2023年01月23日 13:52
第7章 (マルコ福音)
1 イエルサリムより來りしファリセイ等と或學士等と彼の許に集れり。
2 彼の門徒の中の或者が潔からざる手、卽盥はざる手を以て餅を食ふを見て、之を咎めたり。
3 蓋ファリセイ等及び悉くのイウデヤ人は、古人の傳を執りて、其手を潔く盥はざれば食はず、
4 市より歸りて、自ら洗はざれば、亦食はず、此の外又多くの事あり、彼等受けて之を守れり、卽杯、瓶、銅器及び牀を洗ふが若し。
5 是に於てファリセイ等と學士等と彼に問ふ、爾の門徒は何ぞ古人の傳に遵はずして、盥はざる手を以て餅を食ふ。
6 彼答へて之に謂へり、イサイヤは爾等、僞善者の事を善く預言せり、錄されしが如し、云く、斯の民は口にて我を敬へども、其心は遠く我に離る、
7 彼等は人の誡を教と爲して、教へて、徒に我を尊むと。
8 蓋爾等神の誡を棄てて、人の傳を執れり、卽瓶杯を洗ひ、其他多く是くの如きを行ふ。
9 又彼等に謂へり、爾等己の傳を守らんが爲に、善く神の誡を廢す。
10 蓋モイセイ曰へり、爾の父及び爾の母を敬へ、又曰へり、父或は母を詈る者は死すべしと。
11 然れども爾等曰ふ、人若し父或は母に對ひて、爾が我より得べき者は「コルワン」、譯すれば、禮物と爲れりと云はば、
12 爾等旣に其人に己の父或は母の爲に何事も爲さざるを許す。
13 斯く爾等が設けし傳を以て神の言を廢し、且多くの是くの如きことを行ふ。
14 乃衆民を召して、之に謂へり、皆我に聽きて悟れ、
15 凡そ外より人に入る者は彼を汚す能はず、惟彼より出づる者は、斯れ人を汚すなり。
16 耳ありて聽くを得る者は聽くべし。
17 彼が民を離れて家に入りし時、門徒彼に譬の事を問へり。
18 彼は之に謂ふ、爾等も亦斯く悟鈍きか、豈知らずや、凡そ外より人に入る者は彼を汚す能はず、
19 蓋其心に入らず、乃腹に入りて外に出づ、是に由りて凡の食物は潔めらる。
20 又曰へり、人より出づる者は、斯れ人を汚すなり。
21 蓋内より出づる、卽人の心より出づる者は、惡念、姦淫、邪淫、兇殺、
22 盗竊、貪婪、惡毒、詭譎、邪侈、疾視、褻瀆、驕傲、狂妄、なり。
23 此等の惡は、皆内より出でて、人を汚すなり。
24 彼は彼處を起ちて、ティル及びシドンの境に來り、家に入りて、人の知らんことを欲せざしが、隱るるを得ざりき。
25 蓋汚鬼を患ふる女を有てる婦彼の事を聞きて、來りて、其足下に俯伏せり。
26 此の婦は異邦人にしてシロフィニキヤに生れし者なり、彼は其女より魔鬼を逐ひ出さんことを請へり。
27 然れどもイイスス之に謂へり、先づ兒曹に飽かしむるを容せ、蓋兒曹の餅を取りて、狗に投ぐるは宜しからず。
28 婦彼に答へて曰へり、主よ、然り、但狗も食卓の下に在りて、兒曹の屑を食ふ。
29 彼は之に謂へり、此の言に因りて、往け、魔鬼は爾の娘より出でたり。
30 婦其家に來りて、魔鬼已に出でて、女の其牀に臥せるを見たり。
31 イイスス復ティル及びシドンの境を出で、デカポリの境の中を經て、ガリレヤの海に至れり。
32 聾にして訥れる者を彼に攜へ來りて、手を其上に按せんことを求むる者あり。
33 彼獨之を攜へて、民を離れ、指を其耳に入れ、唾して其舌に捫り、
34 天を仰ぎて、嘆息して、之に謂ふ、「エッファファ」、譯すれば、啓け。
35 直に其耳は啓け、舌の結は解け、其言ふこと明になれり。
36 イイスス彼等に何人にも告げざらんことを戒めたり、然れども彼愈戒めて、彼等愈播揚せり。
37 且駭異に勝へずして曰へり、其爲せる事皆善し、聾者をも聞く者と爲し、瘖者をも言ふ者と爲す。
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