2023年01月24日 13:45
第7章 (聖使徒行実)
1 時に司祭長曰へり、果して此くの如きか。
2 彼曰へり、兄弟及び諸父よ、之を聽け、光榮の神は我が祖アウラアムに其未だハッランに徒らざる先に、メソポタミヤに現れて、
3 彼に謂へり、爾等の地を出で、爾の親族及び爾の父の家を離れて、我が爾に示さんとする地に往け。
4 其時彼はハルデヤの地より出でて、ハッランに居りたり、其父の死せし後、神は彼處より、爾等が今住める、此の地に徒せり。
5 然るに此には足を立つるばかりの地の嗣業だに彼に與へざりき、惟彼に、未だ子あらざりし時、此の地を業として、彼及び彼の裔に與へん事を約せり。
6 神は斯く謂へり、彼の裔は他の地に移住民と爲り、彼處には之を奴隷と爲し、之を苦めて、四百年を歴ん。
7 神又曰へり、彼等を奴隷とせん民は、我之を審判せん、厥後彼等は出でて、我に此の處に奉事せんと。
8 又彼に割禮の約を與へたり。其後アウラアムはイサアクを生み、第八日に於て之に割禮を行へり、イサアクはイアコフを生み、イアコフは十二の族祖を生めり。
9 族祖はイオシフを嫉みて、之をエギペトに賣れり、然れども神は彼と偕に在りて、
10 彼を其悉くの患難より拯ひ、彼にエギペトの王ファラオンの前に恩寵と智慧とを與へたり、王彼を立てて、エギペト及び己の全家の宰と爲せり。
11 飢饉と大なる患難とはエギペト并にハナアンの全地に及びて、我が先祖は糧を得ざりき。
12 イアコフはエギペトに穀物ありと聞きて、初めて我が先祖を彼に遣せり。
13 再遣しし時、イオシフは己を其兄弟に識らしめ、且イオシフの族はファラオンの知る所と爲れり。
14 イオシフ遣して、其父イアコフ及び其全族七十五人を迎へたり。
15 イアコフ エギペトに下りて、己も我が先祖も終れり、
16 乃シヘムに攜へられて、アウラアムが、銀の価を以て、シヘムのエムモルの諸子より買ひたる墓に藏められたり。
17 神が誓ひて、アウラアムに許約せし期の近づくに隨ひ、民はエギペトに繁殖して、愈多くなり、
18 イオシフを識らざる他の王のエギペトに起るに迨べり。
19 彼は惡を我が族に謀りて、我が先祖を苦め、其嬰を棄てて、活かさざらんことを命ぜり。
20 斯の時モイセイ生れて、神の前に美しかりき。三月間其父の家に育てられたり。
21 棄てらるるに及びて、ファラオンの女彼を取り、養ひて己の子と爲せり。
22 モイセイは盡くエギペトの學術を教へられて、言と行とに能ありき。
23 彼歳四十に至りて、其兄弟なるイズライリの諸子を顧みんとする心起れり。
24 其中一人の虐げらるるを見て、之を保護し、屈せらるる者の爲に仇を報いて、エギペト人を殺せり。
25 意へらく、其兄弟は、神が彼の手を以て、彼等に救を與ふるを悟るならんと、然れども彼等は悟らざりき。
26 次の日彼等の相闘へるを見て、和を勧めて曰へり、爾等は兄弟なるに、何ぞ互に不義を爲す。
27 然れども其隣に不義を爲す者は彼を斥けて曰へり、誰か爾を立てて、我等の有司及び裁判官と爲したる。
28 豈爾は昨日エギペト人を殺しし如く、我を殺さんと欲するか。
29 モイセイ此の言に因りて、奔りて、マディアムの地に移住し、彼處に在りて二人の子を生めり。
30 四十年を越えて後、シナイ山の野に於て、主の使彼に燃ゆる棘の火焔に現れたり。
31 モイセイ見て、異象を奇み、之を審に視ん爲に近づける時、主の聲彼に在りて曰へり、
32 我は爾が列祖の神、アウラアムの神、イサアクの神、イアコフの神なり。モイセイ戰ひ慄きて、敢て視ざりき。
33 主は彼に謂へり、爾の足の履を解け、蓋爾が立てる處は聖地なり。
34 我はエギペトに在る苦を見、其嘆息を聞き、彼は救はん爲に降れり、今往け、我爾をエギペトに遣さん。
35 此のモイセイ、彼等が拒みて、誰か爾を立てて、有司及び裁判官と爲したると、云ひし者は、神彼を、棘の中に現れたる天使の手を以て、有司及び救主として遣せり。
36 此の人は彼等を引き出し、奇蹟休徴をエギペトの地に、紅海に、及び野に、四十年間行へり。
37 此のモイセイは、卽イズライリの諸子に語げて、主爾等の神は、爾等の兄弟の中より、爾等に我の若き預言者を起さん、彼に聽けと、云ひし者なり。
38 此の人は、卽野の會に於て、シナイ山に彼に語りし天使、及び我等の先祖と偕に在りて、我等に授けん爲に活ける言を受けし者なり。
39 我等の先祖は彼に從ふを欲せざりき、乃彼を拒み、己の心をエギペトに轉じて、
40 アアロンに謂へり、我等に先だちて行くべき諸神を我等の爲に作れ、蓋我等をエギペトの地より引き出しし此のモイセイに、何事のありしかを我等知らざるなり。
41 當日彼等は犢の像を造り、像に祭を獻じ、己が手の作の前に樂めり。
42 是に於て神は面を避けて彼等が天上の軍に事ふるに任せたり、諸預言者の書に錄されしが如し、云く、イズライリの家よ、爾等は四十年間野に於て犠牲と祭祀とを我に獻げしか。
43 爾等はモロフの幕、及び爾等の神レムファンの星、卽、爾等が拜せん爲に作りし形を擧げたり、我爾等をワワィロンより遠く徒さんと。
44 我等の先祖には、野に於て證詞の幕ありき、モイセイに語りし者が、其見し所の式に遵ひて、之を造らん事を命ぜしが如し。
45 我等の先祖はイイススと偕に之を奉じて、神が我等の先祖の面前より逐ひし異邦民の領地に攜へ入れり。此くの如くにしてダワィドの日に至れり。
46 彼は神の前に恩寵を獲て、イアコフの神の爲に居所を設けんことを願へり。
47 ソロモンは彼の爲に家を建てたり。
48 然れども至上者は手にて造られたる殿に居らず、預言者の云ふ所の如し、
49 主曰く、天は我に寶座、地は我の足の凳なり。爾等我が爲に何の家を建てんか、或は我が安息の爲に何の所あらんか、
50 我が手皆之を造りしに非ずやと。
51 强項にして、心と耳とに割禮を受けざる者よ、爾等恒に聖神゜に逆ふ、爾等先祖の若く、爾等も亦是くの若し。
52 爾等の先祖は孰の預言者を窘逐せざりしか、彼等は義者の來るを預言せし者を殺せり、爾等は今此の義者を解し且殺す者と爲れり。
53 爾等は、乃天使等の捧持に由りて、律法を受けて、之を守らざりし者なり。
54 彼等之を聞きて、其心怒に勝へず、切齒して彼に向へり。
55 時にステファン聖神゜に滿てられ、天を仰ぎて、神の光榮及びイイススが神の右に立てるを見て曰へり、
56 視よ、我天開けて、人の子が神の右に立てるを見る。
57 然れども彼等大なる聲を以て叫びて、耳を掩ひ、心を同じくして彼に擁し逼り、
58 城の外に曳き出して、石を以て彼を擊てり。證者等己の衣を一の少年、サウルと名づくる者の足下に置き、
59 石を以てステファンを擊てり、彼祈りて曰へり、主イイススよ、我が靈を接けよ、
60 乃膝を屈め、大なる聲を以て呼びて曰へり、主よ、是の罪を彼等に歸する勿れ。此を言ひて寝れり。
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