2023年01月20日 13:36
第23章 (ルカ福音)
1 衆皆起ちて、彼をピラトの前に曳き、
2 彼を訴へて曰へり、我等は此の人が我が民を惑はし、稅をケサリに納むるを禁じ、自らハリストス王と稱ふるを見たり。
3 ピラト彼に問ひて曰へり、爾はイウデヤ人の王なるか。彼答へて曰へり、爾言ふ。
4 ピラト司祭諸長及び民に謂へり、我此の人に一も罪あるを見ず。
5 然れども彼等益奮ひて曰へり、彼民を乱し、全イウデヤに教へて、ガリレヤより始め、此の處に至れり。
6 ピラトはガリレヤと聞きて、此の人はガリレヤ人なるかと問ひ、
7 旣にして其イロドの權下に属するを知りて、彼を當時同じくイエルサリムに在りしイロドに遣せり。
8 イロド イイススを見て、甚喜べり、蓋久しく彼を見んと欲せり、彼の事を多く聞き、且彼に由りて行はるる休徴を見ん事を望みたればなり。
9 故に多くの言を以て彼に問ひたれども、彼は何をも答へざりき。
10 司祭諸長と學士等と立ちて、彼を訴ふること甚切なり。
11 然れどもイロドは其士卒と共に、彼を侮り、且嘲弄して、彼に鮮なる衣を衣せて、復彼をピラトに遣せり。
12 是の日に於て、ピラト及びイロド互に親しくなれり、蓋先には相讎たりき。
13 ピラトは司祭諸長、有司等、及び民を呼び集めて、
14 彼等に謂へり、爾等は此の人を以て、民を惑はす者と爲して、我に曳き至れり、視よ、我爾等が訴ふる所を以て爾等の前に審べて、此の人に一も罪あるを見ざりき。
15 イロドも亦然り、蓋我之を彼に遣したれども、其中に一も死に當たる事を得ざりき。
16 故に我笞うちて、之を釋さん。
17 蓋節期の爲に一の囚を彼等に釋すべき事ありき。
18 然れども民皆號びて曰へり、此を去れ、ワラウワを我等に釋せ。
19 此の人は城の中に乱を作し、人を殺ししに因りて、獄に下されたり。
20 ピラトはイイススを釋さんと欲して、復聲を揚げたれども、
21 彼等呼びて曰へり、彼を十字架に釘せよ、十字架に釘せよ。
22 ピラト第三次曰へり、彼は何の惡を行ひしか、我一も其中に死に當たる事と見ざりき、故に笞うちて彼を釋さん。
23 然れども彼等益聲を厲まして、彼を十字架に釘せんことを求めたりしが、彼等と司祭諸長との聲は勝てり。
24 ピラト遂に其求めの如く擬めて、
25 乱と殺人との爲に獄に下されたる人、彼等が求めし者を釋し、イイススを付して、彼等の意旨に任せたり。
26 彼を曳く往く時、或キリネヤの人シモンが田より來り過ぐるを執へ、之に十字架を負はせて、イイススに從はしめたり。
27 衆くの民は彼に隨ひ、又多くの婦ありて、彼の爲に哭き哀めり。
28 イイスス彼等を顧みて曰へり、イエルサリムの女よ、我の爲に哭く勿れ、己及び爾等の子の爲に哭け。
29 蓋視よ、日至りて、人人曰はん、妊まざる者、未だ產まざる胎、未だ哺はせざる乳は福なりと。
30 其時人人山に對ひて、我等の上に倒れよ、陵に對ひて、我等を掩へと曰はん。
31 蓋若し青き木に斯く爲さば、枯木は如何にせられん。
32 イイススと偕に亦二人の犯罪者を死に處せん爲に曳けり。
33 髑髏と名づくる處に來りて、彼處に彼及び二の犯罪者を十字架に釘せり、一は其右、一は左なり。
34 イイスス曰へり、父よ、彼等を赦せ、蓋彼等は爲す所を知らず。人鬮を取りて、其衣を分てり。
35 民立ちて見たり、有司等も衆と與に嘲りて曰へり、彼は他人を救へり、若し彼ハリストス、神の選びたる者ならば、己を救ふべし。
36 兵卒も亦彼に戯れ、近づきて、醋を與へて
37 曰へり、爾若しイウデヤ人の王ならば、己を救へ。 38 彼の上にエルリン、ロマ、エウレイの文字を以て書したる標あり、曰く、是れイウデヤ人の王なりと。 39 懸けられたる犯罪者の一人彼を誚りて曰へり、爾若しハリストスならば、己と我等とを救へ。 40 他の一人之を戒めて曰へり、爾豈神を畏れざるか、蓋爾も同じく定罪せられてあり、 41 惟我等に在りては當然なり、我が行に稱へる事を受くればなり、然れども彼は一も不善を行はざりき。 42 乃イイススに對ひて曰へり、主よ、爾の國に來らん時、我を記念せよ。 43 イイスス彼に謂へり、我誠に爾に語ぐ、爾今日我と偕に樂園に在らん。 44 時約六時なり、晦冥は全地を蔽ひて第九時に至れり。 45 日は晦み、殿の幔は中より裂けたり。 46 イイスス大聲に呼びて曰へり、父よ、我が神を爾の手に託す。之を言ひて、気絶えたり。 47 百夫長成りし事を見て、神を讚榮して曰へり、此の人は誠に義人なり。 48 之を觀ん爲に、聚りたる衆民は、成りし事を見て、膺を拊ちて返れり。 49 彼の相識及びガリレヤより彼に從ひし婦等、皆遠く立ちて、此等の事を見たり。 50 時にイオシフと名づくる人、議士にして、善且義なる者、 51 彼等の謀と所爲とに黨せず、イウデヤの邑アリマフェヤに属し、自らも神の國を俟てる者は、 52 ピラトに就きて、イイススの屍を求めたり。 53 旣に之を下して、布に裏み、盤に鑿ちたる、未だ人の葬られざる墓に置きたり。 54 是の日は備節日にして、安息日已に邇づけり。 55 ガリレヤよりイイススと偕に來りし婦等後に隨ひて、墓及び如何に彼の屍を置きたるを觀たり。 56 歸りて後、香料と香膏とを備へ、誡に遵ひて安息日を息みたり。
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37 曰へり、爾若しイウデヤ人の王ならば、己を救へ。 38 彼の上にエルリン、ロマ、エウレイの文字を以て書したる標あり、曰く、是れイウデヤ人の王なりと。 39 懸けられたる犯罪者の一人彼を誚りて曰へり、爾若しハリストスならば、己と我等とを救へ。 40 他の一人之を戒めて曰へり、爾豈神を畏れざるか、蓋爾も同じく定罪せられてあり、 41 惟我等に在りては當然なり、我が行に稱へる事を受くればなり、然れども彼は一も不善を行はざりき。 42 乃イイススに對ひて曰へり、主よ、爾の國に來らん時、我を記念せよ。 43 イイスス彼に謂へり、我誠に爾に語ぐ、爾今日我と偕に樂園に在らん。 44 時約六時なり、晦冥は全地を蔽ひて第九時に至れり。 45 日は晦み、殿の幔は中より裂けたり。 46 イイスス大聲に呼びて曰へり、父よ、我が神を爾の手に託す。之を言ひて、気絶えたり。 47 百夫長成りし事を見て、神を讚榮して曰へり、此の人は誠に義人なり。 48 之を觀ん爲に、聚りたる衆民は、成りし事を見て、膺を拊ちて返れり。 49 彼の相識及びガリレヤより彼に從ひし婦等、皆遠く立ちて、此等の事を見たり。 50 時にイオシフと名づくる人、議士にして、善且義なる者、 51 彼等の謀と所爲とに黨せず、イウデヤの邑アリマフェヤに属し、自らも神の國を俟てる者は、 52 ピラトに就きて、イイススの屍を求めたり。 53 旣に之を下して、布に裏み、盤に鑿ちたる、未だ人の葬られざる墓に置きたり。 54 是の日は備節日にして、安息日已に邇づけり。 55 ガリレヤよりイイススと偕に來りし婦等後に隨ひて、墓及び如何に彼の屍を置きたるを觀たり。 56 歸りて後、香料と香膏とを備へ、誡に遵ひて安息日を息みたり。