2023年01月20日 13:32
第19章 (ルカ福音)
1 イイスス イエリホンに入りて過ぎ行けり。
2 視よ、ザクヘイと名づくる者あり、稅吏の長にして富める者なり。
3 イイススの如何なる人たるを見んと欲したれども、人の衆きに因りて見るを得ざりき、身の長短ければなり。
4 乃趨り前みて、彼を見ん爲に無花果樹に升れり、彼此の旁を過ぎんとすればなり。
5 イイスス此の處に來りし時、仰ぎて、之を見て曰へり、ザクヘイよ、速に下れ、蓋我今日爾の家に寓るべし。
6 彼急ぎ下り、喜びてイイススを接けたり。
7 人皆之を見て、怨みて曰へり、彼往きて罪人の客と爲れり。
8 ザクヘイ立ちて、主に謂へり、主よ、我所有の半を以て、貧しき者に施さん、若し誣ひて人より収りしことあらば、四倍にして之を償はん。
9 イイスス彼に謂へり、今日救は此の家に臨めり、此の人もアウラアムの子なればなり。
10 蓋人の子は亡びし者を尋ねて救はん爲に來れり。
11 彼等が之を聞く時、イイスス又譬を設けたり、蓋彼已にイエルサリムに近づき、彼等は神の國直に顯るべしと意へり。
12 故に彼曰へり、或貴き人遠き地に往けり、國を受けて歸らん爲なり。
13 往く時十人の僕を召して、彼等に銀十斤を與へて曰へり、我が歸るまで貿易せよ。
14 其國民彼を憎みて、後より使を遣して曰へり、我等は斯の人の我等に王たるを欲せず。
15 彼が國を受けて歸りし時、彼の銀を與へし諸僕を召すことを命じたり、各幾何か利を獲たるを知らん爲なり。
16 第一の者來りて曰へり、主よ、爾の一斤は十斤を獲たり。
17 主彼に謂へり、善い哉、善なる僕よ、爾は小き者に於て忠なりしに因りて、十の邑を宰れ。
18 其次の者來りて曰へり、主よ、爾の一斤は五斤を獲たり。
19 之にも謂へり、爾の五の邑を宰れ。
20 又其次の者來りて曰へり、主よ、爾の一斤は此に在り、我巾に裏みて之を護れり、
21 爾を畏れし故なり、蓋爾は嚴酷なる人にして、置かざりし者を取り、播かざりし者を穫る。
22 主彼に謂ふ、惡しき僕よ、我爾の口に依りて爾を鞫かん、爾は我が嚴酷なる人にして、置かざりし者を取り、播かざりし者を穫るを知りたらば、
23 何ぞ我が銀を兌錢肆に豫けざりし、然せば我來りて、之を利と與に受けしならん。
24 遂に前に立てる者に謂へり、彼より一斤を取りて、十斤を有てる者に與へよ。
25 彼等曰へり、主よ、彼已に十斤を有てり。
26 曰く、我爾等に語ぐ、凡そ有てる者には與へられ、有たざる者よりは、其有てる物も奪はれん。
27 且彼の我が敵、我が彼等に王たるを欲せざりし者を、此に曳き來りて、我が前に誅せよ。
28 之を謂ひ畢りて、イイスス前に行き、イエルサリムに向ひて上れり。
29 橄欖山と名づくる山に邇く、ワィファギヤ及びワィファニヤに近づきし時、彼二人の門徒を遣して
30 曰へり、前なる村に往け、其内に入らば、繫ぎたる小驢、人の未だ曾て乗らざりし者に遇はん、之を解きて牽き來れ。 31 若し爾等に何爲れぞ解くと問ふ者あらば、斯く彼に言へ、主之を需むと。 32 遣されし者往きて、彼が言ひし如き事に遇へり。 33 小驢を解く時、其主彼等に謂へり、何ぞ小驢を解く。 34 彼等曰へり、主之を需む。 35 乃之をイイススに牽き來り、己の衣を小驢に掛け、イイススを其上に乗せたり。 36 彼が行く時、人人己の衣を道に布けり。 37 已に橄欖山より下路に近づける時、大衆の門徒は喜びて、其見し所の悉くの異能の爲に、大聲に神を讚美して
38 曰へり、主の名に因りて來る王は祝福せらる、天には和平、至高きには光榮と。 39 民の中より或ファリセイ等彼に謂へり、師よ、爾の門徒を禁めよ、 40 彼等は之に答へ曰へり、我爾等に語ぐ、若し彼等默さば、石は呼ばん。 41 旣に近づきし時、城を見て、之が爲に哭きて
42 曰へり、噫若し爾の日にだに、爾の平安に關する事を知りたらんには。然れども此れ今爾の目に隱れたり。 43 蓋日爾に至りて、爾の敵は壘を築きて、爾を繞り、四方より爾を攻め、 44 爾及び爾の中に爾の諸子を滅し、爾の中に石を石の上に遺さざらん、爾の眷顧の時を爾知らざりしに因りてなり。 45 遂に殿に入りて、其中に貿易する者を逐ひ出して、 46 彼等に謂へり、我が家は祈禱の家なりと錄されたるに、爾等之を盗賊の巢窟と爲せり。 47 乃日々殿に在りて、教を宣べたり、司祭諸長、學士等、及び民の長老等彼を滅さんと謀りたれども、 48 爲す可き所を知らざりき、蓋民皆離れずして彼に聽けり。
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30 曰へり、前なる村に往け、其内に入らば、繫ぎたる小驢、人の未だ曾て乗らざりし者に遇はん、之を解きて牽き來れ。 31 若し爾等に何爲れぞ解くと問ふ者あらば、斯く彼に言へ、主之を需むと。 32 遣されし者往きて、彼が言ひし如き事に遇へり。 33 小驢を解く時、其主彼等に謂へり、何ぞ小驢を解く。 34 彼等曰へり、主之を需む。 35 乃之をイイススに牽き來り、己の衣を小驢に掛け、イイススを其上に乗せたり。 36 彼が行く時、人人己の衣を道に布けり。 37 已に橄欖山より下路に近づける時、大衆の門徒は喜びて、其見し所の悉くの異能の爲に、大聲に神を讚美して
38 曰へり、主の名に因りて來る王は祝福せらる、天には和平、至高きには光榮と。 39 民の中より或ファリセイ等彼に謂へり、師よ、爾の門徒を禁めよ、 40 彼等は之に答へ曰へり、我爾等に語ぐ、若し彼等默さば、石は呼ばん。 41 旣に近づきし時、城を見て、之が爲に哭きて
42 曰へり、噫若し爾の日にだに、爾の平安に關する事を知りたらんには。然れども此れ今爾の目に隱れたり。 43 蓋日爾に至りて、爾の敵は壘を築きて、爾を繞り、四方より爾を攻め、 44 爾及び爾の中に爾の諸子を滅し、爾の中に石を石の上に遺さざらん、爾の眷顧の時を爾知らざりしに因りてなり。 45 遂に殿に入りて、其中に貿易する者を逐ひ出して、 46 彼等に謂へり、我が家は祈禱の家なりと錄されたるに、爾等之を盗賊の巢窟と爲せり。 47 乃日々殿に在りて、教を宣べたり、司祭諸長、學士等、及び民の長老等彼を滅さんと謀りたれども、 48 爲す可き所を知らざりき、蓋民皆離れずして彼に聽けり。