2023年01月20日 13:28
第15章 (ルカ福音)
1 稅吏及び罪人等はイイススに聽かん爲に、皆彼に近づけり。
2 ファリセイ等と學士等と之を怨みて曰へり、彼は罪人等を納れて、之と共に食す。
3 彼此の譬を設けて彼等に曰へり、
4 爾等の中何人か、一百の羊ありて、其一を失はば、九十九を野に舎き、往きて、亡はれし者を獲るに至るまで之を尋ねざらんや、
5 之を獲て、喜びて己の肩に任ひ、
6 家に歸りて、其友及び隣を呼び集めて、彼等に謂はん、我と共に喜べ、蓋我は亡はれし羊を獲たりと。
7 我爾等に語ぐ、是くの如く天には一の悔い改むる罪人の爲の喜は、悔改を要せざる九十九の義人の爲の喜に勝らん。
8 或は何の婦か、金錢十枚ありて、其一枚を失はば、燈を燃し、室を掃ひ、獲るに至るまで、勤めて尋ねざらんや、
9 之を獲て、其友の及び隣を呼び集めて曰はん、我と共に喜べ、蓋我は失ひし金錢を獲たりと。
10 我爾等に語ぐ、是くの如く神の使等の前には、一の悔い改むる罪人の爲に喜あり。
11 又曰へり、或人に二の子あり、
12 其次子父に謂へり、父よ、我が得べき產業の分を我に與へよ、父其產業を彼等に分てり。
13 幾日も經ざるに、次子は其得たる者を盡く集めて、遠き地に旅行し、彼處に放蕩に生活して、其產業を浪費せり。
14 盡く耗ししに及びて、其地に大なる飢饉起り、彼始めて乏しきを覺えたり。
15 乃往きて、其地の住民の一に身を寄せたれば、其人彼を田に遣して豕を牧はしめたり。
16 彼は豕の食ふ豆莢を以て、其腹を充たさんと欲したれども、彼に與ふる者なかりき。
17 遂に自ら省みて曰へり、我が父には幾何かの傭人の糧に餘れるあるに、我は飢ゑて亡ぶ。
18 起ちて、我が父に往きて、之に謂はん、父よ、我天及び爾の前に罪を獲たり、
19 旣に爾の子と稱へらるるに堪へず、我を爾が傭人の一の如く爲せと。
20 乃起ちて、其父に往けり。尚遠く在りし時、其父彼を見て憫み、趨り前みて、其頚を抱きて、彼に接吻せり。
21 子は之に謂へり、父よ、我天及び爾の前に罪を獲たり、旣に爾の子と稱へらるるに堪へず。
22 然れども父は其諸僕に謂へり、最も美しき衣を出して、彼に衣せよ、指鐶を其手に、履を其足に施せ。
23 且肥えたる犢を牽きて、之を宰れ、我等食ひ樂しまん。
24 蓋此の我が子は死して復生き、失はれて又得られたり。是に於て彼等樂しめり。
25 適其長子田に在りしが、歸りて、家に近づける時、樂と舞とを聞きたれば、
26 一の僕を呼びて、是れ何事ぞと問ひしに、
27 彼曰へり、爾の弟來りしなり、爾の父は、其恙なくして彼を得たるに因りて、肥えたる犢を宰りたり。
28 長子怒りて、入るを欲せざりき。其父出でて、彼に勧めしに、
29 彼父に答へて曰へり、視よ、我多年爾に事へて、未だ嘗て爾の命に違はざれども、爾未だ嘗て小山羊を我に與へて、我を友と共に樂しましめざりき。
30 然るに此の爾の子、妓と共に爾の產業を耗しし者の來たりし時は、爾彼の爲に肥えたる犢を宰れり。
31 父彼に謂へり、子よ、爾は常に我と偕に在り、我に属する者は皆爾に属す。
32 惟此の爾の弟は死して復生き、失はれて、又得られたるが故に、我等喜び樂しむべきなり。
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