2023年01月12日 23:30
第十章 (マトフェイ福音)
1 イイスス其十二門徒を召して、彼等に汚鬼を制する權を與へたり、之を逐ひ出し、又諸の病諸の疾を醫さん爲なり。
2 十二使徒の名左の如し、第一にはシモン名づけてペトルと云ふ者、及び其兄弟アンドレイ、ゼワェデイの子イアコフ及び其兄弟イオアン、
3 フィリップ及びワルフォロメイ、フォマ及び税吏マトフェイ、アルフェイの子イアコフ及びレワェイ、稱してファデイと云ふ者、
4 シモンカナニト及びイウダイスカリオト、卽彼を賣りし者なり、
5 イイスス此の十二徒を遣し、之に戒めて曰へり、異邦の途に往く勿れ、サマリヤの邑に入る勿れ、
6 寧イズライリの家の亡びし羊に往け。
7 往く時宣べて曰へ、天國は邇づけりと。
8 病者を醫し、癩者を潔め、死者を起し、魔鬼を逐ひ出せ、費なくして受けたり、費なくして與へよ。
9 金をも銀をも銅をも爾等の帶に貯ふる勿れ、
10 行嚢をも二の衣をも履をも杖をも執る勿れ、蓋勞する者の其糧を得るは宜しきなり。
11 何の邑或は村に入るとも、其中に孰か可なる者たるを尋ね、彼處に留りて出づるに至れ。
12 家に入る時は、其安を問ひて、此の家に平安と云へ。
13 若し其家之に當らば、爾等の平安は之に臨まん、若し當らずば、爾等の平安は爾等に歸らん。
14 若し爾等を接けず、爾等の言を聽かざる者あらば、其家或は其邑を出づる時、爾等の足の塵を拂へ。
15 我誠に爾等に語ぐ、審判の日に於て、ソドム及びゴモラの地は、斯の邑より忍び易からん。
16 視よ、我が爾等を遣すは、羊を狼の中に入るるが如し、故に智きこと蛇の如く、玷なきこと鴿の如くなれ。
17 謹みて人人に意を用ゐよ、蓋彼等は爾等を其公會に解し、其會堂に鞭うたん。
18 且爾等は我が爲の故に諸侯諸王の前に曳かれん、彼等と異邦民とに證を爲さん爲なり。
19 爾等を解さん時、如何に或は何を言ふべきを慮る勿れ、其時言ふべきこと爾等に與へられんとすればなり。
20 蓋爾等言はんとするに非ず、乃爾等の父の神゜は爾等の衷に言はん。
21 兄弟は兄弟を父は子を死に付し、子は親を攻め、且之を殺さん。
22 爾等我が名の爲に衆人に憎まれん、惟終に至るまで忍ぶ者は救はれん。
23 爾等を此の邑に窘逐する時は、他の邑に奔れ、蓋我誠に爾等に語ぐ、爾等が未だイズライリの諸邑を巡り盡さざるに、人の子來らん。
24 門徒は其師の上に在らず、僕は其主の上に在らず。
25 門徒は其師の如く、僕は其主の如くなりて足れり、若し家主を呼びてワェエルゼウルと云ひしならば、況んや其家人をや。
26 故に彼等を懼るる勿れ、蓋覆はれて露れざる者なく、隱れて知られざる者なし。
27 我が暗の中に爾等に言ふ事を爾等光の中に述べよ、耳を附けて聽く事を屋の上に傳へよ。
28 身を殺して靈を殺す能はざる者を懼るる勿れ、寧靈と身とを地獄に滅すことを能する者を懼れよ。
29 二の雀は一錢にて售らるるに非ずや、若し爾等の父の旨なくば、其一も地に隕ちざらん。
30 爾等に於ては首の髪も皆數へられたり。
31 故に懼るる勿れ、爾等は多くの雀より貴し。
32 然らば凡そ我を人の前に認めん者は、我も亦彼を天に在す我が父の前に認めん。
33 我を人の前に諱まん者は、我も亦彼を天に在す我が父の前に諱まん。
34 我和平を地に投ぜん爲に來れりと意ふ勿れ、我が來れるは和平に非ず乃刃を投ぜん爲なり、
35 蓋我が來れるは、人を其父と、女を其母と、婦を其姑と分たん爲なり、
36 人の家人は其敵とならん。
37 父或は母を愛すること我に過ぐる者は、我に宜しからず、子或は女を愛すること我に過ぐる者は、我に宜しからず。
38 己の十字架を負ひて我に從はざる者は、我に宜しからず。
39 其生命を得る者は、之を喪はん、我が爲に其生命を喪ふ者は、之を得ん。
40 爾等を接くる者は、我を接くるなり、我を接くる者は、我を遣しし者を接くるなり。
41 預言者の名に因りて、預言者を接くる者は、預言者の賞を受けん、義人の名に因りて義人を接くる者は、義人の賞を受けん。
42 門徒の名に因りて此の小子の一に惟冷水一杯を飮ましめん者は、我誠に爾等に語ぐ、其賞を失はざらん。
次章