2023年01月25日 14:27
第19章 (聖使徒行実)
1 アポルロスのコリンフに居る時、パワェル上地を經て、エフェスに來り、或門徒等に遇ひて、
2 之に謂へり、爾等は信ぜし後聖神゜を受けしか。彼等曰へり、我等は聖神゜の有ることだに聞かざりき。
3 彼曰へり、然らば爾等何に因りて洗を受けしか。彼等曰へり、イオアンの洗禮に因りてなり。
4 パワェル曰へり、イオアンは悔改の洗を授けて、人人に彼に後れて來る者、卽ハリストス イイススを信ずべきことを言へり。
5 彼等之を聞きて、主イイススの名に因りて洗を受けたり。
6 パワェルが彼等に手を按するに及びて、聖神゜彼等に降り、彼等異方の言を言ひ、且預言せり。
7 其數約十二人なりき。
8 パワェル會堂に入りて、毅然として言ひ、三月間神の國の事を論じ、且勧めたり。
9 然れども或人人剛愎にして信ぜず、主の道を民の前に詆りしに因りて、彼は之を離れ、門徒を別けて、日々ティランと云ふ者の學校に弁論せり。
10 是くの如きこと二年にして、アシヤに居る者、イウデヤ人エルリン人に論なく、皆主イイススの言を聞くに至れり。
11 神はパワェルの手を以て、希有の異能を行ひ、
12 其身より手巾或は襜衣を取りて、病者に加ふれば、病退き、惡鬼出づるに至れり。
13 イウデヤ人の中の巡りて誓戒を爲す或者も、惡鬼に憑らるる者に對して、主イイススの名を用ゐる事と爲れり、曰く、パワェルが傳ふる所のイイススを以て爾に誓はしむと。
14 或イウデヤの司祭長スケワと云ふ者の七人の子は是を行へり。
15 然れども惡鬼答へて曰へり、我イイススを知り、亦パワェルを識れり、惟爾等は誰ぞ。
16 乃惡鬼に憑らるる人躍り攻めて、之に勝ち、之を圧し、彼等裸にして、傷つけられて、其家より逃ぐるに至れり。
17 是の事エフェスに居る凡てのイウデヤ人及びエルリン人に知られたれば、彼等皆懼を懷き、主イイススの名は崇められたり。
18 信ぜし者多く來りて、其罪を認め、行ひし事を訴へたり。
19 邪術を行ひし多くの者は、其書を集めて、衆人の前に焚けり、其価を合せて、銀五萬なるを知れり。
20 主の言は盛に長じて、力を獲たること此くの如し。
21 此等の事旣に成りて、パワェルはマケドニヤ及びアハイヤを經て、イエルサリムに往かんことを意に定めて曰へり、我彼處に往きて後、ロマをも觀るべし。
22 乃彼に事ふる者の中ティモフェイ及びエラストの二人をマケドニヤに遣して、自ら暫くアシヤに留れり。
23 其時主の道に對して騒動大に起れり。
24 蓋一の銀工、名はディミトリイ アルテミダの銀の龕を造りて、工人に少からざる業を得しめし者は、
25 彼等及び他の同業の職工を集めて曰へり、友よ、我等が此の業に賴りて利を獲るは、爾等の知る所なり、
26 亦此のパワェルが、人の手にて作れる者は神に非ずと言ひて、第エフェスのみならず、幾ど全アシヤに於て、多くの民を勧めて、惑はししことは、爾等が見る所聞く所なり。
27 是れ唯我等の業の輕んぜられん危あるのみならず、卽大なる女神アルテミダの殿も藐にせられ、アシヤ及び全地の尊む者の威嚴は滅されん。
28 彼等此を聞きて、烈しく怒りて、呼びて曰へり、大なる哉エフェス人のアルテミダよ。
29 邑擧りて大に騒ぎ、パワェルの同行者、マケドニヤの人ガイ及びアリスタルフを執へて、心を合せて劇場に擁し入れり。
30 パワェル民の中に入らんと欲せしに、門徒之を許さざりき。
31 又アシヤの上官の中に彼と親しき者等ありて、人を彼に遣して、自ら劇場に投ぜざらんことを勧めたり。
32 時に或人は此の事を號び、或人は彼の事を號べり、蓋會衆乱れて、大半は何の爲に集れるかを知らざりき。
33 イウデヤ人の勧に由りて、民の中よりアレキサンドルは呼び出されたり。アレキサンドル手を揺かして、民に言はんと欲せしが、
34 其イウデヤ人たるを知りて、皆聲を同じくして、約二時間呼びて曰へり、大なる哉エフェス人のアルテミダよ。
35 邑の書記官は民を撫めて曰へり、エフェスの人人よ、何人かエフェスの邑が大なる女神アルテミダ及びディヲペトの奉事者たるを知らざらん。
36 此の事已に駁す能はざれば、爾等靖になりて、輕率に事を行ふ可からず。
37 爾等は此の人人を曳き來れり、然れども彼等は未だ曾て殿の物を竊まず、爾等の女神を讟らず。
38 若しディミトリイ及び彼と偕にする工人、人を訴ふることあらば、裁判所あり、方伯あり、互に訴ふ可し。
39 若し他の事に就きて求むる所あらば、法に合ふ會に於て之を議定せられん。
40 蓋我等は今日行はれし事に就きて、騒乱の爲に罪せらるる虞あり、此の粉れたる聚を解くべき辞一もなければなり。言ひ畢りて、會を散じたり。
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