2023年01月20日 13:24
第11章 (ルカ福音)
1 イイスス某處に祈りて、旣に休めし時、其門徒の一人彼に謂へり、主よ、我等に禱ることを教へよ、イオアンも其門徒に教へしが如し。
2 彼が之に謂へり、爾等禱る時言へ、天に在す我等の父よ、願はくは爾の名は聖とせられ、爾の國は來り、爾の旨は、天に行はるるが如く、地にも行はれん、
3 我が日用の糧を毎日我等に與へ給へ、
4 我等に我が罪を免し給へ、蓋我等も凡そ我等に負ふ者に免す、我等を誘に導かず、猶我等を凶惡より救ひ給へと。
5 又彼等に謂へり、爾等の中孰か友あり、夜半彼に來りて、友よ、我に三の餅を借せ、
6 蓋我が友途中より我に來りしに、我之に供すべき者なしと曰はんに、
7 彼内より之に答へて、我を煩はす勿れ、門已に閉ぢ、我が兒曹我と與に床に在り、我起きて、爾に與ふる能はずと曰はん。
8 我爾等に語ぐ、若し彼は友なるが故に、起きて彼に與へずば、乃其切迫に依りて、起きて其需むる如く彼に與へん。
9 我も爾等に語ぐ、求めよ、然らば爾等に與へられん、尋ねよ、然らば遇はん、門を叩けよ、然らば爾等の爲に啓かれん。
10 蓋凡そ求むる者は得、尋ぬる者は遇ひ、門を叩く者は啓かれん。
11 爾等の中父たる者、孰か其子餅を求めんに、之に石を與へ、或は魚を求めんに、之に魚に代へて蛇を與へ、
12 或は卵を求めんに、之に蠍を與へん。
13 然らば爾等惡しき者なるに、尚善き賜を其子に與ふるを知る、況んや天に在す父は、之に求むる者に、聖神゜を與へざらんや。
14 或時彼瘖なる魔鬼を逐ひ出せり、魔鬼出でて、瘖言ひしに、民之を奇とせり。
15 然れども其中の或者曰へり、彼は魔鬼の魁ワェエルゼウルに藉りて魔鬼を逐ひ出す。
16 他の者は彼を試みて、天よりする休徴を求めたり。
17 イイスス彼等の意を知りて、彼等に謂へり、凡の國自ら別れ爭はば、荒墟となり、家自ら別れ爭はば、倒れん。
18 若しサタナも別れ爭はば、其國如何にして立たん。然るに爾等は言ふ、我ワェエルゼウルに藉りて魔鬼を逐ひ出すと。
19 若し我ワェエルゼウルに藉りて魔鬼を逐ひ出さば、爾等の諸子はゆび誰に藉りて之を逐ひ出すか、故に彼等は爾等の審判者と爲らん。
20 然れども若し我神の指に藉りて魔鬼を逐ひ出さば、則神の國果して爾等に臨みしなり。
21 强き者の武器を執りて、其家を守る時、其所有安全なり。
22 然れども彼より更に强き者來りて、彼に勝つ時は、其恃とせし武器を悉く奪ひて、贓物を分たん。
23 我と偕にせざる者は、我に敵し、我と偕に聚めざる者は、散らすなり。
24 汚鬼人より出でて後、水なき地を巡り、安息を求むれども、得ずして曰く、我曾て出でし我が家に歸らんと。
25 旣に來りて、其家の掃き且飾りたるを見、
26 乃往きて、己よりも惡しき他の七鬼を攜へ來り、偕に入りて、彼處に居るなり。是に於て其人の爲に後の患は先より更に甚し。
27 此を言ふ時、一の婦民の中より聲を揚げて、彼に謂へり、爾を孕みし腹と爾が哺ひし乳とは福なり。
28 彼は曰へり、然り、神の言を聽きて之を守る者は福なり。
29 民の多く集れる時彼宣べ始めて曰へり、此の世は惡しくして、休徴を求む、而して預言者イオナの休徴の外、之に休徴は與へられざらん。
30 蓋イオナがニネワィヤ人の爲に休徴と爲りし如く、人の子も此の世の爲に是くの如く爲らん。
31 南方の女王は審判の時に斯の世の人と共に起ちて、彼等を罪せん、蓋彼は地の極よりソロモンの智慧を聽かん爲に來れり、視よ、此にはソロモンより大なる者あり。
32 ニネワィヤの人は審判の時に斯の世と共に起ちて、之を罪せん、蓋彼等はイオナの傳教に由りて悔改せり、視よ、此にはイオナより大なる者あり。
33 燈を燃して、之を隱れたる處、或は斗の下に置く者あらず、乃燈臺の上に置く、入る者が光を見ん爲なり。
34 身の燈は目なり、故に爾の目の淨き時は、爾の全身も明なり、其惡しき時は、爾の身も暗し。
35 故に愼め、爾が中の光の暗とならざらんことを。
36 若し爾の全身明にして、一部の暗き處もなくば、則全く明ならん、燈の其光を以て爾を照すが如し。
37 彼が言ふ時、或ファリセイ彼と共に食せんことを請ひたれば、彼入りて席坐せり。
38 ファリセイは彼が食する前に手を洗はざりしを見て、異めり。
39 主は之に謂へり、爾等ファリセイ今杯と盤との外を潔むれども、爾等の中には貪婪と惡慝とに充てり。
40 無知なる者よ、外を造りし者は亦内をも造りしに非ずや。
41 惟所有の中より施濟を爲せ、然らば爾等の爲に皆潔からん。
42 禍なる哉爾等ファリセイよ、蓋爾等は薄荷、芸香、及び凡の野菜の十分の一を納めて、義と神に於ける愛とを遺つ、此れ行ふ可きなり、彼も亦遺つ可からず。
43 禍なる哉爾等ファリセイよ、蓋爾等の會堂には首座、街衢には問安を好む。
44 禍なる哉爾等僞善なる學士及びファリセイ等よ、蓋爾等は隱れたる墓に似たり、其上を履む人は之を知らず。
45 律法師等の一人彼に答へて曰へり、師よ、爾之を言ひて、我等を辱しむ。
46 彼曰へり、爾等律法師も禍なる哉、蓋爾等は負ひ難き任を人に任はせて、己は一の指をも其任に觸れず。
47 爾等禍なる哉、蓋爾等は其先祖が殺しし預言者の墓を建つ。
48 是を以て爾等は先祖の爲ししことを證し、且之に與す、蓋彼等は預言者を殺し、爾等は其墓を建つ。
49 故に神の智慧も言へり、我預言者及び使徒等を彼等に遣さん、彼等は其中或者を殺し、或者を逐はん、
50 創世以來流されし諸預言者の血は、
51 アワェリの血より、祭壇と殿との間に殺されしザハリヤの血に至るまで、皆此の代より索められん爲なり。然り、我爾等に語ぐ、是れ此の代より索められん。
52 禍なる哉爾等律法師よ、蓋爾等は知識の鑰を取りて、自ら入らず、入る者をも阻めり。
53 彼が之を言ふ時、學士等及びファリセイ等迫りて、彼を詰り、彼に多くの事を答へしめ、
54 彼を伺ひて、其口より出づる何事をか捕へんと欲せり、彼を罪せん爲なり。
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