2023年01月20日 13:35
第22章 (ルカ福音)
1 除酵節卽逾越と名づくる節は近づけり。
2 司祭諸長と學士等とは如何にイイススを殺さんと謀れり、蓋民を畏れたり。
3 時にサタナは十二の一なるイウダ、稱してイスカリオトと云ふ者に入れり。
4 彼往きて、司祭諸長及び庶司と共に、如何にイイススを彼等に付さんことを語れり。
5 彼等喜びて、銀を彼に與へんことを約したれば、
6 彼諾ひて、民の在らざる時にイイススを彼等に付さん爲に、好き機を窺へり。
7 除酵日卽逾越節の羔を宰るべき日至れり。
8 イイススはペトル及びイオアンを遣して曰へり、往きて、我等が食せん爲に逾越節筵を備へよ。
9 彼等曰へり、何處に之を備へんことを欲するか。
10 彼は之に謂へり、視よ、爾等が城に入る時、水を盛れる瓶を攜ふる人爾等に遇はん、之に隨ひて、其入る所の家に入りて、
11 家の主に語げよ、師爾に謂ふ、我が門徒と偕に逾越節筵を食すべき室は何處に在るかと。
12 彼爾等に敷き飾りたる大なる楼を示さん、彼處に備へよ。
13 彼等往きて、其言ひし若き事に遇ひて、逾越節筵を備へたり。
14 時至りて、イイスス席坐し、十二使徒彼と偕にせり。
15 彼等に謂へり、我苦を受くる先に、此の逾越節筵を爾等と偕に食せんことを甚望めり。
16 蓋我爾等に語ぐ、我復之を食せずして、其神の國に成るに至らん。
17 乃爵を執りて、感謝して曰へり、此を取りて、互に分て。
18 蓋我爾等に語ぐ、我復葡萄の實より飮まずして、神の國の臨むに至らん。
19 又餅を取り、感謝して之を擘き、彼等に與へて曰へり、是我の體、爾等の爲に付さるる者なり、爾等此を行ひて、我を記念せよ。
20 同じく晩餐の後に爵を執りて曰へり、此の爵は新約、爾等の爲に流さるる我が血を以て立つる者なり。
21 視よ、我を賣る者の手は我と偕に席上に在り。
22 人の子は逝く、豫め定められしが如し、惟彼を賣る者は禍なる哉。
23 彼等互に誰か此を爲さんとするを問へり。
24 又彼等の中に、孰か大なると互に爭ふことあり。
25 彼は之に謂へり、諸王は其諸民を主り、民の上に權を執る者は恩主と稱へらる。
26 然れども爾等は斯くある可からず、乃爾等の中に大なる者は、小き者の如く、首たる者は、役はるる者の如くなるべし。
27 蓋孰か大なる、席坐する者か、役はるる者か、席坐する者に非ずや、然れども我は爾等の中に在りて役はるる者の如し。
28 爾等我が患難の中に於て恒に我と偕にせり、
29 我も亦爾等に國を遺し予ふ、我が父の我に遺し予へしが如し、
30 爾等が我が國に於て、我が席に食飮し、且位に坐して、イズライリの十二支派を審判せん爲なり。
31 主又曰へり、シモンよ、シモンよ、視よ、サタナ爾等を麥の如く簸はんことを求めたり。
32 然れども我爾の爲に、爾の信の盡きざらんことを禱れり、而して爾後に轉じて、爾の兄弟を堅めよ。
33 對へて曰へり、主よ、我爾と偕に獄にも死にも往かんことを備へたり。
34 彼曰へり、ペトル我爾に語ぐ、今日鶏の鳴かざる先に、爾三次我を諱みて、識らずと言はん。
35 又彼等に謂へり、我が爾等を金嚢も、行袋も、履もなくして遣しし時、爾等缺けたることありしか。曰く、無かりき。
36 彼曰へり、然れども今は金嚢ある者は、之を取れ、行袋も亦然り、劔なき者は、衣を賣りて之を買へ。
37 蓋我爾等に語ぐ、錄して、罪犯者と偕に算へられたりと云へることも、我に於て應ふべし、蓋我を指して錄されし事は終あり。
38 彼等曰へり、主よ、視よ、此に二の劔あり。彼曰へり、足れり。
39 乃出でて、例の如く、橄欖山に往けり、其門徒も彼に從へり。
40 其處に至りて、彼等に謂へり、祈禱して誘惑に入るを免れよ。
41 自ら石の投げらるる程に彼等を離れ、膝を屈めて、禱りて
42 曰へり、父よ、噫若し爾此の爵をして我を過ぎしめんことを肯じたらんには。然れども我の旨成らずして、爾の旨成るべし。 43 天使は天より現れて、彼を堅めたり。 44 彼痛く哀みて、禱ること愈切なり、其汗は血の滴の如く地に下れり。 45 祈禱より起きて、門徒に來り、其憂に依りて寝ぬるを見て、 46 彼等に謂へり、何ぞ寝ぬる、起きて祈禱せよ、誘惑に入らざらん爲なり。 47 彼が尚言ふ時、見よ、民至り、十二の一、イウダと名づくる者、之に先だちて行き、イイススに就きて接吻せり。蓋此の號を彼等に與へたり、我が接吻せん者は、卽斯の人なりと。 48 イイスス之に謂へり、イウダよ、爾接吻を以て人の子を付すか。 49 彼と偕に在りし者、事の及ばんとするを見て、彼に謂へり、主よ、我等劔を以て擊たんか。 50 其中の一人は司祭長の僕を擊ちて、其右の耳を削げり。 51 イイスス答へて曰へり、此に之に至りて止めよ、乃其耳に捫りて、之を醫せり。 52 イイススは己に向ひ來れる司祭諸長と殿の庶司と長老等とに謂へり、爾等は盗賊に向ふ如く、劔と棒とを持ちて、我を捕らへん爲に出でたり。 53 我日々爾等と偕に殿に在りしに、爾等我に手を措かざりき、然れども今は爾等の時及び黒暗の勢なり。 54 旣に彼を執へて、曳きて司祭長の家に至れり。ペトル遠く隨へり。 55 人人が中庭の内に火を燃きて、共に坐せし時、ペトルも其中に坐したり。 56 一人の婢彼が火に向ひて坐せるを見、之に目を注ぎて曰へり、此の人も彼と偕にありき。 57 然れども彼諱みて曰へり、女よ、我彼を識らず。 58 少頃ありて、他の者彼を見て曰へり、爾も彼等の一人なり。ペトル曰へり、人よ、然らず。 59 約一時を過ぎて、又一人言を力めて曰へり、實に此の人も彼と偕にありき、蓋是れガリレヤの人なり。 60 然れどもペトル曰へり、人よ、我爾が言ふ所を識らず。尚之を言ふ時、忽鶏鳴けり。 61 主身を轉じて、ペトルに目を注ぎたれば、ペトル主の彼に、鶏の鳴かざる先に、爾三次我を諱まんと、云ひし言を憶ひ起して、 62 外に出でて、痛く哭けり。 63 イイススを執れる者戯れて、彼を扑てり。 64 其目を蔽ひて、其面を批ち、問ひて曰へり、預言せよ、爾を擊ちし者は誰ぞ。 65 其他多くの事を謂ひて、彼を誚れり。 66 平旦に及びて、民の長老等と司祭諸長と學士等と集りて、彼を其公會に曳きて
67 曰へり、爾はハリストスなるか、我等に告げよ。彼曰へり、我若し爾等に告げば、爾等信ぜざらん、 68 若し爾等に問はば、爾等應へざらん、又我を釋さざらん。 69 今より後人の子は神の大能の右に坐せん。 70 僉曰へり、然らば爾は神の子なるか。彼答へて曰へり、爾等言ふ、我は是なり。 71 彼等曰へり、何ぞ復證を求めん、蓋我等自ら其口より聞けり。
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42 曰へり、父よ、噫若し爾此の爵をして我を過ぎしめんことを肯じたらんには。然れども我の旨成らずして、爾の旨成るべし。 43 天使は天より現れて、彼を堅めたり。 44 彼痛く哀みて、禱ること愈切なり、其汗は血の滴の如く地に下れり。 45 祈禱より起きて、門徒に來り、其憂に依りて寝ぬるを見て、 46 彼等に謂へり、何ぞ寝ぬる、起きて祈禱せよ、誘惑に入らざらん爲なり。 47 彼が尚言ふ時、見よ、民至り、十二の一、イウダと名づくる者、之に先だちて行き、イイススに就きて接吻せり。蓋此の號を彼等に與へたり、我が接吻せん者は、卽斯の人なりと。 48 イイスス之に謂へり、イウダよ、爾接吻を以て人の子を付すか。 49 彼と偕に在りし者、事の及ばんとするを見て、彼に謂へり、主よ、我等劔を以て擊たんか。 50 其中の一人は司祭長の僕を擊ちて、其右の耳を削げり。 51 イイスス答へて曰へり、此に之に至りて止めよ、乃其耳に捫りて、之を醫せり。 52 イイススは己に向ひ來れる司祭諸長と殿の庶司と長老等とに謂へり、爾等は盗賊に向ふ如く、劔と棒とを持ちて、我を捕らへん爲に出でたり。 53 我日々爾等と偕に殿に在りしに、爾等我に手を措かざりき、然れども今は爾等の時及び黒暗の勢なり。 54 旣に彼を執へて、曳きて司祭長の家に至れり。ペトル遠く隨へり。 55 人人が中庭の内に火を燃きて、共に坐せし時、ペトルも其中に坐したり。 56 一人の婢彼が火に向ひて坐せるを見、之に目を注ぎて曰へり、此の人も彼と偕にありき。 57 然れども彼諱みて曰へり、女よ、我彼を識らず。 58 少頃ありて、他の者彼を見て曰へり、爾も彼等の一人なり。ペトル曰へり、人よ、然らず。 59 約一時を過ぎて、又一人言を力めて曰へり、實に此の人も彼と偕にありき、蓋是れガリレヤの人なり。 60 然れどもペトル曰へり、人よ、我爾が言ふ所を識らず。尚之を言ふ時、忽鶏鳴けり。 61 主身を轉じて、ペトルに目を注ぎたれば、ペトル主の彼に、鶏の鳴かざる先に、爾三次我を諱まんと、云ひし言を憶ひ起して、 62 外に出でて、痛く哭けり。 63 イイススを執れる者戯れて、彼を扑てり。 64 其目を蔽ひて、其面を批ち、問ひて曰へり、預言せよ、爾を擊ちし者は誰ぞ。 65 其他多くの事を謂ひて、彼を誚れり。 66 平旦に及びて、民の長老等と司祭諸長と學士等と集りて、彼を其公會に曳きて
67 曰へり、爾はハリストスなるか、我等に告げよ。彼曰へり、我若し爾等に告げば、爾等信ぜざらん、 68 若し爾等に問はば、爾等應へざらん、又我を釋さざらん。 69 今より後人の子は神の大能の右に坐せん。 70 僉曰へり、然らば爾は神の子なるか。彼答へて曰へり、爾等言ふ、我は是なり。 71 彼等曰へり、何ぞ復證を求めん、蓋我等自ら其口より聞けり。