2023年01月22日 13:16
第11章 (イオアン福音)
1 病める者あり、ラザリと云ふ、ワィファニヤ、卽マリヤ及び其姉妹マルファの村の人なり。
2 マリヤは卽香膏を主に膏り、髪を以て其足を拭ひし者して、病めるラザリは彼の兄弟なり。
3 姉妹はイイススに人を遣して曰へり、主よ、爾の愛する者は病めり。
4 イイスス之を聞きて曰へり、此の病は死を致さず、乃神の光榮を致さん、神の子が之に由りて榮せられん爲なり。
5 イイススはマルファ及び其姉妹とラザリとを愛せり。
6 旣に彼病めりと聞きて、仍其在りし處に留れること二日なり。
7 其後門徒に謂ふ、我等復イウデヤに往かん。
8 門徒彼に謂ふ、夫子、イウデヤ人近ごろ石を以て爾を擊たんと謀れり、爾復彼處に往くか。
9 イイスス答へて曰へり、一日には十二時あるに非ずや、人若し昼に行かば蹶かず、此の世の光を見るに因りてなり。
10 人若し世に行かば、蹶く彼に光なきに因りてなり。
11 此を言ひし後、彼等に謂ふ、我等の友ラザリ寝ねたり、然れども我往きて、彼を醒まさん。
12 門徒曰へり、主よ、彼若し寝ねたらば、愈えん。
13 イイスス彼の死の事を言ひしに、彼等其寝ねて臥める事を言ふと意へり。
14 其時イイスス明に彼等に謂へり、ラザリは死せり。
15 而して我は、我が彼處に在らざりしを、爾等の爲に喜ぶ、爾等を信ぜしめん爲なり、然れども彼に往かん。
16 フォマ又ディディムと名づくる者、同門徒に謂へり、我等も往きて、彼と偕に死なん。
17 イイスス來りて、ラザリの已に墓に葬られ、四日なるに遇へり。
18 ワィファニヤはイエルサリムに近し、相去ること約十五小里なり。
19 イウデヤ人多くマルファ及びマリヤに來れり、其兄弟の事に縁りて彼等を慰めん爲なり。
20 マルファはイイススの來るを聞きて往きて、彼を迎へたり、仍マリヤは家に坐せり。
21 マルファはイイススに謂へり、主よ、爾若し此に在りしならば、我が兄弟は死せざりしならん。
22 然れども我知る、今も爾が凡そ神に求めん者は、神爾に賜はん。
23 イイスス之に謂ふ、爾の兄弟は復活せん。
24 マルファ曰く、我は末の日の復活の時に彼が復活せんことを知る。
25 イイスス之に謂へり、我は復活なり、生命なり、我を信ずる者は死すと雖生きん。
26 凡そ生きて我を信ずる者は、世世に死せざらん。爾之を信ずるか。
27 曰く、主よ、然り、我は爾が世に來るべきハリストス、神の子たるを信ぜり。
28 之を言ひて後、往きて、潜に其姉妹マリヤを呼びて曰へり、師來りて、爾を呼ぶ。
29 マリヤ此を聞き、亟に起ちて、彼に往けり。
30 時にイイスス未だ村に入らずして、仍マルファが彼を迎へし所にあり。
31 マリヤと偕に家に在りて、之を慰めしイウデヤ人は、其亟に起ちて出でしを見て、之に隨へり、曰ふ、彼は墓に往きて、彼處に哭かんと。
32 マリヤはイイススの在りし所に來り、彼を見て、其足下に俯伏して曰へり、主よ、爾若し此に在りしならば、我が兄弟は死せざりしならん。
33 イイスス彼が哭き、又彼と偕に來りしイウデヤ人の哭くを見て、心に哀みて、自ら惻めり、
34 曰く、爾等何處に彼を置きしか。彼に謂ふ、主よ、來りて觀よ。
35 イイスス泣けり。
36 イウデヤ人曰へり、觀よ、其彼を愛せしこと如何ばかりぞ。
37 其中の或者曰へり、瞽者の目を啓きたる此の人は、彼を死せざらしむる能はざりしか。
38 イイスス復衷に哀みて、墓に來る。之洞にして、其上に石を置けるあり。
39 イイスス曰く、石を去れ。死者の姉妹マルファ彼に謂ふ、主よ、已に臭し、蓋彼死して四日なり。
40 イイスス之に謂ふ、我爾に、若し信ぜば、神の光榮を見んと、云ひしに非ずや。
41 是に於て彼等石を死者の置きたる所より去れり。イイスス目を上に擧げて曰へり、父よ、爾が我に聽きしを、我爾に感謝す。
42 我は爾が常に我に聽くを知れり、然れども環り立てる民の爲に之を言へり、彼等の爾が我を遣ししことを信ぜん爲なり。
43 之を言ひて、大なる聲を以て呼べり、ラザリよ、外に出でよ。
44 死せし者出でたり、手足は布に纏かれ、面は巾に裏まれたり。イイスス彼等に謂ふ、之を釋きて行かしめよ。
45 其時マリヤに來りてイイススの行ひし事を見たるイウデヤ人の中の多くの者彼を信ぜり。
46 然れども其中の或者はファリセイ等に往きて、之にイイススの行ひし事を告げたり。
47 是に於て司祭諸長及びファリセイ等は公會を集めて曰へり、我等何を爲さんか、蓋此の人は多くの奇蹟を行ふ。
48 若し是くの如く彼を舎かば、人皆彼を信ぜん、而してロマ人來りて、我等の地をも民をも奪はん。
49 其中の一人なるカイアファ、是の歳司祭長たる者は、彼等に謂へり、爾等何をも知らず、
50 又一人民の爲に死して、全民滅びざらん事の、我等に益あるを思はず。
51 彼の之を言ひしは、己に由るに非ず、乃是の歳の司祭長として、イイススの民の爲に死せんとするを預言せしなり。
52 是れ特斯の民の爲のみならず、乃亦散じたる神の諸子を一に集めん爲なり。
53 是の日より彼等相議して、イイススを殺さんと決せり。
54 故にイイスス是より顯にイウデヤ人の中を行かず、乃彼處より野に近き地、エフライムと名づくる邑に往きて、此に門徒と偕に居たり。
55 イウデヤの逾越節近づきたれば、多くの者は、己を潔めん爲に、逾越節に先だちて、地方よりイエルサリムに上れり。
56 衆イイススを尋ね、殿に立ちて、相語りて曰へり、爾等如何に意ふか、彼は節筵に來らざらんか。
57 司祭諸長及びファリセイ等は令を出して云へり、若し人彼の在る所を知らば、之を告ぐべし、彼を執へん爲なり。
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