2023年01月24日 13:46
第8章 (聖使徒行実)
1 サウルは彼の殺されし事を可とせり。當日大なる窘逐はイエルサリムに在る教會に及び、使徒の外は皆イウデヤとサマリヤとの各地に散じたり。
2 敬虔なる人人ステファンを葬り、之が爲に大なる痛哭を爲せり。
3 サウルは教會を殘害し、家々に入り、男女を曳きて、獄に付せり。
4 時に散じたる者は徧く往きて、言を福音せり。
5 フィリップはサマリヤの邑に下りて、彼等にハリストスを傳へたり。
6 民はフィリップが行ひし休徴を聞き且見て、心を一にして謹みて其言ふ所を聽けり。
7 蓋汚鬼は大なる聲を以て叫びて、之に憑らるる多くの者より出で、亦多くの癱瘋及び跛の者は愈されたり。
8 其邑の中に大なる喜ありき。
9 爰に一人、シモンと名づくる者あり、素邑に於て魔術を行ひ、サマリヤの民を駭かし、己を大なる者と爲せり。
10 小より大に至るまで、皆謹みて彼に聽きて、曰へり、此の人は神の大なる能なり。
11 謹みて彼に聽きしは、素久しく魔術を以て彼等を駭かしし故なり。
12 然れども彼等は神の國及びイイスス ハリストスの名の事を福音するフィリップに信ずるに及びて、男女共に洗を受けたり。
13 シモン自も亦信じて、洗を受け、常にフィリップと偕に在りて、行はれたる大なる異能と休徴とを見て駭けり。
14 イエルサリムに在る使徒は、サマリヤが神の言を受けたりと聞きて、ペトル及びイオアンを彼等に遣せり。
15 二人下りて、彼等が聖神゜を受けん爲に祈れり。
16 蓋聖神゜は未だ彼等の一人にも降らざりき、彼等は第主イイススの名に因りて洗を受けしのみ。
17 其時使徒彼等に手を按せたれば、彼等聖神゜を受けたり。
18 シモンは、使徒の手の按するに因りて、聖神゜の授けらるるを見て、之に金を攜へ至りて
19 曰へり、我にも此の權を與へよ、我が手を按せんとする者の、聖神゜を受けん爲なり。
20 然れどもペトル彼に謂へり、爾の銀は爾と偕に亡ぶべし、蓋爾は金を以て神の賜を獲んと意へり。
21 爾には此の事に於て分なく鬮なし、蓋爾の心は神の前に正しからず。
22 故に此の爾の惡を悔改して、神に禱れ、或は爾が心の念は爾に赦されん。
23 蓋我爾が苦き膽に在り、及び不義の繫に在るを見る。
24 シモン答へて曰へり、爾等我の爲に主に禱りて、爾等言ひしことの我に及ぶなからしめよ。
25 彼等主の言を證し、且宣べて、イエルサリムに返り、途にサマリヤの多くの村に福音を傳へたり。
26 主の使フィリップに告げて曰へり、起ちて南に向ひて、イエルサリムよりガザに下る路に適け、其路は野なり。
27 彼起ちて往けり、視よ、エフィオピヤの人、エフィオピヤの女王カンダキヤの寺人にして大臣、其悉くの財寶を司る者は、禮拜の爲にイエルサリムに來りて、
28 返り、其車に乗りて、預言者イサイヤを讀めり。
29 神フィリップに謂へり、前みて、此の車に就け。
30 フィリップ趨り就きて、彼が預言者イサイヤを讀むを聞きて曰へり、爾讀む所を暁るか。
31 彼曰へり、若し我を導く者なくば、我焉ぞ暁るを得ん、乃フィリップに升りて共に坐せんことを請へり。
32 其讀める聖書の文は左の如し、彼は羊の如く屠られん爲に牽かれたり、羔が其毛を剪る者の前に在りて聲なきが如く、彼は此くの若く其口を啓かず。
33 其卑賤に居る時、彼に於ける裁判は行はれたり。然れども其來歴は孰か能く之を解かん、蓋彼の生命は地より取らると。
34 寺人フィリップに謂へり、請ひ問ふ、預言者の此を言ふは、誰を指す、己を指すか、抑他人を指すか。
35 フィリップ其口を啓き、此の書より始めて、彼にイイススを福音せり。
36 路を行く時、彼等は水の有る所に來れり、寺人曰へり、視よ、水あり、我が洗を受くるに何の礙あるか。
37 フィリップ彼に謂へり、爾若し全き心を以て信ぜば、可なり。彼答へて曰へり、我イイスス ハリストスが神の子たるを信ず。
38 乃命じて、車を止めしめ、フィリップと寺人と共に水に下り、フィリップは彼に洗を授けたり。
39 彼等が水より上りし時、聖神゜は寺人に降り、主の使フィリップを擧げて去り、寺人復之を見ざりき、乃喜びて其路を行けり。
40 フィリップはアゾトに見れ、諸邑を經て、福音を宣べ、ケサリヤに至るに及べり。
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