。
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