2023年01月23日 13:44
第4章 (マルコ福音)
1 復海濵に於て教へ始めしに、衆くの民、彼の許に集りたれば、彼舟に登りて、海に坐し、民皆海に沿ひて、陸に在りき。
2 乃多くの譬を以て彼等を教へたり、其教に於て彼等に謂へり、
3 之を聽け、種を播く者は播かん爲に出でたり。
4 播く時、道の旁に遣ちし者あり、鳥來りて、是を啄めり。
5 土の薄き磽地に遣ちし者あり、土の深からざるに因りて、直に萌え出でしが、
6 日の出でて後萎み、根なきに因りて、槁れたり。
7 棘の中に遣ちし者あり、棘起きて、之を蔽ひたれば、實を結ばざりき。
8 沃壌に遣ちし者あり、乃發し長ずる實を結びて、或は三十倍、或は六十倍、或は百倍と爲れり。
9 又曰へり、耳ありて聽くを得る者は聽くべし。
10 民の散じて後、彼を環れる者は十二徒と偕に、彼に譬の事を問へり。
11 彼は之に謂へり、爾等には神の國の奥義を知ること與へられたれども、彼の外の者には凡て譬を用ゐる、
12 蓋彼等は視て視れども見ず、聽きて聽けども悟らず、恐らくは轉じて其罪を赦されん。
13 又彼等に謂ふ、爾等斯の譬を悟らざるか、然らば如何にして凡ての譬を識らん。
14 播く者は言を播くなり。
15 路の旁に遣ちたる者は、此れ播かるる言を聽きて後、直にサタナ來りて、彼等の心に播かれたる言を奪ふ。
16 磽地に播かれたる者は、同じく是れ言聽きて、直に喜びて受くれども、
17 己に根なきが故に暫時のみ、後言の爲に艱難或は窘逐に遇はば、直に躓く。
18 棘の中に播かれたる者は、是れ言を聽けども、
19 斯の世の慮と、貨財の惑と、其他の慾とは入りて、言を蔽ひて、實を結ばしめず。
20 沃壌に播かれたる者は、是れ言を聽きて、之を受け、實を結ぶこと、或は三十倍、或は六十倍、或は百倍なり。
21 又彼等に謂へり、燈を取り來るは豈之を斗の下、或は牀の下に置かん爲なるか、之を燈臺の上に置かん爲に非ずや。
22 隱れて顯れざる者なく、藏して露ならざる者なし。
23 耳ありて聽くを得る者は聽くべし。
24 又彼等に謂へり、聽く所を愼め、爾等何の量を以てか人に量らば、是くの如く爾等にも量られん、且爾等聽く者に加へられん。
25 蓋有てる者は、之に與へられ、有たざる者は、其有てる物も、之より奪はれん。
26 又曰へり、神の國は人種を地に投ずるが如し、
27 夜に昼に寝ね興き、種の如何に發し長ずるを知らず。
28 蓋地は自ら始に苗、次に穂を生じ、次に穂の中に穀を盈たす。
29 實の熟するに及びて、直に鎌を遣す、穫る時至りたればなり。
30 又曰へり、我等神の國を何に比へんか、抑何の譬を以て之を譬へんか、
31 此れ芥種の如し、其地に播かるる時は、地上の悉くの種より小しと雖、
32 播かれたる後は、萌え出でて、悉くの野菜より大になり、巨なる枝を出し、天空の鳥其蔭に棲むを得べきに至る。
33 イイスス斯くの如き多くの譬を以て、彼等が聽くを得る所に循ひて、教を宣べたり。
34 譬に非ずしては、彼等に語らざりき、獨處の時悉く之を其門徒に解けり。
35 其日の暮に及びて、彼等に謂ふ、我等彼の岸に濟るべし。
36 彼等民を去らしめて、彼を猶舟に在るまま取りて往けり、他の舟も亦彼と偕に在りき。
37 颶風大に起り、浪舟に打ち入りて、殆ど滿つるに至れり。
38 時に彼は舟尾に在りて、枕して寝ねたり、彼を醒まして曰く、師よ、我等が亡ぶるを爾顧みざるか。
39 彼起きて、風を禁め、海に謂へり、默せ、靖まれ、風卽息みて、大に穏になれり。
40 又彼等に謂へり、爾等何爲れぞ是くの如く怯るる、何ぞ信なき。
41 彼等大に懼れて、互に謂へり、此れ何人ぞ、風も海も亦彼に順ふ。
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