2023年01月17日 13:07
第2章 (ルカ福音)
1 彼の日ケサリ アウグストより詔出でて、天下の人を咸く籍に登らしむ。
2 此の籍はキリニイのシリヤを治むる時、初めて行はれし者なり。
3 是に於て衆人籍に登らん爲に、各其邑に往けり。
4 イオシフも又ダワィドの宗族と血統となるを以て、
5 マリヤ其聘せられたる妻、已に孕める者と偕に、籍に登らん爲に、ガリレヤの邑ナザレトより、イウデヤに、ダワィドの邑ワィフレエムと名づくる處に往けり。
6 彼等が彼處に在る時に、產日届れり。
7 乃其冢子を生み、之を襁褓に裏みて、槽に置けり、旅館には彼等の爲に居る所なかりし故なり。
8 此の地に牧者あり、夜間野に於て其羊の群を守れり。
9 視よ、主の天使彼等の前に立ち、主の光榮彼等を環り照せり、彼等大に懼れたり。
10 天使彼等に謂へり、懼るる勿れ、蓋視よ、我爾等に大なる喜、萬民に及ばんとする者を福音す、
11 今日爾等の爲にダワィドの邑に於て、救主卽主ハリストス生れたり。
12 爾等襁褓に裏まれたる嬰兒の槽に臥せるを見ん、是れ其徴なり。
13 倐天使と偕に衆くの天軍あり、神を讚美して曰へり、
14 至高きには光榮神に歸し、地には平安降り、人には恵臨めり。
15 天使等が彼等を離れて天に升りし時、牧者互に言へり、ワィフレエムに往きて、彼處に成りし事、主が我等に示しし所を見ん。
16 乃急ぎ來りて、マリヤとイオシフ及び槽に臥せる嬰兒を見たり。
17 旣に見て、此の兒に關して彼等に告げられし事を語れり。
18 聞きし者皆牧者が語りし事を奇とせり。
19 惟マリヤは此等の言を悉く其心に藏めて、之を守れり。
20 牧者は、凡そ彼等に告げられし如く、聞きし事見し事の爲に、神を讚榮讚美して返れり。
21 八日滿ちて、嬰兒に割禮を行ふべき時至りたれば、其名をイイススと名づけたり、卽其未だ孕まれざる先に天使の名づけし所なり。
22 モイセイの律法に依りて、潔の日の滿つるに及び、嬰兒を攜へてイエルサリムに上れり、之を主に奉らん爲なり。
23 主の律法に錄されしが如し、曰く、凡そ初めて胎を開く男子は主に聖なりと稱へらるべしと。
24 又主の律法に言ふ所に依りて、双の班鳩或は二の雛鴿を祭に獻げん爲なり。
25 視よ、イエルサリムにシメオンと名づくる人あり、斯の人義にして敬虔なり、イズライリを慰むる者を俟ち、而して聖神゜彼に臨めり。
26 彼に、聖神゜に由りて、主のハリストスを見ざる先には、死を見ざらんと示されたり。
27 彼神に依りて殿に來れり、父母が嬰兒イイススを攜へて、之に律法の例を行はん爲に入りし時、
28 彼は嬰兒を其手に取り、神を祝讚して曰へり、
29 主宰よ、今爾の言に循ひて、爾の僕を釋し、安然として逝かしむ。
30 蓋我が目は爾の救を見たり、
31 爾が萬民の前に備へし者なり、
32 是れ異邦人を照す光、及び爾の民イズライリの榮なり、
33 イオシフ及び嬰兒の母は彼に關して言はるる事を奇とせり。
34 シメオン彼等を祝福して、其母マリヤに謂へり、視よ、此の子は置かれて、イズライリの中に衆くの者の頽れ又は興るを致し、且駁論の號と爲らん、
35 衆くの心の念の露れん爲なり、爾にも劔は靈を貫かん。
36 又預言女アンナあり、アシルの支派ファヌイルの女なり、處女の時より夫と偕に居りしこと七載、年大に老いたり、
37 齢約八十四の嫠にして、殿を離れず、齋と祈禱とを以て昼夜奉事せし者なり。
38 彼も斯の時來り就きて、主を讚榮し、且此の嬰兒の事を凡そイエルサリムに在りて贖を俟つ者に語れり。
39 旣に主の律法に遵ひ、悉く之を竟へてガリレヤの故邑ナザレトに歸れり。
40 子は漸く成長し、精神益强健にして、智慧充ち、神の恩寵は彼に臨めり。
41 其父母歳毎に逾越節筵にイエルサリムに往けり。
42 彼の十二歳になりし時、亦節筵の例に遵ひて、イエルサリムに上りしに、
43 日卒りて返る時、童子イイスス イエルサリムに留れり。イオシフと其母とは之を知らずして、
44 彼は同行者の中に在りと意へり、一日程を行きて、彼を親戚知己の間に尋ねしに、
45 遇はざりき、乃彼を尋ねてイエルサリムに返れり。
46 三日の後彼に殿に遇へるに、彼教師の中に坐して、且聽き、且問へり。
47 彼に聞く者皆其智慧と其應對とを奇とせり。
48 父母彼を見て駭けり、其母彼に謂へり、兒よ、何ぞ我等に斯く行ひたる、視よ、爾の父と我と憂ひて爾を尋ねたり。
49 彼曰へり、奚ぞ我を尋ねたる、豈我は我が父に属する所に在るべきを知らずや。
50 然れども彼等は其言ひし言を暁らざりき。
51 イイスス彼等と偕に下りて、ナザレトに來り、彼等に順ひ居りき。彼の母は此等の言を悉く其心に藏めたり。
52 イイススは智慧と齢と神及び人人の寵愛とに益進めり。
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