2023年02月20日 13:36
第3章 (創世記)
1 主神の造りたる野の生物の中に蛇蛇猾かりき。蛇婦に謂へり、神は眞に爾等園の凡ての樹の果を食ふ毋れと言ひしか。
2 婦蛇に謂へり、我等園の凡ての樹の果を食ふを得、
3 唯園の中に在る樹の果は、神、爾等之を食ふ毋れ、亦之に捫る毋れ、死なざらん為なりと言へり。
4 蛇婦に謂へり、爾等必死なざらん、
5 神、爾等が之を食ふ日は、爾等の目開け爾等神の如くなりて、善悪を識らんことを知りたればなり。
6 婦樹を視て、食ふに善く、目に美しく、智慧を与ふるに因りて慕ふべしと為し、遂に果を取りて食ひ、亦之を己と偕にする夫に与へたれば、彼も食へり。
7 二人の目開けて、彼等其裸なるを知り、乃無花果樹の葉を綴りて、己の為に裳を作れり。
8 日の昃ける時、園の中に遊ベる主神の声を聞きたれば、アダム及び其妻は主神の顔を避けて、園の樹の間に匿れたり。
9 主神はアダムを呼びて彼に謂へり、アダムよ、爾何処に在るか。
10 彼曰へり、我園の中に遊べる爾の声を聞き、裸なるに因りて、懼れて匿れたり。
11 神彼に謂へり、誰か爾に裸なることを告げたる、我が爾に、此れのみは食ふ毋れと禁めし樹の果を、爾食ひしに非ずや。
12 アダム曰へり、爾が我に与へし婦、彼樹の果を我に与へたれば、我食へり。
13 主神は婦に謂へり、爾何ぞ之を為したる。婦曰へり、蛇我を惑はして、我食へり。
14 主神蛇に謂へり、爾此を為ししに因りて、凡ての家畜及び凡ての野の獣の中に詛はれたり、爾は腹行して、一生の間塵を食はん、
15 又我、爾と婦との間、及び爾の苗裔と婦の苗裔との間に仇を置かん、彼は爾の首を碎き、爾は彼の踵を刺さん。
16 婦に謂へり、我大に爾の悲哀と爾の嘆息とを増さん、爾苦みて子を産まん、又爾は夫を恋いひ、彼は爾を治めん。
17 アダムに謂へり、爾其妻の言を聴きて、我が爾に禁めて、此のみは食ふ毋れと言ひし樹の果を食ひしに因りて、土は爾の為に詛はる、爾は一生の間苦みて之より食を得ん、
18 土は荊と薊とを爾の為に生ぜん、又爾は野の草蔬を食はん、
19 爾は面に汗して爾の食を食ひ、爾が取られし所の土に帰るに?ばん、蓋爾は塵にして塵に帰らん。
20 アダム其妻の名を生命と名づけたり、彼は悉くの生ける者の母なればなり。
21 主神はアダム及び其妻の為に皮の衣を作りて、彼等に衣せたり。
22 神曰へり、視よ、アダムは我等の一の如くなりて、善悪を知れり、恐らくは今彼其手を伸ベて、生命の樹の果を取リ、之を食ひて永遠に生きん。
23 是に於て主神は彼を楽園より出せり、其取りて造られし所の土を耕さん為なり。
24 アダムを逐ひ出して、之を楽園の前に居らしめ、へルワィムと自ら旋る焔の剣とを置きて、生命の樹の途を守らしめたり。
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