2023年01月22日 13:50
第18章 (イオアン福音)
1 イイスス此を言ひて後、其門徒と偕にケドロン河の外に出でたり、彼處に園あり、彼及び彼の門徒は其中に入れり。
2 彼を賣るイウダも此の處を識れり、蓋イイスス屡其門徒と偕に彼處に集りたり。
3 故にイウダは兵卒一隊を、及び司祭諸長とファリセイ等より下吏を受けて、炬と燈と兵器とを以て、此の處に來れり。
4 イイススは凡そ己に及ばんとすることを知りて、出でて彼等に謂へり、爾等誰を尋ぬるか。
5 彼に答へて曰へり、イイスス ナゾレイなり。イイスス彼等に謂ふ、我は是なり。彼を賣るイウダも彼等と偕に立てり。
6 イイススが我は是なりと言ひし時、彼等後へ退きて、地に仆れたり。
7 復彼等に問へり、爾等誰を尋ぬるか。彼等曰へり、イイスス ナゾレイなり。
8 イイスス答へて曰へり、我爾等に我は是なりと謂へり、故に若し我を尋ぬるならば此の輩を容して去らしめよ、
9 彼が言ひし言に應ふを致す、云く、爾が我に與へし者の中、我一人をも亡さざりきと。
10 時にシモン ペトル劔ありて、之を抜き、司祭長の僕を擊ちて、其右の耳を削げり。僕の名はマルホなり。
11 イイスス ペトルに謂へり、爾の劔を鞘に鞱めよ、父の我に與へし爵は、我豈之を飮まざらんや。
12 是に於て兵卒と千夫長とイウデヤの下吏とイイススを執へて、之を縛り、
13 先づ之をアンナに曳き至れり、蓋彼は是の歳司祭長たるカイアファの岳父なり。
14 カイアファは、卽イウデヤ人に議りて、一人民の爲に死するは益ありと、云ひし人なり。
15 シモン ペトル及び他の一人の門徒イイススに從へり、此の門徒は司祭長の識る所の者にして、イイススと偕に司祭長の中庭に入り、
16 ペトルは門の外に立てり。後司祭長の識る所の門徒は出でて、門を護る女に言ひて、ペトルを内に入れたり。
17 是に於て門を守る婢ペトルに謂ふ、爾も此の人の門徒の一に非ずや。彼曰く、然らず。
18 時に諸僕及び下吏等寒きに因りて火を焚き、彼に立ちて、煖まり、ペトルも亦彼等と偕に立ちて煖まれり。
19 司祭長はイイススに其門徒及び其教の事を問へり。
20 イイスス彼に答へて曰へり、我明に世に語れり、我常に會堂及び殿、卽イウデヤ人の恒に集まる所に於て、教を宣べて、隱に語りしことなし。
21 何ぞ我に問ふ、聽きし者に我が彼等に何を語りしを問へ、視よ、此の輩は我が言ひし事を知る。
22 彼が此を言ひし時、旁に立てる下吏の一人イイススの頬を批ちて曰へり、爾は司祭長に斯く對ふるか。
23 イイスス彼に答へて曰へり、若し我が言ひし事惡しくば、其惡しき事を證せよ、若し善くば何ぞ我を批つ。
24 アンナは彼を縛りたるまま司祭長カイアファに送れり。
25 時にシモン ペトル立ちて煖まれり。或彼に謂へり、爾も其門徒の一に非ずや。彼諱みて曰へり、然らず。
26 司祭長の僕の一人、ペトルが耳を削ぎたる者の親戚、曰く、我爾が彼と偕に園に在るを見しに非ずや。
27 ペトル復諱みたり、忽鶏鳴けり。
28 彼等イイススを曳きて、カイアファより公廨に至れり。時已に平旦なり、彼等は公廨に入らざりき、汚されざらん爲、卽逾越節筵を食するを得ん爲なり。
29 ピラト出でて彼等に謂へり、爾等に何事を以て此の人を訴ふるか。
30 答へて曰へり、彼若し惡を行ふ者に非ずば、我等彼を爾に解さざりしならん。
31 ピラト彼等に謂へり、爾等彼を取りて、爾等の律法に循ひて、彼を審判せよ。イウデヤ人之に謂へり、我等には人を死に處する權なし、
32 是れイイススが、如何なる死を以て死なんとするを指して、言ひし言に應ふを致す。
33 其時ピラト復公廨に入り、イイススを召して、彼に謂へり、爾はイウデヤ人の王なるか。
34 イイスス彼に答へて曰へり、爾己に由りて之を謂ふか、抑他の者が我の事を爾に言ひしか。
35 ピラト答へて曰へり、我豈イウデヤ人ならんや、爾の民と司祭諸長とは爾を我に解せり、爾何を爲ししか。
36 イイスス答へて曰へり、我が國は此の世に属せず、若し我が國此の世に属せば、我が諸僕は戰ひて、我がイウデヤ人に付さるるを免れしめしならん、然れども今我が國は此に属せざるなり。
37 ピラト彼に謂へり、ピラト彼に謂へり、然らば爾は王なるか。イイスス答へて曰へり、爾言ふ、我は王なり。我此が爲に生れ、此が爲に世に來れり、卽眞實の事を證せん爲なり、凡そ眞實に属する者は我の聲を聽く。
38 ピラト彼に謂ふ、眞實とは何ぞや。此を言ひて後、復出でてイウデヤ人に謂ふ、我は彼に一も罪あるを見ず。
39 然るに爾等には逾越節に於て我が爾等に一人を釋す例あり、故に我が爾等にイウデヤ人の王を釋さんことを欲するか。
40 衆人復號びて曰へり、斯の人に非ず、乃ワラウワを。ワラウワは盗賊なり。
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