2023年01月24日 13:52
第10章 (聖使徒行実)
1 ケサリヤに或人、名はコルニリイ、イタリヤ隊と稱ふる隊の百夫長、
2 敬虔にして、其全家と偕に神を畏れ、民に多くの施濟を爲し、恒に神に禱れる者あり。
3 日の約第九時に、彼は異象の中に明に神の使を見たり、彼に入りて曰へり、コルニリイよ。
4 彼は之に目を注ぎて、懼れて曰へり、主よ、何事ぞ。彼に謂へり、爾の祈禱と爾の施濟とは升りて、神の前に記念せられたり。
5 今人をイオッピヤに遣して、シモン、稱してペトルと云ふ者を呼べ。
6 彼は或皮工シモンに寓れり、其家は海濵に在り、彼は爾及び爾の全家に救を得しむべき言を爾に語らん。
7 コルニリイに語れる天使の去りし後、彼は其僕二人、及び彼に持する兵卒の一人の敬虔なる者を召して、
8 盡く之を告げて、彼等をイオッピヤに遣せり。
9 明日彼等往きて、城に近づける時、ペトル屋上に升りて禱れり。時約六時なり。
10 飢を覺えて、彼食はんと欲せり。人の之を具ふる時、彼の神゜象外に遊べり。
11 彼は天開けて、一の器の其前に降るを見る、大なる布の如し、四角を繫ぎて、地に縋り下さる、
12 其中に凡そ地の四足の牲畜、野獣、昆蟲、及び天空の鳥あり。
13 且聲ありて、彼に謂ふ、ペトルよ、起ちて、屠りて食へ。
14 然れどもペトル曰へり、主よ、然らず、蓋我未だ曾て穢らはしき物、或は潔からざる物を食はざりき。
15 聲再彼に謂ふ、神の潔めたる物は、爾穢らはしと爲す勿れ。
16 三次是くの如くして、器復天に上げられたり。
17 ペトル見し所の異象は何の意ぞと自ら異める時、視よ、コルニリイより遣されたる人人、シモンの家を尋ね得て、其門の前に立ち、
18 呼びて問へり、シモン、稱してペトルと云ふ者は、此に寓れるか。
19 ペトル尚異象の事を思ひ居りしに、聖神゜彼に謂へり、視よ、三人爾を尋ぬ、
20 起ちて下り、毫も疑はずして、彼等と與に往け、蓋我彼等を遣せり、
21 ペトルはコルニリイより彼に遣されし人人に下り就きて曰へり、視よ、我爾等が尋ぬる者なり、爾等何の故ありて來りしか。
22 彼等曰へり、百夫長コルニリイ、義にして神を畏れ、全イウデヤ民に證せらるる者は聖なる天使より、爾を其家に招きて、爾の言を聞かん事の示を受けたり。
23 ペトル彼等を延きて館らしめ、明日起ちて、彼等と偕に往き、イオッピヤの兄弟數人も此と偕に往けり。
24 次の日彼等ケサリヤに入りたるに、コルニリイは已に其親族と親友とを集めて、彼を候てり、
25 ペトルの入る時、コルニリイ彼を迎へて、其の足下に伏して拜せり。
26 ペトル彼を起して曰へり、起て、我も人なり。
27 乃彼と與に語りて入り、多くの集れる者を見て、
28 彼等に云へり、イウデヤ人が異邦人と交り、或は近づくことの、法に合はざるは、爾等の知る所なり、然れども神は我に、何人をも穢らはしき者、或は潔からざる者と、云ふ可からざるを示せり。
29 故に我招かれて、辞せずして來れり。今問ふ、爾等の我を招きしは、何の爲ぞ。
30 コルネリイ曰へり、四日前に、我齋して此の時に至り、第九時に我が家に禱りしに、忽光れる衣を衣たる人我が前に立ちて
31 曰へり、コルニリイよ、爾の祈禱は聞かれ、爾の施濟は神の前に記念せられたり、
32 故にイオッピヤに人を遣して、シモン稱してペトルと云ふ者を呼べ、彼は皮工シモンの家に海濵に寓れり、彼來りて、爾に語らんと。
33 故に我直に爾に遣せり、爾の來れるは善し。今我等皆神の前に立つ、凡そ神より爾に命ぜられん事を聞かん爲なり。
34 ペトル口を啓きて曰へり、今我誠に知れり、神は貌を以て人を取らず、
35 卽凡の民の中に、彼を畏れて義を行ふ者は、彼に納れらるるを。
36 彼はイズライリの諸子に言を遣して、和平を福音せり、イイスス ハリストスに因りてなり、是れ萬有の主なり。
37 イオアンの傳へし洗禮の後に、ガリレヤより始まりて、全イウデヤに行はれし事は、爾等之を知る、
38 卽ナザレトより出でたるイイススは、如何に神より聖神゜と能力とを以て膏つけられ、徧く行りて善事を行ひ、凡そ惡魔に制せらるる者を醫しし事なり、蓋神は彼と偕に在りき。
39 我等は、其凡そイウデヤの地、及びイエルサリムに行ひし事、又彼等が之を木に懸けて殺しし事を證する者なり。
40 神は彼を第三日に復活せしめ、彼をして
41 衆民に非ず、爾神が豫め選びし證者たる我等、其死より復活せし後、彼と偕に食飮せし者に、現れしめたり。
42 彼は我等に命じて、人人に教を傳へ、又彼が神より定められし生者死者の審判者たるを證せしむ。
43 彼の事に就きて、悉く預言者、凡そ彼を信ずる者が、其名に因りて罪の赦を得んことを證す。
44 ペトルの尚此を語れる時、聖神゜は凡そ言を聽く者に降れり。
45 ペトルと偕に來りし割禮を受けたる信者は、聖神゜の賜の異邦人等にも注がれし事を駭けり。
46 蓋彼等が方言を言ひ、神を讚美するを聞けり。
47 其時ペトル曰へり、我等の如く聖神゜を受けたる者には、孰か能く水を以て洗を受くるを禁ぜん。
48 乃彼等にイイスス ハリストスの名に因りて洗を受くるを命ぜり。其後彼等はペトルに數日間留らんことを請へり。
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