2023年01月23日 13:58
第12章 (マルコ福音)
1 遂に譬を以て彼等に語りて曰へり、或人葡萄園を樹ゑ、之に籬を環らし、酒榨を掘り、塔を建て、之を園丁に託して他方に往けり。
2 期に及びて、彼は園丁より葡萄の果を収めん爲に、其僕を園丁に遣せり。
3 彼等之を執へて扑ち、空しく返らしめたり。
4 復他の僕を彼等に遣ししに、之をも石にて擊ち、其首に傷つけ、辱めて返らしめたり。
5 又復他の者を遣ししに、之を殺せり、其他の多くの者を或はうち、或は殺せり。
6 猶其一の至愛の子あり、卒に是をも彼等に遣して曰へり、我が子に愧ぢんと。
7 然れども彼の園丁は相語りて曰へり、此れ嗣子なり、往きて彼を殺さん、然らば其嗣業は我等の有とならん。
8 乃之を執へて殺し、葡萄園の外に棄てたり。
9 然らば葡萄園の主は何を爲さんか、彼來りて園丁を滅し、葡萄園を他の者に託せん。
10 爾等聖書に、工師が棄てたる石は屋隅の首石と爲れり、
11 此れ主の成す所にして、我等の目に奇異なりとすと、云ふを未だ讀まざりしか。
12 彼等はイイススを執へんと謀りたれども、民を懼れたり、蓋其彼等を指して譬を言ひしを覺れり、乃彼を離れて去れり。
13 又彼を其言に因りて罟せん爲に、ファリセイ等及びイロドの黨の數人を彼に遣せり。
14 此等の者來りて、彼に謂ふ、師よ、我等は爾が眞なる者にして、何人にも偏らざるを知る、蓋爾は貌を以て人を取らず、乃眞に神の道を教ふ、稅をケサリに納むるは宜しや否や、
15 我等納めんか、納めざらんか。イイスス彼等の詐を知りて、之に謂へり、何ぞ我を試みる、銀一枚を攜へて我に視せ。
16 彼等攜へ來りしに、之に謂ふ、斯れ誰の像と號なるか。曰く、ケサリの。
17 イイスス彼等に答へて曰へり、ケサリの物をケサリに納め、神の物を神に納めよ。彼等之を奇と爲せり。
18 又サッドゥケイ等、卽復活なしと言ふ者彼に就きて問ひて曰く、
19 師よ、モイセイ我等の爲に書して云へり、若し人の兄弟死して、妻を遺し、子を遺さずば、其兄弟其妻を娶りて、兄弟の嗣を興すべしと。
20 兄弟七人ありしが、第一の者妻を娶れり、而して死して子を遺さざりき、
21 第二の者も之を娶りて死せり、亦子を遺さざりき、第三の者も亦然り、
22 七人之を娶りて子を遺さざりき、其後妻も亦死せり。
23 然らば復活には、彼等が復活せん時は、此の婦は其中誰の妻と爲らんか、蓋七人之を妻と爲せり。
24 イイスス彼等に答へて曰へり、爾等は聖書をも神の能をも知らずして、之が爲に迷ふか。
25 蓋死より復活せん時は、娶らず、嫁がず、乃天使等の如く天に在るなり。
26 死者の復活することに付きては、爾等モイセイの書に、棘の篇に於て、如何に神が彼に、我はアウラアムの神、イサアクの神、イアコフの神なりと、言ひしを未だ讀まざりしか、
27 神は死者の神に非ず、乃生者の神なり、故に爾等大に迷へり。
28 學士等の一人彼等の議論を聞き、イイススの善く對へしを見て、彼に就きて問へり、一切の誡の中何か第一たる。
29 イイスス之に答へて曰へり、一切の誡の中第一なる者は、云く、イズライリよ、聽け、主我等の神は一の主なり、
30 又、爾心を盡し、靈を盡し、意を盡し、力を盡して、主爾の神を愛せよ、此れ第一の誡なり。
31 第二は是に同じき者、卽爾の隣を愛すること己の如くせよ。斯の二の者より大なる誡は有らず。
32 學士彼に謂へり、善い哉師よ、爾が、神は一にして、其外に神なしと謂ひしは實なり。
33 又、心を盡し、智を盡し、靈を盡し、力を盡して、彼を愛し、又己の如く隣を愛するは、悉くの全燔と祭祀とに愈れり。
34 イイスス其智を以て對へしを見て、之に謂へり、爾は神の國に遠からず。是より敢て復彼に問ふ者なかりき。
35 イイスス又殿に於て教を宣べて曰へり、學士等何ぞハリストスはダワィドの子なりと云ふ、
36 蓋ダワィド自ら聖神゜によりて言へり、主我が主に謂へり、爾我が右に坐して、我が爾の敵を爾の足の凳と爲すに迄れと。
37 斯くダワィド自ら彼を主と稱ふ、如何ぞ彼は其子たる。衆くの民は樂みて彼に聞けり。
38 彼又其教の中に曰へり、謹みて學士等を防げ、彼等は長き衣にて遊ぶを好み、街衢には問安、
39 會堂には首座、筵には上席を好む。
40 此等嫠の家を呑み、佯りて長き祈を爲す者は、尤重き定罪を受けん。
41 イイスス獻賽函に對ひて坐し、民が金錢を獻賽函に投ずるを見たり。多くの富める者は、多く投じたり。
42 一人の貧しき嫠來りて、二「レプタ」を投じたり、卽五釐なり。
43 イイスス其門徒を召して、之に謂ふ、我誠に爾等に語ぐ、此の貧しき嫠は凡そ獻賽函に投ずる者より多く投じたり。
44 蓋皆其羨餘より投じ、彼は其乏しき所より、凡の有てる者、卽其生計を悉く投じたり
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