2023年01月20日 13:29
第16章 (ルカ福音)
1 イイスス又其門徒に謂へり、或富める人に管理者ありて、其主の產業を耗すと彼に訴へられたり。
2 主彼を呼びて曰へり、我が爾に付きて聞く事は斯れ何ぞや、管理の報告を出せ、蓋爾は仍管理するを得ず。
3 管理者意に謂へり、我が主我より管理の職を奪ふ、我何を爲さんか、鋤くには力なく、乞ふは耻づ。
4 我爲すべき事を知る、我が管理の職の解かれん時、人人に我を其家に接けしめん爲なりと。
5 乃其主の負債者を一一呼びて、其第一の者に謂へり、爾我が主に負ふこと幾何ぞ。
6 曰へり、油百斗なり。彼に謂へり、爾の券を取り、亟に坐して、五十と書け。
7 次に他の者に謂へり、爾負ふこと幾何ぞ。曰へり、麥百斛なり。彼に謂ふ、爾の券を取りて、八十と書け。
8 主は不義なる管理者を誉めたり、其爲しし事の巧なるが故なり、蓋此の世の諸子は、其族類に於て、光の諸子に較ぶれば更に巧なり。
9 我も爾等に語ぐ、不義の財を以て、己の爲に友を求めよ、爾等の匱からん時、彼等が爾等を永遠の宅に接けん爲なり。
10 少き事に於て忠なる者は、多き事に於ても忠なり、少き事に於て不義なる者は、多き事に於ても不義なり。
11 故に爾等若し不義の財に於て忠ならずば、誰か爾等に眞の財を託せん。
12 若し他に属する者に忠ならずば、誰か爾等に属する者を爾等に與へん。
13 僕は二人の主に事ふる能はず、蓋或は此を惡み、彼を愛し、或は此を重んじて、彼を輕んぜん。爾等は神と財とに兼ね事ふる能はず。
14 利を好むファリセイ等も悉く之を聞き、而して彼を哂へり。
15 彼は之に謂へり、爾等人人の前に己を義と爲す、然れども神は爾等の心を知れり、蓋人人の中に高しとする事は、神の前に惡むべきなり。
16 律法と預言者とはイオアンに至りて止れり、其時より神の國は福音せられ、人人力を用ゐて之に進む。
17 然れども天地の廢するは、律法の一畫の闕くるに較ぶれば、更に易し。
18 凡そ其妻を出して、他に娶る者は、姦淫を行ふなり、夫に出されたる婦を娶る者も、亦姦淫を行ふなり。
19 富める人あり、紫袍と細布とを衣、日々奢り樂めり。
20 亦貧しき者ラザリと名づくるあり、全身腫物を病みて、富める人の門に臥し、
21 其食卓より遺つる屑を以て、腹を果たさんと欲せり、犬も來りて、其腫物を舐れり。
22 貧しき者死して、天使等に因りてアウラアムの懷に送られ、富める者も死して葬られたり。
23 地獄の苦の中に在りて、彼其目を擧げて、遙にアウラアム及び其懷に在るラザリを見たり。
24 乃呼びて曰へり、父アウラアムよ、我を憐み、ラザリを遣して、其指の尖を水に蘸して、我が舌を涼さしめよ、蓋我此の焔の中に苦む。
25 然れどもアウラアム曰へり、子よ、爾は存命の時爾の善を受け、ラザリは同じく其惡を受けたりしを憶へ、今彼は此に慰み、爾は苦む。
26 第此のみならず、爾等と我等との間に巨なる淵は限れり、故に此より爾等に渉らんと欲する者は能はず、彼よりも我等に渉るを得ず。
27 彼曰へり、然らば父よ、請ふ、ラザリを我が父の家に遣せ、
28 蓋我に五人の兄弟あり、彼をして其前に證を爲さしめよ、彼等も此の苦の處に來らざらん爲なり。
29 アウラアム之に謂ふ、彼等にモイセイ及び預言者あり、之に聽くべし。
30 彼曰へり、否、父アウラアムよ、然れども若し死の中より彼等に往く者あらば、彼等悔改せん。
31 アウラアム曰へり、若しモイセイ及び預言者に聽かずば、縦ひ死より復活する者ありとも信ぜざらん。
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