2023年01月20日 13:25
第12章 (ルカ福音)
1 民數萬集りて、相蹂むに至れる時、彼先づ其門徒に謂へり、謹みてファリセイ等の酵を防げ、是れ僞善なり。
2 覆はれて露れざる者なく、隱れて知られざる者なし。
3 故に爾等が暗の中に言ひし事は、光の中に聞えん、密なる室に於て耳に附きて語りし事は、屋の上に傳へられん。
4 我爾等我が友に言ふ、身を殺して後に何事をも爲す能はざる者を懼るる勿れ。
5 我爾等に誰をか懼るべきを示さん、卽殺して後に地獄に投ずる權を有つ者を懼れよ、然り、我爾等に語ぐ、斯の者を懼れよ。
6 五の雀は二錢にて售らるるに非ずや、然るに其一も神の前に忘れられず。
7 爾等に於ては首の髪も皆數へられたり。故に懼るる勿れ、爾等は多くの雀より貴し。
8 我又爾等に語ぐ、凡そ我を人の前に認めん者は、人の子も彼を神の使等の前に認めん。
9 我を人の前に諱まん者は、神の使等の前に諱まれん。
10 凡そ人の子に敵して言を出す者は赦されん、然れども聖神゜を瀆す者は赦されざらん。
11 爾等を曳きて、會堂、又は政を執り權を有つ者の前に至らん時如何に、或は何を答ふべく、或は何を言ふべきを慮る勿れ。
12 蓋其時聖神゜爾等に言ふべきことを教へん。
13 民の中の一人彼に謂へり、師よ、我が兄弟に我と遺產を分つことを命ぜよ。
14 彼は之に謂へり、人よ、誰か我を立てて、爾等の裁判官或は分配者と爲したる。
15 是に於て彼等に謂へり、愼みて貪を防げ、蓋人の生命は其所有の饒なるに因らざるなり。
16 又譬を設けて彼等に謂へり、或富める人に田畆の善く實れるあり、
17 彼自ら忖りて曰へり、我何を爲さんか、蓋我が作物を藏むべき處なし。
18 又曰へり、我斯く爲さん、我が倉を毀ちて、更に大なる者を建て、此の中に我が悉くの穀物と貨物とを聚めて、
19 我が靈に謂はん、靈よ、爾には多年の爲に蓄へたる多くの貨物あり、息み、食ひ、飮み、樂めと。
20 然れども神は彼に謂へり、無知なる者よ、今夜爾の靈を爾より索めん、然らば爾が備へし所の者は誰に歸せんか。
21 凡そ己の爲に財を積み、神に於て富まざる者は是くの如し。
22 又其門徒に謂へり、故に我爾等に語ぐ、爾の生命の爲に何を食ひ、爾等の身體の爲に何を衣んと慮る勿れ。
23 生命は糧より大にして、身體は衣より大なり。
24 試に鴉を思へ、彼等は稼かず穡らず、倉もなく納屋もなし、而して神は之を養ふ、爾等は鳥より貴きこと幾何ぞ。
25 且爾等の中誰か慮りて、其身の長一尺だに延ぶるを得ん。
26 然らば至と小き事すら能せざるに、何ぞ其餘の事を慮る。
27 試に百合の如何にか長ずるを思へ、勞かず紡がず、然れども我爾等に語ぐ、ソロモンも其榮華の極に於て、其衣猶此の花の一に及ばざりき。
28 今日野に在り、明日爐に投げらるる草にも、神は斯く衣すれば、況んや、爾等をや、小信の者よ。
29 故に爾等何を食ひ、或は何を飮まんと求むる勿れ、亦思ひ煩ふ勿れ、
30 蓋此れ皆世の異邦人の求むる所なり、爾等の父は此等の者の爾等に必要なるを知る。
31 惟神の國を求めよ、然らば此れ皆爾等に加はらん。
32 小さき群よ、懼るる勿れ、蓋爾等の父は爾等に國を賜はんことを喜べり。
33 爾等の所有を售りて、施濟を爲せ、己の爲に古びざる嚢、盡きざる財を天に備へよ、彼處には盗賊近づかず、蠹壞はず。
34 蓋爾等の財の在る所には、爾等の心も在らん。
35 爾等の腰は帶せられ、爾等の燈は燃ゆべし。
36 爾等の其主が婚筵より歸るを俟ちて、彼來りて門を叩く時、直に彼の爲に啓かんとする人人に似るべし。
37 主來りて其諸僕の儆醒するを見ば、彼等は福なり、我誠に爾等に語ぐ、彼自ら腰に帶し、彼等を席坐せしめ、前みて彼等に供事せん。
38 若し第二更に來り、又第三更に來りて、彼等の是くの如きを見ば、其諸僕福なり。
39 若し家主盗賊の何の時に來るを知らば、儆醒して、其家を穿つを許さざらん、是れ爾等の知る所なり。
40 故に爾等も己を備へよ、蓋爾等が意はざる時に人の子來らん。
41 ペトル彼に謂へり、主よ、此の譬は我等に言ふか、抑衆人に言ふか。
42 主曰へり、孰か忠にして智なる家宰、其主が諸僕の上に立てて、時に隨ひて、彼等に定量の糧を與へしむる者たる、
43 主の來る時、彼が斯く行ふを見ば、其僕福なり。
44 我誠に爾等に語ぐ、彼を立てて、其一切の所有を督らしめん。
45 然れども若し其僕心の中に、我が主の來るは遅からんと曰ひて、僕婢を打ち、食ひ飮み且酔へば、
46 乃俟たざる日、知らざる時に、其僕の主來りて、彼を斷ち、彼を不忠の者と同じき分に處せん。
47 其主の旨を知りて備へず、其旨に順ひて行はざりし僕は、多く扑れん、
48 知らずして罰に當たる事を行ひし者は、少く扑たれん。凡そ多く與へられし者は、多く促されん、多く託せられし者は、更に多く索められん。
49 我火を地に投ぜん爲に來れり、此の火の已に燃えんことを、我望むこと幾何ぞ。
50 我に受くべき洗禮あり、其成るに至るまで、我憂に迫ること如何ばかりぞ。
51 爾等は我和平を地に與へん爲に來れりと意ふか、我爾等に謂ふ、然らず、卽分離なり。
52 蓋是より後、一家に五人分離して、三人は二人、二人は三人に敵せん、
53 父は子に、子は父に敵し、母は女に、女は母に敵し、姑は其婦に、婦は其姑に敵せん。
54 又民に謂へり、爾等雲の西より起るを見れば、直に言ふ、雨ふらんと、果して然り。
55 風の南より吹くを見れば、言ふ、暑くならんと、果して然り。
56 僞善者よ、爾等天地の面を別つを知りて、何ぞ此の時を別たざる。
57 且爾等何ぞ己に依りて、宜しき所を判斷せざる。
58 爾を訴ふる者と偕に有司に往く時、途中に在りて彼より釋を得んことを勉めよ、恐らくは彼爾を曳きて、裁判官に至り、裁判官爾を下吏に付し、下吏は爾を獄に下さん。
59 我爾に語ぐ、爾毫釐だに償はずば、彼より出づるを得ず。
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