2023年01月19日 14:03
第7章 (ルカ福音)
1 彼は悉く其言を民に聽かしめ畢りて、カペルナウムに入れり。
2 或百夫長、其愛する僕病みて死せんとせしに、
3 イイススの事を聞きて、イウデヤの長老等を彼に遣し、來りて其僕を醫さんことを請へり。
4 彼等イイススに來たりて、切に彼に求めて曰へり、爾此の人の爲に此を爲すは宜しきなり、
5 蓋彼は我が民を愛し、我等の爲に會堂を建てたり。
6 イイスス彼等と偕に往きて、旣に其家に遠からざる時、百夫長、友を遣して、彼に謂へり、主よ、勞する勿れ、蓋爾が我の舎に入るは當らず。
7 故に我亦己を以て爾に就くに堪へずとせり、乃一言を出せ、然らば我が僕愈えん。
8 蓋我人の權に属すれども、我が下に兵卒ありて、我此に往けと云へば往き、彼に來れと云へば來り、我が僕に是を行へと云へば行ふ。
9 イイスス之を聞きて、彼を奇として、顧みて、從へる民に謂へり、我爾等に語ぐ、イズライリの中にも我是くの如き信を見ざりき。
10 遣されし者家に歸りて病める僕の已に愈されしを見たり。
11 其後イイスス ナインと名づくる邑に往けるに、其門徒の多人及び衆くの民は彼と偕に行けり。
12 邑の門に近づきし時、彼處に死者の舁き出さるるあり、母の獨の子にして、其母は嫠なり、邑の民多く彼と偕にせり。
13 主彼を見て、憫みて、彼に謂へり、哭く勿れ。
14 乃近づきて、ひつぎに觸れたれば、舁く者止れり、彼曰へり、少者よ、爾に謂ふ、起きよ。
15 死者起きて坐し、且言へり、イイスス之を其母に與へたり。
16 衆皆懼れて、神を讚榮して曰へり、大なる預言者は我等の中に興れり、神は其民を眷みたり。
17 彼に於ける此の聲聞はイウデヤの全國及び其四方に揚れり。
18 イオアンの門徒は悉く此等の事を彼に告げたれば、
19 イオアン其門徒の二人を召し、イイススに遣して曰へり、來るべき者は爾なるか、抑我等他の者を俟つべきか。
20 彼等イイススに來りて曰へり、授洗イオアン我等を爾に遣して云く、來るべき者は爾なるか、抑我等他の者を俟つべきかと。
21 斯の時彼は多くの者を諸の疾、病及び惡鬼より醫し、又多くの瞽者に見ることを賜へり。
22 イイスス彼等に曰へり、往きて、見し所聞きし所をイオアンに告げよ、卽瞽者は明き、跛者は歩み、癩者は潔まり、聾者は聽き、死者は起き、貧者は福音す。
23 凡そ我の爲に惑はざる者は福なり。
24 イオアンの使者が去りし後、イイスス イオアンの事を擧げて民に謂へり、爾等何を觀んとして野に出でしか、風に動かさるる葦か、
25 抑何を觀んとして出でしか、柔き衣を衣たる人か、視よ、錦を衣て奢れる者は王の宮に在り。
26 然らば何を觀んとして出でしか、預言者か、然り、我爾等に語ぐ、彼は預言者より大なり。
27 彼は卽夫の錄して、視よ、我我が使を爾の面前に遣し爾に先だちて、爾の道を備へしめんと、曰はれたる者なり。
28 蓋我爾等に語ぐ、婦の生みし者の中、授洗イオアンより大なる預言者は有らず、然れども神の國に於て至と小き者は彼より大なり。
29 彼に聞きし衆民及び稅吏等はイオアンの洗禮を受けて、神の義を稱せり。
30 然れどもファリセイ等及び律法師等は彼より洗禮を受けずして、彼等に於ける神の旨を拒みたり。
31 主又曰へり、然らば我此の世の人人を誰に譬へん、彼等は誰に似たるか、
32 彼等は、童子、街に坐して、相呼びて、我等は爾等に龠を吹きたれども、爾等踊らざりき、爾等に悲の歌を謡ひたれども、爾等哭かざりきと云ふ者に似たり。
33 蓋授洗イオアン來りて、餅を食はず、酒を飮まず爾等云ふ、彼魔鬼に憑らると。
34 人の子來りて、食ひ飮む、又言ふ、視よ、是れ食を嗜み、酒を好む者、稅吏及び罪人の友なりと。
35 惟睿智の子は皆睿智の義を明にせり。
36 ファリセイ等の一人彼に共に食せんことを請ひたれば、彼はファリセイの家に入りて席坐せり。
37 時に其邑の婦にして罪ある者、彼がファリセイの家に席坐するを知りて、香膏を盛れる玉の盒を攜へ來り、
38 其後に足の下に立ち、哭きて、涙を以て其足を濡し、己の首の髪を以て之を拭ひ、其足に接吻して、之に香膏を抹れり。
39 彼を招きたるファリセイは此を見て、己の中に謂へり、此の人若し預言者たらば、彼に捫る者の孰たり、如何なる婦たるかを知らん、蓋是れ罪女なり。
40 イイスス彼に答へて曰へり、シモンよ、我爾に言ふべき事あり。彼曰く、師よ、之を言へ。
41 イイスス曰へり、或債主に二人の負債者ありて、一人は銀五百枚、一人は五十枚を負へり、
42 其償ふ能はざるに因りて、彼は二人に免せり、然らば二人の中彼を愛すること孰か多からん、試みに言へ。
43 シモン對へて曰へり、意ふに、多く免されし者ならん。彼は之に謂へり、爾が議りしこと正し。
44 是に於て婦を顧みて、シモンに謂へり、爾此の婦を見るか、我爾の家に入りしに、爾は我が足の爲に水を給へざりき、然るに彼は涙を以て我が足を濡し、首の髪を以て之を拭へり。
45 爾は我に接吻せざりき、然るに彼は、我が此に入りし時より、我が足に接吻して已めず。
46 爾は我が首に油を抹らざりき、然るに彼は香膏を我が足に抹れり。
47 是の故に我爾に語ぐ、彼の多くの罪は赦さる、蓋彼多く愛せり、然れども少く赦さるる者は、少く愛するなり。
48 乃婦に謂へり、爾の罪は赦さる。
49 彼と共に席坐せる者己の中に言へり、此れ何人にして罪をも赦すか。
50 彼婦に謂へり、爾の信は爾を救へり、安然として往け。
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