2023年01月17日 13:10
第6章 (ルカ福音)
1 逾越節の二日の後の首の安息日に、イイスス禾田を過ぎ行けることあり、彼の門徒穂を摘み、手に摶みて食へり。
2 或ファリセイ等彼等に謂へり、爾等何ぞ安息日に行ふべからざることを行ふ。
3 イイスス之に答へて曰へり、爾等はダワィドが、己及び其從者の飢ゑし時、行ひし事、
4 卽如何にして彼は神の家に入りて、司祭等の外何人も食ふべからざる供前の餅を取りて食ひ、且之を其從者に與へしを讀まざりしか。
5 又彼等に謂へり、人の子は亦安息日の主なり。
6 他の安息日に彼會堂に入りて、教ふることありしに、彼處に右の手の枯へたる人ありき。
7 學士等とファリセイ等とは、彼が安息日に於て、斯の人を醫すや否やを窺へり、彼を罪する間を得ん爲なり。
8 彼は其意を知りて、手の枯へたる人に謂へり、起きて、中に立て、彼起きて立てり。
9 イイスス彼等に謂へり、我爾等に問はん安息日には善を行ひ、或は惡を行ふ、生命を救ひ、或は之を滅す、孰か宜しき、彼等默然たり。
10 遂に衆人を環視して、斯の人に謂へり、爾の手を伸べよ、彼斯く爲したれば、其手は健になりしこと他の手の如し。
11 彼等狂ひ怒りて、互に何をイイススに爲さんと議れり。
12 當日彼は祈禱の爲に山に登りて、終夜神に禱れり。
13 夜の明くるに及びて、其門徒を召し、彼等の中より十二人を選びて、之を使徒と名づけたり。
14 卽シモン、名をペトルと命ぜし者、及び其兄弟アンドレイ、イアコフ及びイオアン、フィリップ及びワルフォロメイ、
15 マトフェイ及びフォマ、アルフェイの子イアコフ及びシオン、稱してジロトと云ふ者、
16 イアコフの兄弟イウダ及びイウダイスカリオト、卽後に彼を賣りし者なり。
17 イイスス彼等と偕に下りて平地に立てり、爰に其衆くの門徒、及び衆くの民、イウデヤの四方イエルサリムならびににティルとシドンとの海濵よりして、
18 彼に聽かん爲、且己の病の醫されん爲に來りし者、又汚鬼を患ふる者ありき、彼等醫されたり。
19 衆民彼に捫らんと欲せり、蓋能彼より出でて、衆を醫せり。
20 彼は目を擧げて、其門徒を視て曰へり、神゜の貧しき者は福なり、神の國は爾等の有なればなり。
21 今飢うる者は福なり、爾等飽くを得んとすればなり。今泣く者は福なり、爾等笑ふを得んとすればなり。
22 人の子の爲に人人爾等を憎み、爾等を絶ち、且詬り、爾等の名を惡しき者として棄つる時は、爾等福なり、
23 其日に喜び樂めよ、天には爾等の賞多ければなり、蓋彼等の先祖は是くの如く預言者に行へり。
24 然るに爾等富める者は禍なる哉、爾等旣に慰を得たればなり。
25 今飽きたる者は禍なる哉、爾等飢ゑんとすればなり。今笑ふ者は禍なる哉、爾等哀み哭かんとすればなり。
26 人皆爾等の事を善く言はん時は、爾等禍なる哉、蓋彼等の先祖は是くの如く僞預言者に行へり。
27 我爾等聽く者に語ぐ、爾等の敵を愛し、爾等を憎む者に善を爲し、
28 爾等を詛ふ者を祝福し、爾等を虐ぐる者の爲に禱れ。
29 爾の頬を批つ者には、他の頬をも向けよ、爾の外服を奪う者には、裏衣をも取ることを拒む勿れ。
30 凡そ爾に求むる者には與へ、爾の物を取る者は、復之を促す勿れ。
31 人の爾等に行はんを欲する事は、爾等も是くの如く之を人に行へ。
32 爾等若し爾等を愛する者を愛せば、爾等に何の感謝かあらん、蓋罪人等も彼等を愛する者を愛す。
33 若し爾等に善を行ふ者に善を行はば、爾等に何の感謝かあらん、蓋罪人等も是くの如き事を行ふ。
34 若し返さるる望ある者に借さば、爾等に何の感謝かあらん、蓋罪人等も數の如く返されん爲に罪人等に借すなり。
35 然れども爾等敵を愛し、何をも望まずして善を行ひ、又借し與へよ、則爾等の賞は多からん、爾等至上者の子と爲らん、蓋彼は恩に負く者及び惡しき者に慈愛を施す。
36 故に爾等慈憐なること、爾等の父の慈憐なるが如くなれ。
37 人を議する勿れ、然らば議せられざらん、人を罪する勿れ、然らば罪せられざらん、人を恕せ、然らば爾等恕されん。
38 人に與へよ、然らば爾等に與へられん、嘉き量を以て、押し容れ、揺すり容れ、充ち溢れしめて、爾等の懷に納れられん、蓋何の量を以てか人に量らば、之を以て爾等にも量られん。
39 又彼等に譬を言へり、瞽は瞽を導くを得るか、二人ながら坑に陷らざらんや。
40 門徒は其師の上に在らず、凡そ全備したる者も其師の如くならん。
41 爾何ぞ兄弟の目に物屑の在るを視て、己の目に梁木の在るを覺えざる、
42 或は己の目に梁木の在るを視ずして、如何ぞ爾の兄弟に告げて、兄弟よ、我に爾の目に在る物屑を出すを容せと曰ふを得ん、僞善者よ、先づ梁木を己の目より出せ、其時如何に兄弟の目より物屑を出すべきを見ん。
43 善き樹には惡しき果を結ぶ者なく、又惡しき樹には善き果を結ぶ者なし。
44 凡の樹は其果に由りて識らる、蓋荊棘よりは無花果を摘まず、又蒺藜よりは葡萄を採らず。
45 善き人は其心の善き寶庫より善き者を出し、惡しき人は其心の惡しき寶庫より惡しき者を出す、蓋心に充つる者は口に言ふなり。
46 爾等何ぞ我を主よ、主よ、と稱へ、而して我が言ふ所を行はざる。
47 凡そ我に來り、我が言を聞きて、之を行ふ者は、我其何人に似たるを爾等に示さん。
48 彼は、家を建つるに、掘り且つ深くし、基を盤の上に置きたる人に似たり、洪水の有りし時、横流は其家を衝きたれども、之を動かす能はざりき、盤の上に基づけたればなり。
49 聞きて行はざる者は、家を土の上に基なくして建てたる人に似たり、横流の之を衝きし時、直に倒れたり、且其家の頽壞は大なりき。
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