2023年01月25日 13:45
第12章 (聖使徒行実)
1 其時イロド王手を擧げて、教會の中の數人に害を加へ、
2 劔を以てイオアンの兄弟イアコフを殺せり。
3 イウデヤ人の之を喜ぶを見て、次ぎて又ペトルを執へたり、時に除酵節の日なり。
4 旣に執へて彼を獄に下し、班毎に四人の兵卒四班に彼を守るを命じて、逾越節の後に彼を民の前に曳き出さんと欲せり。
5 是を以てペトルは獄に守られ、教會は彼の爲に熱切なる祈禱を神に獻じたり。
6 イロドが彼を曳き出さんと欲せし時、其夜ペトル二の鉄索に繫がれて、二人の兵卒の間に寝ね、守る者は門の前に在りて、獄を守れり。
7 視よ、主の天使前に立ち、光は獄室に輝けり。彼ペトルの脅を衝きて、之を醒まして曰へり、速に起きよ。鉄索は其手より脱ちたり。
8 天使彼に謂へり、帶を束ねて、履を著けよ。彼斯く行へり。又彼に謂ふ、爾の袍を身に纏ひて、我に從へ。
9 ペトル出でて之に從ひしが、天使の爲す所の眞なるを知らずして、異象を見ると意へり。
10 守る者の第一所及び第二所を過ぎて、彼等城に入る所の鉄の門に來りしに、門自ら啓けたり、出でて、一の衢を過ぎたるに、天使忽彼より離れたり。
11 ペトル悟りて曰へり、今我誠に主が、其使を遣して、我をイロドの手、及び凡そイウデヤ民の望める所より、拯ひしを知れり。
12 乃囘顧して、イオアン、稱してマルコと謂ふ者の母なるマリヤの家に來れり。彼處には多くの者集りて祈禱せり。
13 ペトル外門を叩く時、乃ロダと名づくる者就きて、之を聽き、
14 ペトルの聲を識りて、喜に因りて、門を啓かず、乃趨り入りて、ペトルが門の前に立てることを告げたり。
15 彼等は之に謂へり、爾狂へるか、女斯くありと言ひ張りたれば、彼等曰へり、是れ卽彼の天使なり。
16 ペトル猶叩きて息めず。彼等啓きし時、彼を見て駭けり。
17 ペトル手を揺かして、言ふこと勿らしめて、彼等に主が如何に彼を獄より引き出ししを述べたり、又曰へり、此の事をイアコフ及び兄弟に報ぜよ。遂に出でて、他の處に往けり。
18 旦に及びて、ペトルは如何になりしかと、兵卒の中に騒擾少からざりき。
19 イロド彼を尋ねたれども、獲ざれば、守る者を糺して、之を死に處せんことを命ぜり。厥後イウデヤを離れ、ケサリヤに往きて居りき。
20 イロド甚しくティル及びシドンの民を怒りたれば、彼等は心を合せて、之に就き、王の内室の臣ウラストの親を得て、和を乞へり、蓋彼等の地は王の國より糧を得たり。
21 定めたる日に於て、イロドは王の衣を衣、其位に坐し、彼等に向ひて語れり、
22 民呼びて曰へり、此れ神の聲なり人の聲に非ず。
23 忽主の使彼を擊てり、光榮を神に歸せざりし故なり、彼蟲に噬まれて気絶えたり。時に神の言は増長じて広まれり。
24 ワルナワ及びサウルは其任務を卒へて、イオアン、稱してマルコと云ふ者を攜へて、イエルサリムよりアンティオヒヤに反れり。
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