2023年01月17日 13:05
第27章 (マトフェイ福音)
1 平坦に及びて、司祭諸長と民の長老等と皆相會して、イイススの事を議せり、之を死に致さん爲なり。
2 乃之を縛りて、曳きて、方伯ポンティイ ピラトに解せり。
3 時に彼を賣りしイウダは其定罪せられたるを見て、悔いて、銀三十を司祭諸長と長老等とに返して曰へり、
4 我辜なき血を付して、罪を犯せり。彼等曰へり、我等何ぞ與らん、自ら顧みよ。
5 彼銀を殿に擲ちて出で、往きて自ら縊れたり。
6 司祭諸長銀を取りて曰へり、之を殿の庫に納るるは宜しからず、是れ血の価なればなり。
7 乃相議して、此を以て陶人の田を買ひ、賓旅を葬る地と爲せり。
8 故に其他は、今日に至るまで、血の田と稱へらる。
9 是に於て預言者イエレミヤを以て言はれしこと應へり、曰く、彼等銀三十乃値を附けられし者、卽イズライリの諸子が値を附けし者の価を取りて、
10 之を陶人の田の爲に與へたり、主の我に示ししが如しと。
11 イイスス方伯の前に立ちしに、方伯彼に問ひて曰へり、爾はイウデヤ人の王なるか。イイスス之に謂へり、爾言ふ。
12 司祭諸長と長老等と彼を訴へしに、一も答へざりき。
13 時にピラト彼に謂ふ、爾に對して證すること斯く多きを爾聞かざるか。
14 彼其一言にも答へざりき、方伯甚奇むに至れり。
15 節期には、方伯が民に一人の囚、其欲する所の者を釋す例ありき。
16 其時ワラウワと名づくる著しき囚ありしが、
17 民の集りし時、ピラト之に謂へり、二人の中、我が誰をか爾等に釋さんことを欲するか、ワラウワか、抑ハリストスと稱ふるイイススか。
18 蓋娼嫉に因りて彼を解ししを知れり。
19 方伯が審判座に坐せる時、其妻人を遣して、之に謂へり、爾此の義人に何事をも爲す勿れ、蓋我今日夢の中に彼の爲に多く苦めりと。
20 然るに司祭諸長と長老等とは民に唆めて、ワラウワを釋し、イイススを滅さんことを乞はしめたり。
21 方伯彼等に問ひて曰へり、二人の中、我が誰をか爾等に釋さんことを欲する。彼等曰へり、ワラウワを。
22 ピラト曰く、然らば我はハリストスと稱ふるイイススに何を爲さんか。皆彼に謂ふ、十字架に釘せらるべし。
23 方伯曰へり、彼は何の惡を行ひしか。然れども彼等愈號びて曰へり、十字架に釘せらるべし。
24 ピラトは何事も益なく、惟乱の滋起るを見て、水を取り、民の前に手を盥ひて曰へり、我此の義人の血に對して罪なし、爾等自ら顧みよ。
25 民皆對へて曰へり、其血は我等及び我等の子孫に歸すべし。
26 其時ワラウワを彼等に釋し、イイススを鞭ちて、十字架に釘せん爲に付せり。
27 時に方伯の兵卒イイススを曳きて、公廨に入れ、全営を彼の許に集め、
28 其衣を褫ぎて、絳き袍を衣せ、
29 棘の冕を編みて、其首に冠らせ、葦を其右の手に持たせ、彼の前に跪きて、彼に戯れて曰へり、イウデヤ人の王、慶べよ。
30 又彼に唾し、葦を取りて、其首を擊てり。
31 旣に戯れ畢りて、其袍を褫ぎ、故の衣を衣せ、十字架に釘せん爲に彼を曳き往けり。
32 出づる時、キリネヤの人シモンと名づくる者に遇ひ、之を强ひて、其十字架を負はしめたり。
33 ゴルゴファと云ふ處、譯すれば、髑髏の處に來りて、
34 醋に膽を和へて、彼に飮ましめたるに、之を嘗めて、飮むことを欲せざりき。
35 彼を十字架に釘せし者は鬮を取りて、其衣を分ち、
36 而して坐して、彼處に彼を守れり。
37 又其罪を記せる標を其首の上に置けり。曰く、是れのイイスス、イウデヤ人の王と。
38 其時二人の盗賊は彼と偕に十字架に釘せられたり、一人は其右、一人は其左なり。 39 過ぐる者彼を誚り、首を揺かして曰へり、
40 殿を毀ちて、三日に之を建つる者よ、己を救へ、若し爾神の子ならば、十字架より下れ。
41 同じく司祭諸長も、學士、長老、ファリセイ等と偕に嘲りて曰へり、
42 他人を救ひて、己を救ふ能はず、若し彼イズライリの王ならば、今十字架より下るべし、然らば我等彼を信ぜん。
43 神を恃めり、若し神彼を悅ばば、今彼を拯ふべし、蓋彼は、我神の子なりと云へり。
44 彼と偕に十字架に釘せられたる盗賊も又彼を詬れり。
45 第六時より晦瞑は全地を蔽ひて、第九時に至れり。
46 第九時の頃、イイスス大聲に呼びて曰へり、イリ、イリ、ラマ、サワファニ、卽我が神よ、我が神よ、何ぞ我を遺てたる。
47 彼處に立てる者の中、或人之を聞きて曰へり、彼はイリヤを呼ぶなり。
48 其中の一人直に走り、海絨を取りて、醋を盈たし、葦に束ねて、彼に飮ましめたり。
49 餘の者曰へり、姑く舎け、イリヤ來りて、彼を救ふや否やを觀ん。
50 イイスス復大聲に呼びて、気絶えたり。
51 視よ、殿の幔は、上より下に至るまで裂けて、二となり、地震ひ、盤裂け、
52 墓啓けて、寝ねたる聖人の身は多く復活し、
53 彼の復活の後、墓より出でて、聖なる城に入り、多くの者に現れたり。
54 百夫長及び之と偕にイイススを守れる者は、地震と有りし事とを見て、甚しく懼れて曰へり、此れ誠に神の子なり。
55 彼處に亦多くの婦ありて、遙に望めり、是れガリレヤよりイイススに從ひて、彼に事へたる者なり。
56 其中にマリヤマグダリナ、イアコフ及びイオシヤの母マリヤ、又ゼワェデイの子の母ありき。
57 日暮るるに及びて、アリマフェヤの富める人、名はイオシフ、自も亦イイススに學びし者は來れり。
58 彼ピラトに就きて、イイススの屍を求めたれば、ピラト屍を與へんことを命ぜり。
59 イオシフ屍を取りて、之を潔き布に裏み、
60 之を盤に鑿ちたる己の新なる墓に置き、大なる石を墓の門に轉して去れり。
61 マリヤマグダリナと他のマリヤと彼處に在りて、墓に對ひて坐せり。
62 明日卽備節日の翌日司祭諸長とファリセイ等とピラトの許に集りて謂へり、
63 主よ、我等憶ひ起すに、彼の惑はす者尚生ける時、我三日の後に復活せんと言へり。
64 是の故に命じて、三日に至るまで、墓を固めしめよ、恐らくは其門徒夜來たりて、彼を竊み、民に向ひて、彼は死より復活せりと言はん、然らば後の惑は先より更に甚しからん。
65 ピラト彼等に謂へり、爾等に番兵あり、往きて、爾等の意に任せて、之を固めよ。
66 彼等往きて、石に封印し、番兵をして、墓を固めしめたり。
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