2023年01月16日 15:25
第十一章 (エウレイ書)
1 夫れ信とは、望む所を確認し、見ざる所を確證する者なり。
2 古の人は之に由りて證せられたり。
3 信に由りて我等は世世が神の言に造られ、見ゆる者が顯れざる者より成りたるを知る。
4 信に由りてアワェリはカインに較ぶれば更に善き祭を神に獻げたり、之に由りて彼は義なりと證せられたり、神が其獻物の事を證せしが如し、之に由りて彼は死して後にも亦言ふ。
5 信に由りてエノフは死を見ずして移されたり、人彼に遇はざりき、神彼を移ししに由る、蓋其未だ移されざる先に、神の悅を獲し者と證せられたり。
6 然れども信なければ、神に悅ばるる能はず、蓋神に就く者は、彼の有ること、及び其彼を尋ぬる者に報を爲す者なるを信ずべし。
7 信に由りてノイは未だ見ざる事に於て啓示を蒙りて、愼みて、其家族を救はん爲に方舟を備へたり、之に由りて彼は世を罪し、及び信に由る義の嗣と爲れり。
8 信に由りてアウラアムは嗣業として受けんとする地に往くべき召に遵ひ、自ら何に往くを知らずして往けり。
9 信に由りて彼は許約の地に在りて、己に屬せざる地に於けるが如く、イサアク及びイアコフ、卽同一の許約を同じく嗣ぐ者と偕に幕に居りたり、
10 蓋彼は基ある城、神の營み造る者を俟てり。
11 信に由りてサルラも胎荒れたれども、懐妊の力を得、已に生育の期を逾えて生みたり、蓋彼は許約せし者の信なるを知れり。
12 故に一人、猶已に死せし如き者より、天の星の多きが如く、海邊の沙の數へ難きが如く、多く生れたり。
13 此等皆信を抱きて死せり、許約せられし所を受けずして、惟遥に之を望みてよ欣び、且自ら地に在りて旅人なり、寄寓者なりと言へり。
14 蓋斯く言ふ者は、自ら其家國を求むるを表すなり。
15 彼等若し其出でし國を念はば、歸るべき時ありしならん。
16 然れども彼等は更に善き國、卽天に在る者を慕へり、故に神は彼等を耻とせずして、己を彼等の神と稱ふ、蓋彼等の爲に城を備へたり。
17 信に由りてアウラアムは試みられて、イサアクを獻げたり、許約を受けし者にして、其獨生子を獻げたり、
18 卽爾の裔はイサアクに由りて稱へられんと、言はれし所の者なり。
19 蓋彼意へり、神は亦死より復活せしむるを能すと。故に之を預象として受けたり。
20 信に由りてイサアクは將來の事を指して、イアコフ及びイサフを祝福せり。
21 信に由りてイアコフは死なんとする時、イオシフの二子を祝福し、且其杖の上に拜せり。
22 信に由りてイオシフは終らんとする時、イズライリの諸子の出でん事を憶はしめ、且己の骸骨の事を遺命せり。
23 信に由りてモイセイは生れし後、三月間其父母に匿されたり、蓋彼等は子の美しきを見て、王の命を畏れざりき。
24 信に由りてモイセイは長ずるに及びて、ファラヲンの女の子と稱へらるるを辞みて、
25 暫時の罪惡の樂を享けんよりは、寗神の民と共に苦しまんことを願ひ、
26 ハリストスに緣る誹毀を、エギペトの寶よりも更に大なる富なりと意へり、蓋彼は賞を仰ぎ望めり。
27 信に由りて彼はエギペトを離れて、王の怒を畏れざりき、蓋彼は見る可からざる者を見るが如くに爲して忍耐せり。
28 信に由りて彼は逾越節と血の灑とを行へり、長子を滅す者の彼等に觸れざらん爲なり。
29 信に由りて彼等は紅海を陸地の如くに渉れり、エギペト人は之を行はんと試みて溺れたり。
30 信に由りてイエリホンの城垣は、七日之を巡りたる後に墮ちたり。
31 信に由りて妓婦ラアフは平和を以て偵使を納れ、他の路より彼等を送りて、不信の者と偕に亡びざりき。
32 我復何をか言はん、若しゲデヲン、ワラク、サムプソン、イエッファイ、ダワィド、サムイル、及び他の預言者の事を述べんには、我に時足らざらん。
33 彼等は信に由りて諸國を従へ、義を行ひ、許約を受け、獅の口を箝ぎ、
34 火の勢を滅し、劔の刃を避け、弱きよりして強くせられ、戰に勇み、異邦の軍を潰せり、
35 婦は其死者を復活せし者として受けたり、亦或者は更に善き復活を得ん爲に、免るるを欲せずして、酷く戮されたり、
36 他の者は嘲弄と鞭扑と、又縲絏と囹圄との試を受け、
37 石にて撃たれ、鋸にて解かれ、拷問に遇はせられ、刃にて殺され、綿羊と山羊との皮を衣て流離し、窮乏、患難、辛苦を忍び、
38 世界に置くに堪へざる者は、曠野、山嶺、巌穴、地窟に徨へり、
39 此等皆信に由りて證せられたれども、許約せられし所を獲ざりき、
40 蓋神は我等の事に於て更に善き事を預見せり、彼等は我等と偕にせずしては全きを得ざらん爲なり。
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