2023年01月23日 14:02
第15章 (マルコ福音)
1 平旦に及びて、直に司祭諸長は長老等學士等及び全公會と共に集議し、イイススを縛りて、曳きてピラトに解せり。
2 ピラト彼に問へり、爾はイウデヤ人の王なるか。彼答へて曰へり、爾言ふ。
3 司祭諸長は多くの事を以て彼を訴へたり。
4 ピラト復彼に問ひて曰へり、爾答ふる所なきか、觀よ、爾に對して證すること幾何ぞ。
5 イイスス仍一言も答へざりき、ピラト奇むに至れり。
6 節期には、彼一人の囚を、民の求むる所に任せて釋すことありき。
7 時にワラウワと名づくる者、其共謀者と偕に繫がれ居たり、卽騒乱の時に殺人を爲しし輩なり。
8 民は聲を揚げて、常に彼等の爲に行ひし如く爲さんことを求めたれば、
9 ピラト答へて曰へり、我が爾等にイウデヤ人の王を釋さんことを欲するか。
10 蓋司祭諸長が娼嫉に因りて彼を解ししを知れり。
11 然るに司祭諸長に民を唆めて、寧ワラウワを釋さんことを乞はしめたり。
12 ピラト答へて復彼等に謂へり、然らば爾等がイウデヤ人の王と名づくる者には、我が何を爲さんことを欲するか。
13 彼等復號びて曰へり、彼を十字架に釘せよ。
14 ピラト彼等に謂へり、彼は何の惡を行ひしか。然れども彼等愈號べり、彼を十字架に釘せよ。
15 其時ピラト民の望に適はしめんと欲して、ワラウワを彼等に釋し、イイススを鞭ちて、十字架に釘せん爲に付せり。
16 兵卒彼を曳きて、中庭の内、卽公廨に至り、全営を集め、
17 彼に紫袍を衣せ、棘の冕を編みて冠らせ、
18 其安を問ひて曰へり、イウデヤ人の王、慶べよ。
19 又葦を以て其首を擊ち、彼に唾し、跪きて彼を拜せり。
20 旣に戯れ畢りて、其紫袍を褫ぎ、彼の衣を衣せ、十字架に釘せん爲に彼を曳き往けり。
21 或キリネヤの人シモン、卽アレキサンドル及びルフの父が、田より來り過ぐるを强ひて、其十字架を負はしめたり。
22 ゴルゴファの處、譯すれば、髑髏の處に曳き至りて、
23 沒藥を和へたる酒を彼に飮ませしに、彼受けざりき。
24 彼を十字架に釘せし者は其衣を分ち、孰か何を得んと鬮を取れり。
25 第三時に在りて、彼を十字架に釘せり。
26 其罪に標に書して曰へり、イウデヤ人の王と。
27 彼と偕に二人の盗賊を十字架に釘せり、一人は其右、一人は其左なり。
28 是に於て聖書の言應へり、曰く、罪犯者と偕に算へられたりと。
29 過ぐる者彼を誚り、首を揺かして曰へり、噫殿を毀ちて三日に之を建つる者よ、
30 己を救ひて十字架より下れ。
31 同じく司祭諸長も學士等と偕に嘲りて、相語りて曰へり、他人を救ひて、己を救ふ能はず。
32 ハリストス、イズライリの王、今十字架より下るべし、我等が見て彼を信ぜん爲なり。彼と偕に十字架に釘せられし者も彼を詬れり。
33 第六時に及び、晦冥は全地を蔽ひて、第九時に至れり。
34 第九時にイイスス大聲に呼びて曰へり、「エロイ、エロイ、ラマ、サワファニ」譯すれば、我が神よ我が神よ、何ぞ我を遺てたる。
35 旁に立てる者の中、或人之を聞きて曰へり、視よ、イリヤを呼ぶ。
36 一人趨り往きて、海絨に醋を盈たし、葦に束ねて、彼に飮ましめて曰へり、姑く舎け、イリヤ來りて、彼を下すや否やを觀ん。
37 イイスス大聲を發して、気絶えたり。
38 時に殿の幔は、上より下に至るまで裂けて、二となれり。
39 彼に對ひて立ちたる百夫長は、其斯く呼びて気絶えしを見て、曰へり、斯の人は誠に神の子なり。
40 彼處に亦遙に望める婦等あり、其中にマリヤ「マグダリナ」、小なるイアコフとイオシヤとの母マリヤ、及びサロミヤ、
41 卽彼がガリレヤに在りし時にも彼に從ひて事へし者、及び其他彼と偕イエルサリムに上りし多くの婦ありき。
42 日已に暮れしに、(是の日に備節日にして安息日の前日なりし故)、
43 アリマフェヤの人イオシフ、貴き議士、自らも神の國を俟てる者は來り、毅然としてピラトの許に入りて、イイススの屍を求めたり。
44 ピラト其已に死せしを奇み、百夫長を召して、彼死して久しきかと問ひ、
45 百夫長より之を知りて、屍をイオシフに與へたり。
46 彼は布を買ひ、之を下して布に裏み、之を盤に鑿ちたる墓に置き、石を墓の門に轉せり。
47 マリヤ「マグダリナ」及びイオシヤの母マリヤは彼を置きたる處を見たり
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