2023年01月25日 14:49
第26章 (聖使徒行実)
1 アグリッパはパワェルに謂へり、爾に己の爲に陳ぶるを許されたり。是に於て、パワェル手を伸べて、弁じて曰へり、
2 アグリッパ王よ、我がイウデヤ人に訴へられし事を、今日悉く爾の前に弁解するを得るは、我幸なりとす、
3 殊に幸なるは、爾がイウデヤ人の悉くの例と爭論の諸端とを知るに因る。故に爾に求む、寬に我を聽かんことを。
4 始めて我が民の中にイエルサリムに送りたる我が生命は、我が幼より、イウデヤ人皆之を知る、
5 彼等若し證を作さんと欲せば、素より我が嘗て我等の宗教の中に尤嚴しき派に循ひ、ファリセイとして生を度りしを知る。
6 今も我が立ちて審判を受くるは、神より我が先祖に賜ひし許約の望の爲なり、
7 是れ我が十二支派が日夜熱心に奉事して、成就するを見んと望む所なり。アグリッパ王よ、此の望の爲に我イウデヤ人に訴へられたり。
8 何ぞや、神が死者を復活せしむるを爾等信じ難しとするか。
9 我も曾て多方を以てイイスス ナゾレイの名に敵すべしと意へり。
10 イエルサリムに於て我果して是を行へり、司祭諸長より權を受けて、我多くの聖徒を獄に閉ざし、彼等の殺さるる時、我之を應諾し、
11 諸會堂に於て屡彼等を苦めて、强ひてイイススを毀らしめ、彼等に敵して甚しく狂ひ、外邑にまで彼等を窘逐せり。
12 是が爲に司祭諸長より權と委任とを受けて、ダマスクに往く時、
13 王よ、我正午途中に於て、天より光あるを見たり、日の光よりも耀きて、我及び共に行く者を環り照せり。
14 我等皆地に仆れ、我はエウレイの言を以て我に言ふ聲を聞けり、曰く、サウル、サウル、何ぞ我を窘逐する、爾荊を踏むは固し。
15 我曰へり、主よ、爾は誰たる。彼曰へり、我は爾が窘逐するイイススなり。
16 然れども起きて、爾の足にて立て、蓋我が特に爾に現れしは、爾を立てて、役者と爲し、爾が見し事及び我が爾に示さんとする事の證者と爲さん爲なり、
17 我爾をイウデヤ民及び異邦人より拯はん。今爾を彼等に遣して、
18 其目を啓かしむ、彼等が暗より光に轉じ、サタナの權より神に歸し、我を信ずるに因りて、罪の赦、及び聖せられし者と偕に業を獲ん爲なりと。
19 故にアグリッパ王よ、我天の顯現に逆らはざりき。
20 乃先づダマスク及びイエルサリムの人に、次ぎてイウデヤの全地及び諸異邦人に、彼等が悔改し、且神に歸して、悔改に合ふ行を爲すべき事を傳へたり。
21 此が爲にイウデヤ人我を殿に執へて、裂き殺さんと欲せり。
22 然れども我は神より佑を蒙りて、今日に至るまで立ちて、小き者にも大なる者にも證を作し、諸預言者及びモイセイが必成らんと言ひし事の外に、一も言ふ所なし、
23 卽ハリストスは苦を受け、死者の復活の始と爲りて、此の民及び異邦人に光を傳ふべかりしこと是なり。
24 彼が斯く弁ずる時、フェスト大なる聲を以て言へり、パワェルよ、爾は狂へり、博學は爾を狂はしむ。
25 彼曰へり、尊憲なるフェストよ、我は狂へるに非ず、乃眞實にして正慧なる言を陳ぶるなり。
26 我が毅然として語るを聞く王は、此等の事を知る。蓋我は此等の一も彼に隱されしを信ぜず、此れ僻隅に行はれし事に非ざればなり。
27 アグリッパ王よ、爾は諸預言者を信ずるか、我爾が信ずるを知る。
28 アグリッパはパワェルに謂へり、爾我を勧めてハリスティアニンたらしめざること少しのみ。
29 パワェル曰へり、神に禱らくは、少しくも多くも爾のみならず、乃凡そ今日我に聽く者は、此の械繫の外、我に同じき者と爲らん。
30 彼が此を言ひて後、王と方伯とワェレニカ及び共に坐する者は起ち、
31 退きて、相語りて曰へり、此の人は一も死或いは械繫に當る事を行はず。
32 アグリッパはフェストに謂へり、此の人若しケサリに上告すと言はざりしならば、釋さるべき者なり。是を以て方伯は彼をケサリに送らんことを定めたり。
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