2023年01月17日 13:08
第4章 (ルカ福音)
1 イイスス聖神゜に滿てられて、イオルダンより歸り、神゜に導かれて野に適き、
2 四十日の間惡魔に試みられたり。此の諸日には一切食はざりき、其卒るに及びて遂に飢ゑたり。
3 惡魔彼に謂へり、爾若し神の子ならば、此の石に命じて、餅と爲らしめよ。
4 イイスス之に答へて曰へり、錄せるあり、人は惟餅のみを以て生くべきに非ず、乃凡の神の言を以てす。
5 惡魔彼を攜へて、高き山に登り、瞬の間に世界の萬國を示して、
6 彼に謂へり、此等の一切の權威と榮華とを爾に與へん、蓋此れ我に委ねられたり、我欲する者に之を與ふ。
7 故に爾若し我を拜せば、悉く爾の有とならん。
8 イイスス之に答へて曰へり、サタナ、我より退け、蓋錄せるあり、主爾の神を拜せよ、獨彼のみに事へよと。
9 又彼を攜へて、イエルサリムに至り、殿の頂に立たしめて、彼に謂へり、爾若し神の子ならば、自ら是より下に投ぜよ、
10 蓋錄せるあり、爾の爲に其天使に命じて、爾を護らしめん、
11 彼等其手にて爾を抱へて、爾の足を石に躓かざらしめんと。
12 イイスス之に答へて曰へり、言へるあり、主爾の神を試みる勿れと。
13 惡魔は旣に其誘試を盡して、暫く彼を離れたり。
14 イイスス神の能を滿てて、ガリレヤに歸れり、其聲名徧く四方に播れり。
15 彼其諸會堂に於て教を宣べ、衆人に讚榮せられたり。
16 彼は其養育せられし所のナザレトに來り、安息の日に、其常例に依りて、會堂に入り、讀まんと欲して起てり。
17 預言者イサイヤの書を彼に與ふるあり、彼は書を披きて、左に錄せる所を出せり、云く、
18 主の神゜我に在り、蓋彼は我に膏して、貧しき者に福音せしめ、我を遣して、心の傷める者を醫し、虜者に釋を、瞽者に見ることを傳へ、圧せらるる者に自由を與へ、
19 主の禧年を傳へしめたりと。
20 乃書を掩ひ、役者に與へて坐せしに、會堂に在る者皆彼に目を注げり。
21 彼宣べ始めて曰へり、此の爾等が聽きし所の書は今應へり。
22 衆皆之を證し、且其口より出づる恩寵の言を奇として曰へり、是れイオシフの子に非ずや。
23 イイスス彼等に謂へり、爾等必我に諺を引きて云はん、醫師よ、己を醫せ、我等が聞きし所、カペルナウムに行はれし事を、此に爾の故土にも行へと。
24 又曰へり、我誠に爾等に語ぐ、預言者は其故土に在りて納れらるる者あらず。
25 我眞實に爾等に語ぐ、イリヤの日に、三年六月天閉ぢて、大なる飢饉全地に至りし時、イズライリの中に多くの嫠ありたれども、
26 イリヤは其一人にも遣されざりき、唯シドンのサレプタにのみ、嫠なる婦に遣されたり。
27 又預言者エリセイの時、イズライリの中に多くの癩病者ありたれども、其一人も潔められざりき、唯シリヤの子エマンのみ潔められたり。
28 會堂に在る者此を聞きて、皆大に怒り、
29 起ちて彼を邑の外に逐ひ、曳きて其邑の建てられたる山の崖に至り、彼を推し下さんとせしに、
30 彼は衆の中を過ぎて去れり。
31 ガリレヤの邑カペルナウムに來り、安息日に於て彼等を教へしに、
32 人人其訓を奇とせり、其言に權ありし故なり。
33 會堂に汚鬼に憑らるる人あり、大聲に呼びて曰へり、
34 唉ナザレトのイイススよ、我等と爾と何ぞ與らん、爾は我等を滅さん爲に來りしか、我爾が誰なるを知る、乃神の聖なる者なり。
35 イイスス彼を禁めて曰へり、口を緘ぢて、此の人より出でよ。魔鬼之を堂中に仆し、少しも之を傷はずして出でたり。
36 衆皆驚きて、相語りて曰へり、是れ如何なる言ぞ、蓋彼權を以て、能を以て汚鬼に命じて、彼等出づ。
37 其聲聞徧く地の四方に揚れり。
38 彼會堂を出でて、シモンの家に入れり、シモンの岳母熱を病むこと甚し、人之が爲に彼に請へり。
39 彼其傍に立ちて、熱を禁めたれば、乃退けり、婦直に起きて彼等に供事せり。
40 日の入る時、種種の病を患ふる者を有てる人、咸之を攜へて、彼に就きたるに、彼一一手を其上に按せて、之を醫せり。
41 魔鬼も亦多くの人より出でて、呼びて曰へり、爾は神の子ハリストスなり。然るに彼は之に禁めて、其ハリストスたるを識ることを言ふを許さざりき。
42 朝に及びて、イイスス出でて、野の處に適けり、民彼を尋ね、彼に來りて、其彼等を離れ去らんことを止めたり。
43 然れども彼は之に謂へり、我他の邑にも神の國を福音す可し、蓋し我是が爲に遣されたり。
44 乃ガリレヤの諸會堂に於て教を宣べたり。
次章