2023年01月27日 13:21
第28章 (聖使徒行実)
1 パワェルと偕に有りし者は既に舟より救はれて、島のメリトと名づくるを知れり。
2 土人は少からざる惠を以て我等を待へり、蓋雨ふり、且寒きに因りて、彼等火を爇爇て、我等衆人を納れたり。
3 パワェルが多くの柴を集めて、火に置きし時、蝮熱の為に出でて、其手に繞へり。
4 土人は蛇の其手に懸るを見て、相語りて曰へり、此の人は必殺人者ならん、海より救はれたれども、義は其生くるを容さず。
5 然れども彼は蛇を火に払ひて、毫も害を受けざりき。
6 彼等は其腫れんか、或は忽仆れて死なんかと俟ちたりしに、久しく俟ちたれども、彼に毫も害の及ばざるを見て、意を転じて、彼は神なりと謂へり。
7 此の処の近く、島の長プブリイと名づくる者の田地あり、彼等は我等を接けて、三日間慇懃に待へり。
8 プブリイの父熱と痢病とを患ひて臥したるに、パワェル彼に入りて、祷りて、手を其上に按せて、彼を愈せり。
9 是の事のありし後、島の中の他の病者も来りて、醫さるるを得たり、
10 乃禮を優にして、我等を敬ひ、別るるに臨みて、需むる所の者を贈れり。
11 三月の後、我等は此の島に冬を過ごししディヲスクリと號する、アレキサンドリヤの舟に乗りて発せり。
12 シラクジに着きて、三日間止り、
13 彼處より繞り行きて、リギヤに至り、一日を超えて、南風起りたれば、次の日プテヲリに至り、
14 此に兄弟に遇ひ、其請に任せて、七日間彼等と偕に居り、遂にロマに往けり。
15 彼處の兄弟は我等の事を聞きて、アッピイの市及び三の旅館まで出でて、我等を迎へたり。パワェル彼等を見、神に感謝して、心勇みたり。
16 ロマに来りし時、百夫長は囚人等を將軍に交せり、然れどもパワェルは、之を守る一の兵卒と偕に、別に居るを許されたり。
17 三日を超えて、パワェルはイウデヤの諸長者を招けり、彼等の集りし時、之に謂へり、兄弟よ、我一も民或は先祖の例に悖る事を為さざりしに、イエルサリムより囚となりて、ロマ人の手に付されたり。
18 彼等我を審べて、一も死罪なきが故に、我を釈さんと欲せり。
19 惟イウデヤ人が之を拒みしに因りて、我已むを得ずして、ケサリに上告す、然れども我が民を訴へん為に非ず。
20 是の故に我爾等を見、爾等と語らんことを請へり、蓋我はイズライリの望の為に此の鐵索に繋がれたり。
21 彼等之に謂へり、我等は爾の事に於てイウデヤより書を受くることもなく、又来れる兄弟の中に、爾の事を告げ、或は何の悪しき事を語る者なかりき。
22 然れども我等は爾が意ふ所の若何を聞かんと欲す、蓋我等は何處に於ても此の宗派に就きて爭論あるを知る。
23 乃日を定めて、多数の人彼に旅館に来れり、彼は朝より暮に至るまで、彼等に神の國の教を宣べ、モイセイの律法及び諸預言者より証を引きて、彼等にイイススを信ずるを勧めたり。
24 或者は其言ふ所を信じ、或者は信ぜざりき。
25 互に相合はずして散ずる時、パワェル一言を發して曰へり、聖神゜が預言者イサイヤを以て、我が先祖に言ひし事は誠に善し、
26 云く、斯の民に往きて曰へ、爾等耳にて聽けども、悟らず、目にて視れども、見ざらん。
27 蓋此の民の心は頑になれり、耳は聽くに慵く、目は自ら閉ぢたり、恐らくは目にて視、耳にて聞き、心にて悟り、轉じて我が彼等を醫さんと。
28 故に爾等知るべし、神の救は異邦人に遣されたり、彼等は則聽かん。
29 彼が之を言ひし後、イウデヤ人多く相論じて歸れり。
30 パワェルは満二年自ら借りたる家に居り、凡そ彼に來る者を接け、
31 毅然として、妨なく、神の國を傳へ、主イイスス ハリストスの事を教へたり。