2023年01月21日 13:42
第6章 (イオアン福音)
1 厥後イイスス ガリレヤの海、卽ティワェリアダの海の彼の岸に濟りしに、
2 衆くの民彼に隨へり、彼が病者に行ひし奇蹟を見たればなり。
3 イイスス山に登りて、彼處に門徒と偕に坐せり。
4 時にイウデヤ人の節筵なる逾越節近づけり。
5 イイスス目を擧げて、衆くの民の彼に來るを見て、フィリップに謂ふ、我等何處より餅を市ひて、彼等に食はしめんか。
6 之に言ひしは、彼を試みん爲なり、蓋自ら何を行はんとするを知れり。
7 フィリップ答へて曰へり、銀二百を以て餅を市ふとも、彼等の爲に各少しづつを受くるに足らず。
8 其門徒の一、シモンペトルの兄弟アンドレイ、彼に謂ふ、
9 此に一の童子ありて、𪎌麥の餅五と小き魚二とを有てり、然れども是れ何をか此の多數に爲さん。
10 イイスス曰へり、人人を坐せしめよ。其處に多くの草あり。是に於て人人席坐せり、數約五千なり。
11 イイスス餅を取り、感謝して、門徒に分ち與へ、門徒は席坐する者に與へたり、魚も亦然り、乃欲する所に從へり。
12 衆旣に飽きて、彼門徒に謂ふ、餘りたる屑を聚めて、廢る所毋らしめよ。
13 乃聚めて、食ひし者の餘したる五の𪎌麥の餅の屑を十二の筐に盈てたり。
14 人人イイススの行ひし奇蹟を見て曰へり、是れ誠に世に來るべき預言者なり。
15 イイススは彼等が來り、急に彼を執りて、王と爲さんと欲するを知りて、復獨山に遁れたり。
16 日の暮るる時、其門徒下りて海に至り、
17 舟に登りて、海の彼の岸なるカペルナウムに往けり。旣に昏くなりて、イイスス彼等に來らず。
18 風大に吹きて、海は浪たてり。
19 漕ぎ行くこと約二十五或は三十小里にして、彼等はイイススの海を履みて、舟に近づくを見て、懼れたり。
20 彼は之に謂ふ、是れ我なり、懼るる勿れ。
21 門徒彼を舟に接けんと欲せり、舟は直に往く所の地に着きたり。
22 明日、海の彼の岸に立てる民は、彼處に門徒の登りたる舟の外に他の舟なく、且イイススは門徒と偕に舟に登らずして、門徒のみ往きしを見たり。
23 時に他の舟はティワェリアダより主の感謝して後餅を食ひし所の近く來れり。
24 是に於て民はイイススの此に在らず、其門徒も在らざるを見て、己も亦舟に登り、イイススを尋ねてカペルナウムに來れり。
25 海の彼の岸に於て彼に遇ひて曰へり、夫子、爾は何の時にか此に來れる。
26 イイスス彼等に答へて曰へり、我誠に誠に爾等語ぐ、爾等の我を尋ぬるは、奇蹟を見し故に非ず、乃餅を食ひて飽きたる故なり。
27 朽つる糧の爲に勞する勿れ、乃永遠の生命に存する糧、人の子が爾等に與へんとする者の爲に勞せよ、蓋父なる神は彼を印證せり。
28 彼等曰へり、我等何を行ひて、神の事を爲さんか。
29 イイスス答へて曰へり、神の事とは、爾等が彼の遣しし者を信ずること、是なり。
30 彼等曰へり、爾何の休徴を行ひて、我等をして之を見て、爾を信ぜしめんか、爾何を爲すか。
31 我等の先祖は野に在りてマンナを食へり、錄されしが如し、天より彼等に餅を與へて食はしめたりと。
32 イイスス彼等に謂へり、我誠に誠に爾等に語ぐ、モイセイが爾に餅を天より與へしに非ず、乃我が父は爾等に眞の餅を天より與ふ。
33 蓋神の餅は天より降りて、世に生命を與ふる者なり。
34 彼等曰へり、主よ、恒に我等に斯の餅を與へよ。
35 イイスス彼等に謂へり、我は生命の餅なり、我に來る者は飢ゑず、我を信ずる者は永く渇かざらん。
36 然れども我爾等に嘗て、爾等我を見たれども信ぜずと言へり。
37 凡そ父の我に與ふる者は、我に來らん、我に來る者は、我之を外に逐はざらん。
38 蓋我が天より降りしは、己の旨を行はん爲に非ず、乃我を遣しし父の旨を行はん爲なり。
39 我は遣しし父の旨は、卽彼が我に與へし者の中、我其一をも亡はずして、末の日に於て悉く之を復活せしめんとするに在り。
40 我を遣しし者の旨は卽凡そ子を見て之を信ずる者は、永遠の生命を有ち、我末の日に於て彼を復活せしめんとするに在り。
41 時にイウデヤ人、其我は天より降りし餅なりと言ひしに因りて、彼を怨みて
42 云へり、此れイオシフの子イイスス、我等が其父と母とを識れる者に非ずや、如何にして彼は我天より降れりと言ふか。 43 イイスス彼等に答へて曰へり、爾等相共に怨言する勿れ。 44 我を遣しし父之を引かざれば、人我に來る能はず、我に來る者は我末の日に於て之を復活せしめん。 45 諸預言者に錄せるあり、彼等皆神に教へられんと、凡そ父に聽きて學びし者は我に來る。 46 此れ人曾て父を見たりと曰ふに非ず、惟神よりする者は彼父を見たるなり。 47 我誠に誠に爾等に語ぐ、我を信じる者は永遠の生命を有つ。 48 我は生命の餅なり。 49 爾等の先祖は野に在りてマンナを食ひたれども、死せり。 50 夫れ天より降る餅は、乃之を食ふ者死せざるを致さん。 51 我は天より降りし生ける餅なり、此の餅を食ふ者は世世に生きん。我が與へんとする餅は、卽我の體なり、我が世の生命の爲に與へんとする者なり。 52 時にイウデヤ人互に論じて曰へり、彼如何ぞ我等に其體を與へて、食はしむるを得ん。 53 イイスス彼等に謂へり、我誠に誠に爾等に語ぐ、爾等若し人の子の體を食はず、其血を飮まずば、己の衷に生命を有たざらん。 54 我が體を食ひ、我が血を飮む者は、永遠の生命を有つ、我末の日に於て彼を復活せしめん。 55 蓋我が體は眞に糧なり、我が血は眞に飮物なり。 56 我が體を食ひ、我が血を飮む者は、我に居り、我も彼に居るなり。 57 生くる父我を遣し、彼父に由りて生くるが如く、我を食ふ者も我に由りて生きん。 58 斯れは乃天より降りし餅なり。爾等の先祖がマンナを食ひて、死せし如きに非ず、此の餅を食ふ者は世世に生きん。 59 此等の事は、彼カペルナウムに教ふる時、會堂に於て言へり。 60 其門徒の中多くの者之を聞きて曰へり、難い哉斯の言、誰か之を聽くを得ん。 61 イイスス己の衷に其門徒が怨言するを知りて、彼等に謂へり、此れ爾を惑はすか。 62 爾等若し人の子が曩に在りし所に升るを見ば如何。 63 神は生かす者なり、肉は益なし。我が爾等に語りし言は神゜なり、生命なり。 64 然れども爾等の中に信ぜざる者あり。蓋イイススは初より信ぜざる者の誰たる、及び彼を賣らんとする者の誰たるを知れり。 65 又曰へり、故に我曾て爾等に我が父より之に與へらるるに非ざれば、人我に來る能はずと言へり。 66 是より其門徒多く返りて、復彼と偕に往かざりき。 67 イイスス十二徒は謂へり、爾等も去らんと欲するか。 68 シモン ペトル彼に答へて曰へり、主よ、我等誰にか往かん、爾は永遠の生命の言を有つ。 69 我等は爾がハリストス、活ける神の子たるを信じ、且知れり。 70 イイスス彼等に答へて曰へり、我爾等十二を選びしに非ずや、而して爾等の中一人は惡魔なり。 71 是れ彼はシモンの子イウダイスカリオトを指して言へり、蓋此の人は十二の一にして、彼を賣らんとする者なり。
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42 云へり、此れイオシフの子イイスス、我等が其父と母とを識れる者に非ずや、如何にして彼は我天より降れりと言ふか。 43 イイスス彼等に答へて曰へり、爾等相共に怨言する勿れ。 44 我を遣しし父之を引かざれば、人我に來る能はず、我に來る者は我末の日に於て之を復活せしめん。 45 諸預言者に錄せるあり、彼等皆神に教へられんと、凡そ父に聽きて學びし者は我に來る。 46 此れ人曾て父を見たりと曰ふに非ず、惟神よりする者は彼父を見たるなり。 47 我誠に誠に爾等に語ぐ、我を信じる者は永遠の生命を有つ。 48 我は生命の餅なり。 49 爾等の先祖は野に在りてマンナを食ひたれども、死せり。 50 夫れ天より降る餅は、乃之を食ふ者死せざるを致さん。 51 我は天より降りし生ける餅なり、此の餅を食ふ者は世世に生きん。我が與へんとする餅は、卽我の體なり、我が世の生命の爲に與へんとする者なり。 52 時にイウデヤ人互に論じて曰へり、彼如何ぞ我等に其體を與へて、食はしむるを得ん。 53 イイスス彼等に謂へり、我誠に誠に爾等に語ぐ、爾等若し人の子の體を食はず、其血を飮まずば、己の衷に生命を有たざらん。 54 我が體を食ひ、我が血を飮む者は、永遠の生命を有つ、我末の日に於て彼を復活せしめん。 55 蓋我が體は眞に糧なり、我が血は眞に飮物なり。 56 我が體を食ひ、我が血を飮む者は、我に居り、我も彼に居るなり。 57 生くる父我を遣し、彼父に由りて生くるが如く、我を食ふ者も我に由りて生きん。 58 斯れは乃天より降りし餅なり。爾等の先祖がマンナを食ひて、死せし如きに非ず、此の餅を食ふ者は世世に生きん。 59 此等の事は、彼カペルナウムに教ふる時、會堂に於て言へり。 60 其門徒の中多くの者之を聞きて曰へり、難い哉斯の言、誰か之を聽くを得ん。 61 イイスス己の衷に其門徒が怨言するを知りて、彼等に謂へり、此れ爾を惑はすか。 62 爾等若し人の子が曩に在りし所に升るを見ば如何。 63 神は生かす者なり、肉は益なし。我が爾等に語りし言は神゜なり、生命なり。 64 然れども爾等の中に信ぜざる者あり。蓋イイススは初より信ぜざる者の誰たる、及び彼を賣らんとする者の誰たるを知れり。 65 又曰へり、故に我曾て爾等に我が父より之に與へらるるに非ざれば、人我に來る能はずと言へり。 66 是より其門徒多く返りて、復彼と偕に往かざりき。 67 イイスス十二徒は謂へり、爾等も去らんと欲するか。 68 シモン ペトル彼に答へて曰へり、主よ、我等誰にか往かん、爾は永遠の生命の言を有つ。 69 我等は爾がハリストス、活ける神の子たるを信じ、且知れり。 70 イイスス彼等に答へて曰へり、我爾等十二を選びしに非ずや、而して爾等の中一人は惡魔なり。 71 是れ彼はシモンの子イウダイスカリオトを指して言へり、蓋此の人は十二の一にして、彼を賣らんとする者なり。