2023年01月15日 13:35
第十七章 (マトフェイ福音)
1 日を越えて、イイススはペトル、イアコフ及び其兄弟イオアンを攜へ獨彼等を率ゐて、高き山に登り、
2 彼等の前にて容を變へたり、其面は日の如く輝き、其衣は光の如く皎くなれり。
3 視よ、モイセイ及びイリヤ現れて、彼と與に語れり。
4 時にペトル イイススに謂へり、主よ我等此に居るは善し、爾若し欲せば、我等此に三の廬を建てて、一は爾の爲、一はモイセイの爲、一はイリヤの爲にせん。
5 彼が尚言ふ時、視よ、光れる雲は彼等を蓋ひ、且雲より聲ありて云ふ、此は我の至愛の子、我が喜べる者なり、彼に聽け。
6 門徒聞きて俯伏し、懼るること甚し。
7 イイスス就きて、彼等に觸れて曰へり、起きよ、懼るる勿れ。
8 彼等其目を擧げて、獨イイススの外に誰をも見ざりき。
9 山を下る時イイスス彼等に戒めて曰へり、人の子が未だ死より復活せざる先には、見たる事を人に告ぐる勿れ。
10 門徒彼に問ひて曰へり、然らば學士等がイリヤ先に來るべしと云ふは何ぞや。
11 イイスス答へて曰へり、然り、イリヤ先に來りて、萬事を整ふべし。
12 惟我爾等に語ぐ、イリヤ旣に來りて、而して人彼を識らざりき、乃欲する所に隨ひて、彼を待へり、是くの如く人の子も、彼等より苦を受けん。
13 是に於て門徒は、其授洗イオアンの事を彼等に言ひしを悟れり。
14 旣に民の處に至りしに、或人彼に就きて、跪きて曰へり、
15 主よ、我が子を憐め、彼癲癇を患ひて、苦むこと甚し、蓋屡火に倒れ、亦屡水に倒る、
16 我之を攜へて、爾の門徒に就きたれども、彼等醫すこと能はざりき。
17 イイスス答へて曰へり、噫信なき悖れる世や、我何時までか爾等と偕に在らん、何時までか爾等を忍ばん、彼を此に我に攜へ來れ。
18 イイスス魔鬼を禁めたれば、魔鬼出でて、其子斯の時より愈えたり。
19 其時門徒私にイイススに就きて曰へり、我等が之を逐ひ出す能はざりしは何の故ぞ。
20 イイスス彼等に謂へり、爾等信なき故なり、蓋我誠に爾等に語ぐ、爾等若し芥種の如き信あらば、此の山に、此より彼に移れと言ふとも、移らん、又爾等に一も能はざること勿らん。
21 此の類に至りては、祈禱と齋とに由らざれば出でざるなり。
22 ガリレヤに在る時、イイスス彼等に謂へり、人の子は人人の手に付されん。
23 且彼を殺さん、而して第三日に彼復活せん、彼等甚哀めり。
24 カペルナウムに來りし時、殿稅を集むる者ペトルに就きて曰へり、爾等の師は殿稅を納むるか。
25 彼曰く、然り。家に入りし時、イイスス先んじて彼に謂へり、シモン爾如何に意ふか、地の諸王は貢若くは稅を誰より取るか、己の子よりか、抑も外の者よりか。
26 ペトル曰く、外の者よりす。イイスス彼に謂へり、然らば子は與らず。
27 然れども我等が彼等を惑さざらん爲に、爾海に往きて、釣を垂れよ、初に上る魚を取りて、其口を啓かば、スタティルを得ん、之を取りて、我と爾との爲に彼等に與へよ。
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