2023年01月14日 14:00
第十六章 (マトフェイ福音)
1 ファリセイ及びサッドゥケイ等就きて、彼を試みて、天よりする休徴を彼等に示さんことを請へり。
2 彼答へて曰へり、暮には爾等言ふ、晴天とならん、天紅なればなり。
3 朝には言ふ、今日風雨とならん、天紅にして、晦ければなりと、僞善者よ、爾等天の面を別つを知りて、時の休徴を究むる能はざるか。
4 姦惡の世は休徴を求む、而して預言者イオナの休徴の外、之に休徴は與へられざらん、遂に彼等を離れて去れり。
5 門徒彼の岸に濟りて、餅を取ることを忘れたり。
6 イイスス彼等に謂へり、謹みて、ファリセイ及びサッドゥケイ等の酵を防げ。
7 彼等竊に議して曰へり、是れ我等が餅を取らざりしを指すなり。
8 イイスス之を知りて、彼等に謂へり、小信の者よ、何ぞ餅を取らざりしことを竊に議する、
9 爾等未だ悟らざるか、又五の餅を五千人に分ちて、幾筐を拾ひしか、
10 七の餅を四千人に分ちて幾籃を拾ひしかを記憶せざるか、
11 我が爾等にファリセイ及びサッドゥケイ等の酵を防げと言ひしは、爾等何ぞ餅の事に非ずと悟らざる。
12 是に於て彼等、其言ひしは、餅の酵に非ず、乃ファリセイ及びサッドゥケイ等の敎を防ぐべきなるを悟れり。
13 イイススはフィリップのケサリヤの地に來りて、其門徒に問ひて曰へり、人人我人の子を言ひて、誰とか爲す、
14 彼等曰へり、或人は授洗イオアンと爲し、他の者はイリヤと爲し、又他の者はイエレミヤ、若しくは預言者の一人と爲す。
15 イイスス彼等に謂ふ、爾等は我を言ひて誰とか爲す、
16 シモン ペトル對へて曰へり、爾はハリストス、活ける神の子なり。
17 イイスス答へて彼に謂へり、イオナの子シモンよ、爾は福なり、蓋血肉は之を爾に示ししに非ず、乃天に在す我の父なり。
18 我も亦爾に語ぐ、爾はペトルなり、我此の盤の上に我の敎會を建てん、而して地獄の門は、之に勝たざらん。
19 且我爾に天國の鑰を與へん、爾が地に縛る者は、天にも縛られ、爾が地に釋く者は、天にも釋かれん。
20 其時イイスス其門徒に戒めて、己がハリストスたるを人に告ぐること勿しめたり。
21 是れよりイイスス始めて其門徒に、己がイエルサリムに往き、長老、司祭長、學士等より多く苦を受け、且殺されて、第三日に復活すべきことを示せり。
22 ペトル彼を援きて、諫めて曰へり、主よ、自ら憐め、此の事爾に及ぶべからず。
23 彼は顧みてペトルに謂へり、サタナ我より退け、爾は我の爲に礙なり、蓋爾は神の事を念はず、乃人の事を念ふ。
24 時にイイスス其門徒に謂へり、人若し我に從はんと欲せば、己を舎て、其十字架を負ひて、我に從へ。
25 蓋己の生命を救はんと欲する者は、之を喪はん、我の爲に己の生命を喪はん者は、之を得ん。
26 人若し全世界を獲とも、己の靈を損なはば、何の益かあらん、抑人何を與へて、其靈の償と爲さんや。
27 蓋人の子は其父の光榮を以て、其天使等と偕に來らん、其時各人は其行に依りて報いん。
28 我誠に爾等に語ぐ、此に立てる者の中には、未だ死を嘗めずして、人の子が其國に來るを見んとする者あり。
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