2023年01月24日 13:50
第9章 (聖使徒行実)
1 サウルは猶主の門徒に向ひて、恐喝と殺気とを吐き、司祭長に就きて、
2 其ダマスクの諸會堂に寄する書を求め得たり、若し斯の道に從ふ者に遇はば、男女を論ぜず、之を縛りて、イエルサリムに曳かん爲なり。
3 彼往きて、ダマスクに近づける時倐天より光ありて、彼を環り照せり。
4 彼等地に仆れて、彼に言ふ聲を聞けり、曰く、サウル、サウル、何ぞ我を窘逐する。
5 彼曰へり、主よ、爾は誰たる。主曰へり、我は爾が窘逐するイイススなり。爾荊を踏むは難し。
6 彼戰き懼れて曰へり、主よ、我が何を爲さんことを欲するか。主彼に謂へり、起ちて、城に入れ、彼處に於て爾が行ふべき事を爾に告げられん。
7 彼と偕に往ける人人驚きて立ち、聲を聞きて、誰をも見ざりき。
8 サウル地より起きて、目啓きたれども、見る所なかりき。彼等其手を援きて、ダマスクに入れたり。
9 彼は三日の間見ることなく、亦食ひ飮むことなかりき。
10 ダマスクに一人の門徒、アナニヤと名づくる者あり、主は異象の中に彼に謂へり、アナニヤ、彼曰へり、主よ、我此に在り。
11 主彼に謂へり、起ちて、直と名づくる街に往き、イウダの家に、タルスの人、名はサウルと云ふ者を訪へ、彼今禱る、
12 而して異象の中に、アナニヤと名づくる人、入りて、見るを得しめん爲に、彼に手を按するを見たり。
13 アナニヤ對へて曰へり、主よ、我多くの者より、此の人の事を聞きしに、彼はイエルサリムに於て、爾の聖徒に害を加へしこと如何ばかりぞ、
14 此に於ても、彼は凡そ爾の名を呼ぶ者を縛らん爲に司祭諸長より得たる權を有てり。
15 然れども主は彼に謂へり、往け、蓋斯の人は我が選びたる器にして、我の名を異邦民と、諸王と、イズライリの諸使徒の前に播かんとする者なり。
16 我は彼に、其我が名の爲に、如何ばかりか苦を受くべきを示さん。
17 アナニヤ往きて、家に入り、手を彼に按せて曰へり、兄弟サウルよ、爾が來れる途に爾に現れたる主イイススは我を遣せり、爾が見るを得、且聖神゜に滿てられん爲なり。
18 忽彼の目より鱗の如き者脱ちて、彼直に見るを得、乃起ちて洗を受け、
19 旣に食して、力を獲たり。サウル數日門徒偕にダマスクに在り、
20 直に諸會堂に於て、イイススを擧げて、其神の子たるを宣べたり。
21 聞く者皆駭きて曰へり、此の人は、イエルサリムに於て、斯の名を呼ぶ者を殘害せしに非ずや、且此に來りしも、彼等を縛りて、司祭諸長に曳かん爲に非ずや。
22 然れどもサウル益堅固にして、此は卽ハリストスなりと證して、ダマスクに居るイウデヤ人を弁折せり。
23 日を歴ること久しくして、イウデヤ人彼を殺さんと謀れり。
24 此の謀はサウルに知られたり。彼等昼夜邑の門に伺ひて、彼を殺さんとせしに、
25 門徒夜彼を取り、筐を以て牆より縋り下せり。
26 サウルはイエルサリムに來り、勉めて門徒に交を納れんとしたれども、皆其門徒たるを信ぜずして、彼を懼れたり。
27 ワルナワ彼を援きて、使徒に攜へ至り、彼等に其如何に途中に主を見し事、及び主が彼に言ひし事、又如何に彼がダマスクに於て毅然としてイイススの名を傳へし事を述べたり。
28 彼はイエルサリムに在りて、彼等と偕に出入し、毅然として主イイススの名に由りて、教を宣べたり。
29 又エルリニストと語り、及び弁論せり、彼等は之を殺さんと図れり。
30 兄弟此の事を知りて、彼をケサリヤに送りて、タルスに遣したり。
31 當時全イウデヤ、ガリレヤ、サマリヤの諸教會平安にして成立し、主を畏れて事を行ひ、聖神゜の慰を得て、數愈増せり。
32 ペトル徧く諸方を往きて、リッダに居る聖徒にも詣りしことあり。
33 彼處に於て彼は一人、名はエネイ、癱瘋を患ひて八年間床に臥せる者に遇へり。
34 ペトル彼に謂へり、エネイよ、イイスス ハリストス爾を愈す、起きて、爾の床を治めよ、彼直に起きたり。
35 リッダ及びサロンに居る者は、皆彼を見て、主に歸せり。
36 イオッピヤに一の女徒、名はタワィファ、譯すれば鹿と云ふ者あり、彼は広く善事を行ひ、施濟を爲せり。
37 適其日に病みて死せり。彼を洗ひて、楼に起きたり。
38 リッダはイオッピヤに近きに因り、門徒はペトル彼處に在りと聞きて、二人を彼に遣して、其遅はらずして彼等に來らんことを求めたり。
39 ペトル起ちて、之と偕に往けり、至るに及びて、彼を引きて、楼に登らせ、嫠婦皆哭きて、彼の側に立ち、鹿の彼等と偕に在りしに作りたる上衣下衣を示せり。
40 ペトル彼等を悉く外に出し、膝を屈めて禱れり、而して屍に向ひて曰へり、タワィファ起きよ。彼其目を啓き、ペトルを見て坐せり。
41 ペトル之に手を授けて、之を起し、聖徒及び嫠婦を召して、之を活ける者として其前に立てたり。
42 此の事全イオッピヤの知る所となりて、多くの者主を信ぜり。
43 ペトル日久しくイオッピヤに留りて、或皮工シモンの家に居たり。
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