2023年01月11日 22:30
第八章 (マトフェイ福音)
1 彼山を下りしに、衆くの民彼に隨へり。
2 視よ、癩病の者來りて、彼を拜して曰へり、主よ、爾若し望まば、我を潔むるを能す。
3 イイスス手を伸べて、之に觸れて曰へり、我望む、潔まれ、其癩病直に潔まれり。
4 イイスス之に謂ふ、愼みて人に告ぐる勿れ、乃行きて、己を司祭に示せ、且モイセイの命ぜし禮物を獻じて、彼等に證を爲せ。
5 イイスス カペルナウムに入りし時、百夫長彼に就きて、求めて曰へり、
6 主よ、我の僕癱瘋にて家に臥し、苦むこと甚し。
7 イイスス彼に謂ふ、我往きて之を醫さん。
8 百夫長對へて曰へり、主よ、爾が我の舎に入るは、我當らず、惟一言を出せ、然らば我が僕愈えん、
9 蓋我人の權に属すれども、我が下に兵卒ありて、我此に往けと云へば往き、彼に來れと云へば來り、我が僕に是を行へと云へば行ふ。
10 イイスス之を聞きて奇と爲し、從ふ者に謂へり、我誠に爾等に語ぐ、イズライリの中にも、我是くの如き信を見ざりき。
11 我又爾等に語ぐ、衆くの者東より西より來りて、アウラアム、イサアク、イアコフと偕に天國に席坐し、
12 而して國の諸子は外の幽暗に逐はれん、彼處には哀哭と切齒とあらん。
13 イイスス又百夫長に謂へり、往け、爾の信ぜし如く爾に爲るべし、斯の時其僕愈えたり。
14 イイスス ペトルの家に來りて、其岳母の熱を病みて、臥せるを見たり、
15 其手に觸れたれば、熱卽退けり、婦起きて彼等に供事せり。
16 日暮るるに及びて、魔鬼に憑らるる多くの者を彼に攜へ來れるあり、彼言を以て惡鬼を逐ひ出し、亦病ある者を悉く醫せり。
17 預言者イサイヤを以て言はれし事に應ふを致す、云く、彼は我等の恙を任ひ、病を負ひたりと。
18 イイスス群衆の己を環れるを見て、門徒に彼の岸に往かんことを命ぜり。
19 時に一の學士彼に就きて曰へり、師よ、爾何處に往くとも、我爾に從はん。
20 イイスス之に謂ふ、狐には穴あり、天空の鳥には巢あり、惟人の子には首を枕する處なし。
21 又一の門徒彼に謂へり、主よ、我に先づ往きて我が父を葬るを容せ。
22 然れどもイイスス之に謂へり、我に從へ、死者に其死者を葬るを任せよ。
23 彼が舟に登りし時、其門徒彼に從へり。
24 視よ、大なる颶風海に作りて、舟浪に蔽はるるに至れり、彼適寝ねたり。
25 門徒就きて、彼を醒まして曰へり、主よ、我等を救へ、殆ど亡ぶ。
26 彼は之に謂ふ、小信の者よ、何ぞ怯るる、卽起きて、風と海とを禁めたれば、大に穏になれり。
27 人人奇として曰へり、此れ何人ぞ、風も海も彼に順ふ。
28 彼の岸なるゲルゲシンの地に至りし時、魔鬼に憑らるる者二人墓より出でて、彼を迎ふ、甚猛し、人の敢て其路を過ぐるなきに至れり。
29 視よ、彼等號びて曰へり、神の子イイススよ、我等と爾と何ぞ與らん、時未だ至らざる先に、爾我等を苦めん爲に此に來りしか。
30 此より遙に豕の大なる群は牧はれたり。
31 魔鬼彼に求めて曰へり、若し我等を逐ひ出さば、豕の群に入るを容せ。
32 彼は之に謂へり、往け、魔鬼出でて豕の群に入りしに、視よ、豕の群悉く山坡より海に逸けて、水に溺れたり。
33 牧ふ者奔りて邑に入り、此等の事と魔鬼に憑らるる者の事とを告げたるに、
34 視よ、邑擧りて出でて、イイスス迎へ、彼を見て、其境を離れんことを請へり。
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