2023年01月25日 14:19
第16章 (聖使徒行実)
1 旣にして彼はデルワィヤ及びリストラに至れり。視よ、彼處に一人の門徒、ティモフェイと名づくる者あり、信じたるイウデヤの婦とエルリン人との子にして、
2 リストラ及びイコニヤに在る兄弟に證せられし者なり。
3 パワェルは彼を攜へて往かんと欲し、其處に居るイウデヤ人の爲の故に、彼に割禮を行へり、蓋皆其父のエルリン人たるを知れり。
4 諸邑を經る時、彼等はイエルサリムに在る諸使徒及び長老等の定めたる規定を授けて、之を守らしめたり。
5 是に於て諸教會の信益堅く、其數日々に増せり。
6 フリギヤとガラティヤの地とを經て、彼等は聖神゜よりアシヤに言を傳へん事を止められ、
7 ミシヤに來りて、ワィフィニヤに往かんと試みたれども神之を許さざりき。
8 乃ミシヤを過ぎて、トロアダに下れり。
9 是に於て夜異象はパワェルに現れたり、一のマケドニヤ人立ちて、彼に求めて曰へり、マケドニヤに渉りて、我等を助けよと。
10 斯の異象の後、我等は主の我等を召して、彼等に福音せしむるを悟りて、速にマケドニヤに往かんと定めたり。
11 故にトロアダより舟行して、直にサモフラキヤに至り、次の日ネアポリに往き、
12 彼處よりフィリッピに至れり、是はマケドニヤの一分の第一の邑にして、植民地なり。我等は此の邑に數日間留れり。
13 安息の日に我等は邑の外に、川の辺なる常に祈禱する所に出で、坐して集れる婦に語りしに、
14 一の婦、名はリディヤ、フィアティラの邑の者にして、紫布の商人、神を敬ふ者は聽けり、主は其心を啓きて、パワェルの語る所に嚮はしめたり。
15 彼其家族と共に洗を受けし後、我等に求めて曰へり、爾等も若し我を視て主に忠なりとせば、入りて我が家に居れ、遂に强いて我等を留めたり。
16 一日我等が祈禱の所に適きし時、卜筮の鬼に憑らるる一の婢我等に遇へり、卜筮を以て其主に多くの利を得しめたる者なり。
17 彼がパワェル及び我等に從ひて、呼びて曰へり、此の人人は至上なる神の諸僕にして、我等に救の道を傳ふる者なり。
18 日久しく之を行ひしに、パワェル遂に之を厭ひ、顧みて鬼に謂へり、我イイスス ハリストスの名を以て、爾に彼より出づるを命ず。鬼忽出でたり。
19 婢の主は其利の望の空しくなりたるを見て、パワェルとシラとを執へて、市に有司等の前に曳けり。
20 旣に上官に曳き來りて曰へり、此の人人はイウデヤ人にして、我等の邑を擾し、
21 我等ロマ人に受くべからず行ふべからざる例を傳ふ。
22 民も亦齋しく起ちて、彼等を攻め、上官は彼等の衣を褫ぎ、命じて彼等を杖うたしめたり。
23 多く杖うちて後獄に下し、獄吏に固く彼等を守らんことを命ぜり。
24 獄吏是くの如き命を受けて、彼等を内獄に下し、其足に梏を加へたり。
25 夜半の頃、パワェル及びシラ祈禱して、神を讚榮せり、囚者之を聞けり。
26 俄に大なる地震ありて、獄の基動き、諸門皆忽啓け、各人の械は解けたり。
27 獄吏醒めて、獄の諸門の啓けたるを見て、囚者逃げたりと意ひ、刀を抜きて自殺せんと欲せり。
28 然れどもパワェル大なる聲を以て呼びて曰へり、自ら戕なふ勿れ、蓋我等皆此に在り。
29 彼火を索めて、躍り入り、戰きてパワェル及びシラの前に俯伏し、
30 彼等を外に導き出して曰へり、君よ、我何を爲して、救を得べきか。
31 彼等曰へり、主イイスス ハリストスを信ぜよ、然らば爾及び爾の全家救を得ん。
32 乃主の言を彼及び凡そ其家に在る者に傳へたり。
33 彼は夜の卽時に彼等を取りて、其玷を濯ひ、直に自ら其全家族と洗を受けたり。
34 遂に彼等を引きて、己の家に入れ、食膳を具へ、全家と偕に神を信ぜし事を喜べり。
35 明くるに及びて、上官は吏役を遣して曰へり、彼の人人を釋せ。
36 獄吏は此の言をパワェルに告げて曰へり、上官使して、爾等を釋す、故に今出でて、安然として往け。
37 然れどもパワェルは彼等に謂へり、我等ロマ人たる者を、罪を定めずして、公に扑ちて、獄に下せり、而して、今私に我等を出すか、可からず、乃自ら來りて、我等を引き出すべし。
38 吏役此の言を上官に告げたれば、上官其ロマ人なるを聞きて懼れ、來りて、
39 彼等に謝し、之を引き出して、邑より出づるを請へり。
40 彼等獄を出でて、リディヤの家に來り、兄弟を見て、之を誨へて去れり。
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