2023年01月12日 23:32
第十二章 (マトフェイ福音)
1 當時イイスス安息日に禾田を過ぎ行けるに、彼の門徒飢ゑて、穂を摘みて食へり。
2 ファリセイ等之を見て、彼に謂へり、視よ、爾の門徒は安息日に行ふべからざることを行ふ。
3 彼曰へり、爾等は、ダワィドが己及び其從者の飢ゑし時行ひし事、
4 卽如何にして彼は神の家に入りて、己も從者も食ふべからず、惟司祭等のみ食ふべき供前の餅を食ひしを讀まざりしか、
5 抑爾等は、司祭等が安息日に於て、殿の内に安息日を犯すとも罪なきことを律法に讀まざりしか。
6 然れども我爾等に語ぐ、此には殿より大なる者あり。
7 若し爾等は、我矜恤を欲して祭祀を欲せずと、云ふことの意如何を知りしならば、辜なき者を罪せざりしならん。
8 蓋人の子は亦安息日の主なり。
9 乃彼處を離れて、彼等の會堂に入れり。
10 視よ、茲に一手の枯へたる人あり、彼等イイススを罪せん爲に、之に問ひて曰へり、安息日に醫を施すは宜しきか。
11 彼曰へり、爾等の中孰か一の羊有りて、若し此れ安息日に坑に陥らば、之を援けて上げざらんか、
12 人は羊より貴きこと幾何ぞ、故に安息日に善を行ふは宜しきなり。
13 是に於て其人に謂ふ、爾の手を伸べよ、彼伸ぶれば、卽健になりしこと他の手の如し。
14 ファリセイ等出でて、如何にしてイイススを滅さんと相謀れり。
15 イイスス之を知りて、彼處を離れたり、衆くの民彼に從へり、彼悉く之を醫し、
16 且之に己を顯す勿らんことを戒めたり。
17 預言者イサイヤを以て言はれし事に應ふを致す、云く、
18 視よ、我が選びし我の僕、我が靈の悦ぶ所の我の至愛の者、我は我が神゜を彼に賦せん、彼は諸民に審判を示さん、
19 彼は爭はず、號ばず、人其聲を衢に聞かざらん。
20 傷める葦を折らず、烟れる麻を熄さずして、審判に勝を得しむるに至らん、
21 諸民彼の名を賴まんと。
22 時に魔鬼に憑らるる瞽にして瘖なる者を彼に攜へ來れるあり、彼之を醫し、瞽にして瘖なる者は言ひ且見るを得たり。
23 衆民駭きて曰へり、此れダワィドの子ハリストスなるに非ずや。
24 然れどもファリセイ等之を聞きて曰へり、彼が魔鬼を逐ひ出すは、魔鬼の魁ワェエルゼウルに藉るに外ならず。
25 イイスス其意を知りて、彼等に謂へり、凡の國自ら分れ爭はば、荒墟となり、凡の邑或は家自ら分れ爭はば、立たざらん、
26 若しサタナにしてサタナを逐ひ出さば、彼自ら分れ爭ふなり、然らば其國如何にして立たん。
27 若し我ワェエルゼウルに藉りて魔鬼を逐ひ出さば、爾等の諸子は誰に藉りて之を逐ひ出すか、故に彼等は爾等の審判者と爲らん。
28 然れども若し我神の神゜に藉りて魔鬼を逐ひ出さば、則神の國果して爾等に臨みしなり。
29 或は人如何にして强き者の家に入りて、其器を劫すを得るか、豈先づ强き者を縛りて、然る後其家を劫すに非ずや。
30 我偕にせざる者は我に敵し、我と偕に聚めざる者は散らすなり。
31 故に我爾等に語ぐ、凡の罪と褻瀆とは人人に赦されん、然れども神゜に對する褻瀆は人人に赦されざらん。
32 人の子に敵して言を出さば、其人赦されん、然れども聖神゜に敵して言を出さば、其人今世にも來世にも赦されざらん。
33 或は樹を善しとし、其果をも善しとせよ、或は樹を惡しとし、其果をも惡しとせよ、蓋樹は其果に由りて識らる。
34 蝮の類よ、爾等惡しき者にして、何ぞ善きこと言ふを得ん、蓋心に充つる者は口に言ふなり。
35 善き人は善き寶庫より善き者を出し、惡しき人は惡しき寶庫より惡しき者を出す。
36 我爾等に語ぐ、凡そ人の言ふ所の虛しき言は、審判の日に於て之が答を爲さん、
37 蓋爾は己の言に由りて義とせられ、亦己の言に由りて罪に定められん。
38 其時或學士及びファリセイ等曰へり、師よ、我爾よりする休徴を觀んと欲す。
39 彼答へて曰へり、姦惡の世は休徴を求む、而して預言者イオナの休徴の外、之に休徴は與へられざらん、
40 蓋イオナが三日三夜鯨の腹に在りし如く、人の子も三日三夜地の心に在らん。
41 ニネワィヤの人は審判の時に斯の世と共に起ちて、之を罪せん、蓋彼等はイオナの傳敎に由りて悔改せり、視よ、此にはイオナより大なる者あり。
42 南方の女王は審判の時に斯の世と共に起ちて、之を罪せん、蓋彼は地の極よりソロモンの智慧を聽かん爲に來れり、視よ、此にはソロモンより大なる者あり。
43 汚鬼人より出でて後、水なき地を巡り、安息を求むれども得ず、
44 其時曰く、我嘗て出でし我が家に歸らんと、旣に來りて、其家の虛しくして、掃き且飾りたるを見、
45 乃往きて、己より惡しき他の七鬼を攜へ來り、偕に入りて彼處に居るなり、是に於て其人の爲に、後の患は先より更に甚し、斯の惡しき世にも亦是くの如くならん。
46 イイススが尚民に語れる時、彼母及び兄弟外に立ちて、彼と言はんと欲せり、
47 或彼に謂へり、視よ、爾の母及び爾の兄弟外に立ちて、爾と言はんと欲す。
48 彼は言ひし者に答へて曰へり、孰か我が母たり、孰か我が兄弟たる、
49 乃手を伸べて、其門徒を指して曰へり、是れ我が母なり、我が兄弟なり、
50 蓋凡そ天に在す我が父の旨を行はん者は、彼卽我が兄弟なり、姉妹なり、母なり。
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