2023年01月20日 13:23
第10章 (ルカ福音)
1 厥後主は又別に七十門徒を選び、彼等各二人を己に先だてて、自ら往かんと欲する所の諸邑諸處に遣し、
2 彼等に謂へり、穡は多く、工は少し、故に穡主に、工を其穡所に遣さんことを求めよ。
3 往け、我が爾等を遣すは、羔を狼の中に入るるが如し。
4 金嚢をも、行嚢をも、履をも、攜ふる勿れ、途中にて人に安を問ふ勿れ。
5 人の家に入る時は、先づ此の家に平安と曰へ。
6 若し彼處に平安の子あらば、爾等の平安は彼に留らん、然らずば、爾等に歸らん。
7 其家に居りて、彼等に在る所の者を食飮せよ、蓋勞する者の其値を得るは宜しきなり、家より家に移る勿れ。
8 何の邑に入るとも、人爾等を接けば、其爾等の前に供ふる者を食へ。
9 其中に在る病者を醫せ、又衆に告げて曰へ、神の國は爾等に近づけりと。
10 何の邑に入るとも、人爾等を接けずば、其衢に出でて曰へ、
11 爾等の邑より我等に著きたる塵をも、我等は爾等に對ひて拂ふ、然れども之を知れ、神の國は爾等に近づけりと。
12 我爾等に語ぐ、彼の日に於てソドムは斯の邑より忍び易からん。
13 禍なる哉爾ホラジンよ、禍なる哉爾ワィフサイダよ、蓋爾等の中に行はれし異能は、若しティル及びシドンに行はれしならば、彼等は早く麻を衣、灰を蒙り、坐して悔改せしならん。
14 然らば審判に於てティル及びシドンは爾等より忍び易からん。
15 天にまで擧げられしカペルナウムよ、爾も地獄にまで落とされん。
16 爾等に聽く者は我に聽く、爾等を拒む者は我を拒む、我を拒む者は我を遣しし者を拒むなり。
17 七十門徒喜びて返りて曰へり、主よ、爾の名に因りて魔鬼も我等に服す。
18 彼は之に謂へり、我サタナの電の如く天より隕ちしを見たり。
19 視よ、我爾等に蛇、蠍、及び悉くの敵の能を踐む權を與ふ、一も爾等を害せざらん。
20 然れども惡鬼の爾等に服するを喜と爲す勿れ、乃爾等の名の天に錄されしを喜と爲せ。
21 當時イイスス神゜を以て喜びて曰へり、父、天地の主よ、我爾を讚榮す、爾此等を智者及び達者に隱して、之を赤子に顯ししに因る、父よ、然り、蓋是くの如きは爾の旨に嘉せし所なり。
22 門徒を顧みて曰へり、萬物は我が父より我に授けられたり、父の外に、子の誰たるを識る者なく、子及び子が顯さんと欲する者の外に、父の誰たるを識る者なし。
23 又門徒を顧みて、特に彼等に謂へり、爾等が見る所を見る目は福なり。
24 蓋我爾等に語ぐ、多くの預言者と君王とは、爾等が見る所を見んと欲して、見ざりき、爾等が聞く所を聞かんと欲して、聞かざりき。
25 時に一の律法師起ちて、彼を試みて曰へり、師よ、我何を爲して永遠の生命を嗣がんか。
26 彼は之に謂へり、律法に何をか錄せる、爾如何に讀むか。
27 答へて曰へり、爾心を盡し、靈を盡し、力を盡し、意を盡して、主爾の神を愛せよ、又爾の隣を愛すること、己の如くせよ。
28 イイスス之に謂へり、爾の答へし所正し、之を爲せ、乃生きん。
29 然れども彼は己を義とせんと欲して、イイススに謂へり、我が隣とは誰ぞや。
30 イイスス答へて曰へり、或人イエルサリムよりイエリホンに下る時、盗賊に遇へり、彼等其衣を剥ぎ、彼に傷つけ、幾ど死するばかりにして、彼を捨て去れり。
31 適一の司祭是の路より下りしが、彼を見て、過ぎ去れり。
32 同じく「レワィト」も彼處に至り、近づきて彼を見て、過ぎ去れり。
33 惟或サマリヤ人は行きて此に至り、彼を見て憫み、
34 就きて、其傷に油と酒とを沃ぎて、之を裏み、彼を己の家畜に乗せ、旅館に引き至りて、彼を看護せり。
35 明日行かんとする時、銀二枚を出し、館主に與へて、之に謂へり、此の人を看護せよ、費若し之より益さば、我返る時爾に償はん。
36 此の三人の中、爾孰を盗賊に遇ひし者の隣と意ふか。
37 彼曰へり、此の人に矜恤を施しし者なり。イイスス彼に謂へり、往きて、爾も是くの如く行へ。
38 彼等が行ける時、イイスス一の村に入りしに、或婦マルファと名づくる者、彼を其家に迎へたり。
39 其姉妹にマリヤと名づくる者あり、イイススの足下に坐して、其言を聽けり。
40 マルファは供事の多きに因りて心を煩はし、就きて曰へり、主よ、我が姉妹、我一人を遺して供事せしむるを爾意と爲さざるか、之に命じて、我を助けしめよ。
41 イイスス彼に答へて曰へり、マルファよ、マルファよ、爾は多くの事を慮りて心を勞せり、
42 然れども需むる所は一のみ。マリヤは善き分を擇びたり、是は彼より奪ふ可からず。
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