2023年01月22日 13:13
第9章 (イオアン福音)
1 イイスス行く時、生れながら瞽なる人を見たり。
2 門徒彼に問ひて曰へり、夫子斯の人の瞽にして生れしは、是れ孰か罪を獲たる、彼か、抑其親か。
3 イイスス答へて曰へり、彼も罪を獲ず、其親も亦然り、乃彼に於て神の作爲の顯れん爲なり。
4 我尚昼なる間、我を遣しし者の作爲を爲すべし、夜來る、其時は誰も爲す能はず。
5 我世に在る時は、世の光なり。
6 之を言ひて、地に唾し、唾を以て泥を成し、其泥を瞽の目に塗りて、
7 之に謂へり、往きて、シロアムの池に洗へ。(シロアム、譯すれば、遣されし者なり。)彼往きて洗ひ、見るを得て來れり。
8 其隣の人及び先に彼が瞽なるを見し者曰へり、此れ坐して乞ひし者に非ずや。
9 或曰へり、是は彼なり、或曰へり、彼に似たる者なり、彼は曰へり、是は我なり。
10 彼等之に謂へり、爾の目は如何にして啓けたるか。
11 彼答へて曰へり、イイススと名づくる人、泥を成して、我が目に塗りて、我に謂へり、シロアムの池に往きて洗へと、我往きて洗ひて見るを得たり。
12 彼等曰へり、其人安に在るか。曰く、我知らず。
13 此の瞽たりし者をファリセイ等に攜へ至る。
14 イイススが泥を成して、其目を啓きし日は、安息日なり。
15 ファリセイ等も亦其如何に見るを得たるを問ひたれば、答へて曰へり、泥を我の目に置き、我洗ひて見るを得たり。
16 ファリセイ等の中の或者曰へり、斯の人は神よりするに非ず、安息日を守らざればなり。他の者曰へり、罪ある人は安ぞ是くの如き奇蹟を行ふを得ん。是に於て彼等の中に紛論ありき。
17 復瞽者に謂ふ、爾は彼の事に於て何を言はんか。蓋彼は爾の目を啓きたり。曰く、是れ預言者なり。
18 イウデヤ人は其素瞽にして、後に見るを得たるを信ぜずして、此の見るを得たる者の二親を呼び至らしむるを待ちて、
19 之に問ひて曰へり、此れ爾等の子、爾等が瞽にして生れたりと曰ふ者なるか、今如何にして見るか。
20 其親彼等に答へて曰へり、此れ我が子なること、亦其瞽にして生れたることは、我等之を知る、
21 然れども今如何にして見るか、我等之を知らず、或は誰か其目を啓きしを我等知らず。彼は年長ぜり、彼に問ふべし、自ら己の事を語らん。
22 親の斯く言ひしは、イウデヤ人を懼れしに因りてなり、蓋イウデヤ人已に相謀りて、若し人彼をハリストスと認めば、會堂より黜けらるるべしと定めたり。
23 是の故に其親は、彼は年長ぜり、彼に問ふべしと曰へり。
24 是に於て瞽たりし人を再呼びて、之に謂へり、光榮を神に歸せよ、我等は斯の人の罪人たるを知る。
25 彼答へて曰へり、其罪人たりや否や、我之を知らず、惟一の事を知る、卽ち我本瞽たりしに、今は見る。
26 又之に謂へり、彼は何を爾に爲ししか、如何にして爾の目を啓きし。
27 答へて曰へり、我已に爾等に言へり、而して爾等聽かざりき、何ぞ復聞かんと欲する、豈爾等も彼の門徒と爲らんと欲するか。
28 彼等之を詬りて曰へり、爾は其門徒、我等はモイセイの門徒なり。
29 我等は神がモイセイに語りしを知る、然れども斯の人の奚れよりするを知らず。
30 其人答へて彼等に謂へり、此は奇しき事なり、爾等は彼の奚よりするを知らず、然るに彼は我が目を啓きたり。
31 我等は神が罪人に聽かざるを知る、然れども若し人神を敬ひ、其旨を行はば、斯の人に聽く。
32 世の始より以來、未だ人の生ながら瞽なる者の目を啓きしを聞かざりき。
33 若し、斯の人神よりせしに非ずば、何事をも行ふを得ざりしならん。
34 彼等之に答へて曰へり、爾は全く罪の中に生れたり、而して爾我等を教ふるか。遂に彼を外に逐ひ出せり。
35 イイススは其彼を逐ひ出だししを聞きて、彼に遇ひて曰へり、爾神の子を信ずるか。
36 彼答へて曰へり、主よ、是れ誰なるか、我が彼を信ぜん爲なり。
37 イイスス之に謂へり、爾已に彼を見たり、且爾と語る者は是なり。
38 彼曰へり、主よ、我信ず、乃彼を拜せり。
39 イイスス曰へり、我審判の爲に世に來れり、見ざる者は見、見る者は瞽と爲らん爲なり。
40 彼と偕に在りしファリセイ等の中の或者之を聞きて、彼に謂へり、豈我等も瞽なるか。
41 イイスス彼等に謂へり、爾等若し瞽ならば、罪なからん、然れども今爾等は我等見ると言ふに因りて、爾等の罪尚存す。
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