2023年01月22日 13:18
第13章 (イオアン福音)
1 逾越節筵の前に、イイスス旣に己が此の世を離れて、父に逝く時の至りしを知りて、世に在る己に属する者を愛して、終に至るまで之を愛せり。
2 晩餐の時、惡魔已にシモン子イウダイスカリオトの心に彼を賣る意を入れしに、
3 イイススは、父が萬物を其手に授け、且己が神より出でて、亦神に逝くを知りて、
4 晩餐より起ち、其衣を釋き、手巾を取りて、自ら帶にし、
5 次ぎて水を盤に盛りて始めて門徒の足を濯ひ、帶にしたる手巾を以て之を拭へり。
6 シモン ペトルに來れるに、彼曰く、主よ、爾我が足を濯ふか。
7 イイスス之に答へて曰へり、我が行ふ所は、爾今知らず、後に之を悟らん。
8 ペトル彼に謂ふ、爾永く我が足を濯はざらん。イイスス答へて曰へり、若し我爾を濯はずば、爾は我と分なし。
9 シモン ペトル彼に謂ふ、主よ、止我が足のみならず、乃亦手と首と。
10 イイスス之に謂ふ、旣に洗はれたる者は、足の外に濯ふを要せず、蓋身皆潔し、爾等も潔し、然れども盡く然るには非ず。
11 蓋彼は己を賣らんとする者を知れり、故に盡く潔きには非ずと云へり。
12 旣に彼等の足を濯ひて、己の衣を衣、復席坐して、彼等に謂へり、我が爾等に行ひし事を知るか。
13 爾等我を呼びて師と爲し、主と爲す、爾等の言ふ所善し、蓋我は是なり。
14 故に若し我、主又師たるに、爾等の足を濯ひしならば、爾等も互に足を濯ふべし。
15 蓋我爾等に模範を與へたり、我が爾等に行ひし如く、爾等も行はん爲なり。
16 我誠に誠に爾等に語ぐ、僕は其主より大ならず、使者は之を遣しし者より大ならず。
17 爾等若し之を知りて、之を行はば、福なり。
18 我盡く爾等を指して言ふに非ず、我は選びたる者を知る。然れども聖書の言ふ所に應ふを致す、云く、我と與に餅を食ふ者は、我に向ひて其踵を擧げたりと。
19 未だ成らざる先に、我豫め爾等に謂ふ、其成るに及びて、爾等の是れ我なりと信ぜん爲なり。
20 我誠に誠に爾等に語ぐ、我が遣す者を接くる者は、我を接くるなり、我を接くる者は、我を遣しし者を接くるなり。
21 イイスス此を言ひし後、心傷みて、證して曰へり、我誠に誠に爾等に語ぐ、爾等の中の一人は我を賣らん。
22 門徒相視て、其誰を指して言ふかと異めり。
23 門徒の一、イイススの愛せし者は、イイススの懷に倚りて席坐せり。
24 シモン ペトル彼に首を以て意を示して、其言ふ所の誰たるを問はしめたり。
25 彼はイイススの胸に就きて言ふ、主よ、是れ誰なるか。
26 イイスス答へて曰く、我が餅の片を蘸して與へんとする者是なり。乃片を蘸して、シモンの子イウダ イスカリオトに與へたり。
27 片を受けし後に、サタナ彼の中に入れり。イイスス彼に謂ふ、爾が爲す所の事は、速に之を爲せ。
28 然れども席坐せる者は、一も其何の意を以て之を言ひしか悟らざりき。
29 蓋イウダが金匣を管れるに因りて、或者は、イイスス彼に、我等が節筵に需ゐるべき物を市へと云ひ、或は、貧しき者に何をか施さしむると意へり。
30 彼は片を受けて、直に出でたり、時正に夜なり。
31 彼の出でし後、イイスス曰く、今人の子は榮せられたり、神も亦彼の中に榮せられたり。
32 若し神は彼の中に榮せられしならば、神も亦彼を己の内に榮せん、且速に彼を榮せん。
33 小子よ、我尚暫時爾等と偕にす、爾等我を尋ねん、而して我が曾てイウデヤ人に、我の往く所には爾等來る能はずと、云ひし如く、今爾等にも亦云ふなり。
34 我新なる誡を爾等に與ふ、卽爾等相愛すべし、我が爾等を愛するが如く、爾等も是くの如く相愛すべし。
35 爾等若し相愛せば、人皆此に由りて、爾等の我が門徒たるを知らん。
36 シモンペトル彼に謂ふ、主世爾何にか往く。イイスス之に答へて曰へり、我の往く所には、爾今我に從ふ能はず、然れども後我に從はん。
37 ペトル彼に謂ふ、主よ、我胡爲れぞ今爾に從ふ能はざる、我爾の爲に我が生命を捐てん。
38 イイスス之に答へて曰へり、爾の生命を我が爲に捐てんか、我誠に誠に爾等に語ぐ、鶏の鳴かざる前に、爾三次我を諱まん。
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